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メディアグランプリ

泣きたくない人は、この作品は見ないでください


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記事:永石美季詠(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
私はテレビの前で、長い時間泣き続けていた。
 
丸まったティッシュを手のひらの中に隠し持つようににぎり、床に座りソファに背をもたれかけ、体操座りのまま、ずっと画面を見ていた。見終わったときは、じんじんと熱くほてった頭と引きかえに、素足のまま放り出していた足は、ひんやりと冷たくなっていた。
 
これは、約2時間の映画である。見始めて30分を過ぎたところから、涙が急にあふれ始める。その後も10分~5分おきに、頭の芯がしびれたようになって、画面を見る視界がやけにクリアになったかと思うと、すぐさまそれがぼやけて焦点が定まらなくなる。このプロセスが終わりまでずっと繰り返される。ラストが近づくと、その頻度はさらに増してくる。3分間隔になり、1分間隔になり、私の中から何かが生まれ始めているのを感じる。それはすぐには何なのか分からないが、とても懐かしい感情だ。ラストからエンディング曲が流れ終わるまでは、私という人間の中に無限にわき出る泉でもあったのかと思うほどだった。
 
これは実話に基づいた邦画である。実話の方は、あるドキュメンタリー番組で2015年4月に放送された。ある一組のカップルが困難を乗り越え、8年越しの約束を叶えて、挙式を挙げた様子が取材されていた。私は当時、その放送をちらっとだけ見ていた。車いすでバージンロードを歩く新婦と、彼女の手を取る新郎の姿だけが、私の印象に残っていた。レンタルショップでどのDVDを借りようかと選んでいたときに、軽い涙活ができればいいなと思い手に取った。ちょっといい感じに、感動できそうだな、と。
 
そんな私の期待は、見事に裏切られることになった。佐藤健が演じる尚志と、土屋太鳳が演じる麻衣の8年間の記録は、ノンフィクションとは思えない、まるで小説の中の美しい物語のようだった。それは実話である原作の美しさに加え、佐藤健と土屋太鳳の役者としてのエネルギーが作品により強い生命力を注いだのだと思う。特に、序盤の麻衣の生き生きとした笑顔、躍動感に目を奪われた視聴者は、その後に強い光が落とす影の濃さに愕然とするだろう。そして影のなかでの、薬師丸ひろ子演じる麻衣の母親の葛藤に感情移入せずにはいられない。
 
あまりにも、美しすぎるのだ。あまりにも、過酷な状況があり、そんな状況を取り囲む人間たちすべてが、あまりにも、美しすぎる。美化しているとか、こんな都合のいい話はこの人たちの特別な場合だとか、そんなことを言いたいのではない。苦しみながらも、懸命に希望に向かって生き、前を向けない自分さえも、運命や他人を恨みそうになる自分さえも受け入れて、そして初めて、他人の愛のいろいろな形に気づく。麻衣の両親の、尚志に対する形にできない感情に対して泣き、尚志の麻衣に対する、あまりにも広く大きな愛情に泣いた。そして、麻衣の尚志に対する、わき目を振らない真っすぐな想いに泣いたのである。
 
こんな気持ちが、自分にあったのかと思った。こんな大きな愛が、これまでも世の中には溢れていたし、今も溢れているのだと思った。私はこの作品を見て泣いた自分のなかに、大人になって忘れかけていた無限に広い愛情を見つけたのだった。
 
子どもは私たち大人に、無限の愛を届けてくれる。私も子どのころは、特に親に対して、無償で無限の愛情を抱いていた。それはとても純粋な愛情だったと思う。しかし、成長していく10代から20代の私は、愛情にはいろんなカタチがあることをまだ知らなった。自分が求める形の愛情を得られず、絶望し孤独に突き落とされたときもあった。そのときのつらい記憶から逃げるようにして、少しずつ、愛の出し惜しみをするようになった。
 
30代も半ばにさしかかり、親になり子どもを育てるようになっても、小さなことで人と自分を比較し、頭の中で優越感やら劣等感やらでお手玉ゲームをしている自分が、ほとほと情けなく感じていた今日このごろ、大量の涙とともに、胸にうずまくいろんな感情が一度きれいに流れていったように思う。
 
「最近の自分、なんかイケてないな」「自分はもっと愛情深い人間だったよね?」なんてひとに、ぜひ見てほしいです。もちろん、「自分大好き♡」「毎日楽しくてしょうがない!」っていう人にも。レンタルショップでは旧作100円です!ただし、泣きたくない人は、この作品を見ないでください。ご視聴の際は、ティッシュの箱を手元にスタンバイ、よろしくお願いいたします。
 
 
 
 
※「8年越しの花嫁~奇跡の実話~」
(第41回日本アカデミー賞にて、優秀主演男優賞・優秀主演女優賞・
優秀助演女優賞を受賞)
 
 
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2019-06-28 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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