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お葬式を出すときに「これはやっておくといい」と思う、たった一つのこと


 
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記事:村山 友美(ライティング・ゼミスピード通信コース)
 
つい先日、友人のお母さまが、天国へ旅立ってしまった。
私とその友人は気軽に会える距離には住んでおらず、不幸のお知らせはメールでいただいた。
そこに書いてあったのは「父親が高齢だから、父親が喪主で自分が施主ってことになったんだけど、何から手をつけていいのか分からない。」という、母親を亡くした悲しみと同時に訪れた混乱、あるいは助けを求めるかのような一文だった。
メールからは母親を亡くした悲しみはもちろんだが、高齢の父親に代わってスムーズに葬儀を進ませたいという意識も伝わってきて、おそらく葬儀場の社員や菩提寺の住職に相談しているとは思いつつも、「お葬式の経験者」として昔を思い出しながら返信した。
 
さて、我が家が初めてのお葬式を出したとき、何がどう大変だったかという”お葬式の現実”の話をしよう。
初めて出したお葬式は祖母が亡くなったときなのだが、幸い、私の祖父母は元気なうちに自分たちで墓地を用意してくれていたので、慌ててお寺を探すとか墓地を買うとか、そういった面倒が一切なかったのは幸いだった。
 
それでも「すぐに葬式を出せない」、やっかいなことが3つあった。
 
まず大変だったのが、死亡診断書をもらうことだった。
祖母は夜の9時ごろに入院していた病院で亡くなったのだが、担当医師と当直の医師とで診立てが異なり、当直医から「死亡診断書が書けない」と言われ、院長判断となったのだ。
しかし、肝心の院長は出張中で、戻ってくるのは2日も後。
この死亡診断書がないと火葬場の使用許可も墓地への埋葬許可書も出ないしで、話が先に進まないのだが、自分たちの努力でどうにかなるものではないから、待つしかなかった。
 
そこに追い打ちをかけたのは、火葬場が友引で休みだったことだ。
死亡診断書が出てもすぐ火葬というわけにいかず、加えて、友引の翌日は火葬場が混んでいて予約をとりそこねて、さらに1日待つ必要があった。
待っているだけで話を進められないので、父は「時間が空くから」と施主にもかかわらず普通に仕事に行き、会社が遠方の私は上司に電話して、慶弔休暇とは別に有給休暇をとらせてもらうしかなかった。
 
加えてもう一つ、これは、やっかいなことというより「我が家の恥」なのだが……
当時「まずは住職に相談」ということを考えもしなかった我が家は、「火葬の日時と葬儀場を決めた後に、菩提寺に相談」という、大変無礼なことをした。
「火葬も葬儀場も決まっているから、話はスムーズに進んだ」などと都合のいいことにはならず、住職が京都の本山に行っていて不在という、仏様の罰が当たったかのような展開。
もちろん、寺に相談に行った際は、住職から「葬儀屋じゃなくて、まず私に相談するのが筋です!」とお叱りを受けた。
 
そんなこんなでやっとお通夜を出せたのは、祖母が亡くなってから3日も後のことだった。
身内の不幸があっても洗濯物は出るしお腹も空くし、次々に親戚やご近所の方が来るからお茶を出さなきゃならないしで、お通夜までの数日間は「生きてる者の方が大事」という母と二人で、家の事をやって過ごした。
もちろん、遺影に使う写真を選んだり喪中はがきの注文をしたり、遺族としての役割も一部だけだが果たした。
(サービス業でお正月休みも一日しかなかった私は、口では「あー、もう、面倒くさい!」と言いながら、何日も家族といられることが、ちょっと嬉しかったのも事実だ)
 
亡くなってから告別式を終えるまでに時間が経っていたことと、住職が柔軟な考えの方であることもあり、骨壺は家に安置することなく、火葬の後に繰り上げ初七日の法要と納骨(住職曰く、骨壺を納骨堂ではなく墓地に収める場合、正確には「埋骨」と言うそうだ)を行うことができた。
お葬式が終わるまで何日もかかって疲れてきていた我が家にとって、「一気にカタをつけられた」ことは、幸いだった。
 
ここで一つ断りを入れさせていただきたいのだが、私は「正しいお葬式」などというものは「ない」と思っている。
世に言うお葬式あるいは葬儀は、実に多種多様だからだ。
宗教や宗派、寺院や地域によっても違いがあり、下手すると親族間でも考え方が違っていて、「喪主が板挟み」なんて事だってあるのだ。(※経験上、こういうときは、菩提寺の住職や葬儀場のディレクターなど、さまざまなケースを見てきている「プロ」に相談した方が、角が立たなくて良い)
 
会社の慶弔休暇(ここでは弔の方)は、あくまでも順調に事が進んだ場合の最低限の日数であって、実際にそんなスムーズにいくとは限らない。
最近は、火葬場が混み合って友引でも休みではないと聞くから、なおさらだ。
だから、もしも貴方の身内に不幸があったら、慶弔休暇に加えて有給休暇を予め申請してほしい。
後で追加の休みを取らなくて済むようにしておいてほしい。
会社員なら「早く仕事に戻りたい」と焦る気持ちが生まれるかもしれないが、それでも、遺族には遺族しかできない役割があるし、故人とこの世で一緒に過ごす最後の時間を大切にしてほしい。
 
もしも葬儀がスムーズに運んで休暇が余っても、問題ない。
空いた時間を「故人がくれた、人生最期のプレゼント」だと思って、故人を想いながら忙しかった自分を労って、ゆっくりすればいいのだ。
 
 
 
 
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2019-07-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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