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メディアグランプリ

仁淀ブルーはブルーじゃなかった


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:久保田真凡(ライティング・ゼミ 平日コース)
 
 
「青くないよ?」
 
確かに青くなかった。むしろグレー、それもかなり淀んだグレーだった。
「奇跡の清流」という別名を持つ川が、だ。
 
先日5歳の娘と仁淀川へ行ってきた。高知県にあるその川は、近年「仁淀ブルー」として、川の透明度と独特の青さが注目を浴びている。
実際に「仁淀ブルー」とネットで画像検索すると、画面が青でいっぱいになる。その美しさは目を疑う程で、これが肉眼で見られるのならば、誰しもが行ってみたいと思うだろう。
 
私は仁淀川へ行く数日前から、この美しい仁淀ブルーの写真の数々を娘に見せていた。
「今度お母さんと、ここに行くよ。川の色がきれいやろ。いつも行く川とは全然違うよ。めっちゃきれいと思うわ」
娘はお手本のようなリアクションをして、期待を膨らませていた。
 
私たちは、仁淀川で今話題のSUPに挑戦する予定を立てていた。
仁淀ブルーもSUPも、私たちにとっては初めてのこと。緑の山間に流れる青い川の上を、のんびりボードで散歩する。そんな色鮮やかな写真のような風景を期待していた。
 
当日の朝は快晴だった。自分たちのSUPデビューを喜んでくれるかのような晴天。私も娘もウキウキで家を出た。
が、車で高知へ向かう道中、雲行きがあやしくなっていった。
 
「嫌な予感……」
 
予感は的中した。仁淀川が流れる「いの町」に着いた頃、雨は見事に降っていた。しかも小雨ではなく本降りだった。
 
「青くないよ?」
 
車道から川を見た娘がそう言った。確かに青くない。私と娘が見たそれはかなり淀んだグレーだった。
この環境でSUPデビューかと思うと、少々テンションが下がった。
とは言え、SUPのツアーは既に予約済み、雨天決行なのでやらない理由はない。月1のキャンプで雨の中のアウトドアにも慣れてるじゃないかと自分に言い聞かせ、私は娘と集合場所へ向かった。
 
「雨ですねー」
 
残念そうに言う私に、現地のガイドの人はこう言った。
 
「今日雨なんですけど、霧が出てむちゃくちゃ良い感じですよ! 天気良いときはもちろん綺麗なんですけどね、これはこれで、この時期限定なんで、敢えて梅雨狙って来る人もいるくらいで……」
 
「へぇー、そうなんですか」
 
そう返事しながらも、そう言ったって仁淀ブルーには敵わないだろ、と私は彼の言葉をどこか疑いながら聞いていた。
 
が、彼の話は本当だった。
 
ウェットスーツに着替え、諸々の準備が整って、川岸に下りた私たち一行の目の前には、それは幻想的な風景が広がっていた。
雨に濡れた深い緑と、淀んだ灰色の川の間をつたうように薄い霧が切れ切れに流れていた。私は登山やキャンプを趣味としているので、これまでも何度か霧の有る景色に感動したことはあったが、霧で川面がぼんやりと霞む景色を美しいと感じたのはおそらく初めてだった。
 
「すごいでしょ、この景色。あとね、仁淀川の石は五色石って言って、カラフルなんですよ。晴れてると乾いて白っぽいんだけど、今日みたいな雨の日は石が塗れて色味と艶が増すから……ほら、ものすごくきれいでしょ。宝石みたいな。今日、子どもさん一緒だから、あとで石拾いするといいですよ」
 
確かにガイドの人がそれとなく手にとった石は、紫とも茶色ともとれる、艶のあるきれいな石だった。
その他にも彼は,雨の仁淀川の魅力を次々に教えてくれた。
 
雨には雨の楽しみ方がある。そう教えてもらったからか、景色に魅せられたからか、実際に川に入った後も雨は降っていたが、全く気にならなかった。
 
初めてのSUPは、パドリングに不安があったが、雨と適度な風のおかげで、程良い川の流れがあったので、そこまで漕がなくとも前へ進み、初心者の私と娘にはとても良い環境だった。
 
「川の流れがあるから、進行方向向けるだけである程度いけるのいいですね」
私がガイドの彼に言うと、
「そうでしょ。夏は確かにきれいなんだけど、暑いし風があるから、結構漕がないといけなくて、大変っちゃ大変なんですよ。初めての人とかだと、漕ぐ方で一生懸命で、そんなに景色楽しめないってこともあったりね……今日は本当に気持ちがいい。気温と水温のバランスが上手くマッチするタイミングってそうそうなくて。だから好きな人は、みんなこの季節狙って来るんだよね」
 
なるほど、一長一短だなと思った。
 
時折同じツアーに参加した人やガイドの人と会話を交わしながら、2時間弱のダウンリバーを娘と堪能した。
 
もし晴れていたら、私は仁淀ブルーを見ることが出来たかもしれない。
けれど雨が降っていたから、この景色を見ることが出来た。そしてそれは、事前に娘に見せていた、どの画像よりも良いものとして私の記憶に刻み込まれた。多くの人が知る「仁淀川」とは違う仁淀川を楽しめたという満足感もあったかもしれない。
 
自然が生み出す景色は水彩画に似ている。
溶く水の量や、滲みの形、色の混ざり具合等、様々な条件によって、都度出来上がる画は二度と見られないものだ。
私がこの日みた仁淀川も、気温、水温はもちろん、私が立つ場所、漕いだルートによって、私だけの景色になった。この日同じツアーに参加した人が見たそれとも違うものだ。
 
自然は素晴らしい。今やネットで検索すれば、簡単に美しい景色を見られるようになったが、やはり現地に行った者でしか体感できないものがあると思う。
 
心が動く写真に出会ったら、是非とも現地を訪れてみて欲しい。そして、もしそれが自分の期待を裏切る結果でも、安易に落胆せず、五感で感じてみることをオススメする。そこには必ず、その日その時、その場所に立った自分にしか見られない、特別な景色が広がっているはずだ。
 
 
 
 
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2019-07-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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