メディアグランプリ

ダイエットという名の瞑想


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:ジョーツナユウコ(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「奥さん、ひょっとして妊娠した?」
夫と一緒にとある会食に出席した時に知人が夫に耳うちした言葉。
 
さすがにそれを聞いて、まずいな。と思った。妊娠なんてしていない。
なのに妊婦に間違えられるとは。
 
じわじわと体重が増えてきているのは知っていた。
「ちょっと増えたな。でも、まだこれくらいなら大丈夫」
「食べる量を減らしたら、すぐ1、2キロは落ちるでしょ」
言い訳をしながら何もせず、気づけば10キロ近く体重が増えていた。
久しぶりに乗った体重計の数字を見て今度こそやるぞと決意して、糖質制限と軽い運動を始めた。最初は面白いように体重が減ったけれど、停滞期がやって来て、何をやっても減らなくなった。
 
そこで前からずっと気になっていた「七号食」ダイエットをやってみることにした。
 
七号食とはマクロビオティックの創始者である桜沢如一さんが考案した10日間玄米だけで過ごす半断食法。もとはダイエットというよりも体質改善法のようだ。
本当は色々と厳格な決まりごとがあるようだけど、私はこれをもう少しやりやすくアレンジした方法で行うことにした。
 
・10日間、食べて良いのは玄米(酵素玄米)のみ。ごま塩はOK。
・飲み物はほうじ茶、番茶、麦茶などノンカフェイン、ノンカテキンのもののみ。
・とにかくよく噛む。できれば100回。
・玄米はお腹が空いたらいつ食べてもどれだけ食べても良い。
 
最後のいつどれだけ食べても良いというのが魅力的だった。空腹感を感じずに済むから、これなら玄米だけでも10日間続けられそうだ。
 
初日、今まで糖質制限でご飯を控えていた私にとっては真逆のひたすら玄米ご飯だけを食べるという行為が、なんだかいけないことをしているような気持ちにさせた。
でもそれもすぐに失せた。とにかくお腹が空くのだ。
 
今までなら何を食べよう?と選択肢があったけど、今はない。
玄米しか食べるものがないから、ゆっくり味わってよく噛んで食べる。
口の中で噛むごとに玄米の香ばしさが甘みに変わっていく。食感も変わっていって、最後には玄米の皮だけが残る。
 
そこで、今まで食べることに無意識だったことに気づいた。
普段の食事でここまで噛んで食べたことがなかった。
次々に食べ物を口の中に放りこみ、数回噛んだだけで飲みこんでいたから、ご飯の甘みにも気づいていなかった。
 
2日目の朝、無意識にコーヒーを淹れようとしている自分に気がついた。
「あ、コーヒー飲んじゃダメなんだった」と代わりにはと麦茶を飲む。
この日は朝にお茶碗一杯の玄米を食べただけだったけど、お昼を過ぎてもあまりお腹が空いていなかったので、そのまま夕方の休憩まで何も食べずに過ごした。
 
ここでまた、今まで機械的に食事をしていたことに気づいた。
朝はなんとなくコーヒーを飲んで、お昼の時間がきたから、お腹がそんなに空いていない時でも何かを食べていた。お腹が空いてない時は食べなくてもいいんだ。
 
3日目、休日だったので、買い物に出かけた。
「あー、焼肉屋さんのいい匂い。タン塩にカルビに、ビールも美味しいだろうな」
「あー、パンの焼けるいい匂い。パンにバターたっぷり塗って、はちみつかけて食べたいな。ついでにカフェラテも飲みたい」
街のあちこちから、いい匂いがする。もう何年もこの街に買い物に来てるのに、今までこんなに食べ物の匂いがする街だったとは知らなかった。
玄米しか食べていないから、匂いに敏感になっているらしい。誘惑がいっぱいなので、最低限の用事を済ませて帰宅した。
 
この日の気づきは世の中には食べ物屋さんが思っているよりたくさんあるし、人の食欲に訴える広告も多いということ。そして、私は出かけるといつもお土産と称して食べ物、特に甘いものを買って帰っていたということだ。
 
七号食を続けるうちに、めんげんと呼ばれる好転反応のようなものがではじめた。
やたらと眠くなったり、頭痛に悩まされたりして、何度もやめたくなったが、なんとか無事に10日間を終えることができた。
しかし、これで終わりではなく回復食と呼ばれるものを4日間かけて徐々に摂っていき、最終的に普段の食事に戻していく。
 
11日目、お湯で溶いただけの具なしのお味噌汁を飲む。
お味噌が甘くてびっくりした。お出汁も具もなしなんて。と思っていたけど、お味噌の塩分だけで十分美味しかった。
 
お味噌汁を飲んだ時は美味しくて幸せだったけど、もう次の日には具の入ったお味噌汁を飲めると思うと次の日が待ち遠しくなった。人間の欲望は止まるところがないんだなぁと思った。
 
七号食を始める前は、生きるために食べる。というより、味や食感という快楽を求めるために食べていた気がする。体が欲するというより脳が欲している感覚。
そしてその快楽をもっともっとと欲するから、あまり噛むことをせず次から次へと食べ物を口の中に放り込んでいた。今口の中にある幸せに気づかずに。
 
玄米をありがたくいただく、ゆっくりと味わってよく噛んで。
 
ただこれだけのことをダイエット目的で始めたのが、まるで瞑想した後のようにたくさんの気づきがあった。
そして、体重マイナス3.5キロ、体脂肪マイナス2パーセントと当初の目的も果たせた。
目標までまだもう少し頑張らないといけないけど、今まで無意識にしていたことが、実は太りやすい習慣だったこともわかった。
 
七号食、途中で止めたくなったこともあったけど、それ以上に得たものが多くて、年に2回は体と心のリセットのため恒例の行事にしようと思う。
 
 
 
 
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2019-07-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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