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婚活漂流記 


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記事:香田真美(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「あぁ、恋がしたい」
33歳、婚活中の女が絶対に呟いてはいけないセリフが口を突いて出てきた。
あの頃の私は、「婚活疲れ」で何もかもが嫌になっていたのだ。
コンパに行くのも、婚活パーティーに行くのも、誰かと連絡先交換して、探り探り連絡取り合って、デートして相手の出方を見て……という一連の流れを繰り返す日々。もううんざりだった。
 
東日本大震災があった年、私は31歳独身彼氏ナシ状態でド田舎に転勤になった。
「このままでは一生独身」という言葉が頭をよぎり、必死の婚活を開始した。
友達の紹介、お店の常連同士、コンパを頼みまくり、ほどなく彼氏はできたが、2年も付き合ってさぁ結婚という時、ふと我に返ったのだ。
 
「あれ? この人のこと全然好きじゃないわ」
 
そう、私は結婚のことで頭がいっぱいで、彼の嫌な一面を全て見て見ぬふりしていたのだ。その嫌な一面が、結婚に向けて話し合いをしている最中にありありと見えてきた。31~33歳という超貴重な時間を、モラハラ男に捧げてしまったのだ!いま思い出しても、あのまま結婚していたらと思うと恐ろしい。
両家に結婚の挨拶に行き、結婚式場の下見までしたのに、もう一瞬たりとも一緒にいたくないくらい嫌になって、帰りのファミレスで「距離を置きましょう」と言って別れた。
あの時の私の決断は、人生で一番賢い選択だったと心から思う。
 
31歳で結婚を焦っていた女が、気づけば33歳、独身、彼氏ナシ、田舎住まい。
完全に戦況は不利だ。同級生は男子でも結婚している者が増え始めた頃だった。迫りくる一生独身の恐怖と戦いながら、また婚活の日々が始まった。
 
毎週末のように田舎から街まで片道1時間運転して通い、コンパ、婚活パーティに参加した。そうでもしていないと、一生独身の恐怖に潰されてしまいそうだったのだ。「婚活うつ」になる人の気持ちがよーくわかる。
 
婚活ってまるで、戦場のようだ。
戦争では装備が充実していないとすぐに死んでしまうように、婚活では自分を着飾って、良く見せないとカップルにはなれない。
丸裸では即、死!素の自分のままでは即、一生独身!
 
素の自分を出しては結婚できないと思い込んでいた私は、いつもキレイに着飾り、メイクもまつエクもネイルもきっちり整え、顔に笑顔を張り付け戦場に赴いていた。
毎週末戦争。そりゃ疲れるわなぁ。
 
そんな時に出会ったのが、いまの夫だった。
出会いは職場の先輩に頼まれたコンパの幹事同士。皮肉にも、ド田舎に転勤にならなければ出会うことはなかったのだ。
始めて彼を見た時、「アリンコみたい」と思った。
髪が真っ黒で、小さくて(身長は私とほぼ同じ168㎝)、ちょこまかと走っていたから。ハッキリ言って好みじゃなかった。
ただ、他に連れてきたのが私からしたら5コも年下の後輩ばかりだったので、彼しか対象になる人がいなかった。作戦かと思ったけど、ただ友達が少なかっただけらしい。
やたらビールをおかわりする、ほとんどしゃべらない、カラオケに行ったらB’zばっかり歌う、と良いとこナシだったけど、取り立てて悪いところもなかったので、またみんなでもつ鍋食べに行こう! という話しになった。
もつ鍋を選ぶ辺り、「対象外」とレッテルを貼っていたのだろう。
 
そんな「対象外」の彼に2人で食事に誘われたときは驚いた。メールの返信も遅いし、私のことを気にしてる素振りが全然見えていなかったから。
実際デートしてみると、不器用だけど裏表がない彼の人柄に触れて、婚活で疲れた心がみるみるうちに癒されていった。
付きあってみると、デートすればしっぽがあったら振ってるだろうというくらい嬉しそうだし、私が旅行を提案したら「いいね!」と即答してくれて、家族や友達にもすぐに紹介してくれた。
 
「あぁ、こういう人と結婚したら幸せだろうな」
そう思った頃に、身体に異変が……妊娠していた。
そしてあっという間に授かり婚。付きあってから4か月後には入籍していた。私は34歳になっていた。
 
つい4か月前には「恋がしたい」と現実逃避していた33歳独身女が、あっという間に授かり婚! 人生って思い通りにいかないけど、捨てたもんじゃない。
夫とは燃えるような恋はできなかったけど、いまは4歳の女の子、2歳の男の子の母となり、恋以上のトキメキをわが子に感じている。
夫は……相変わらず口数が少なくてなにを考えてるか分からないけど、よく家事をしてくれる。きっと愛されているのだろう。
 
恋が一瞬の花火だとすると、結婚は炊飯器のようなもの。
炊飯のスイッチを押して交際が始まり、グツグツと2人の気持ちが熱されて炊き上がったら、結婚。あとは保温がいつまで続くかだ。
幸いうちの炊飯器は結婚して5年間、元気に持ってくれている。時々メンテナンスをしながら、大切に使っていきたい。
夫にもたまにはメンテナンスという名目でおいしいおつまみを作ったり、一緒に居酒屋に行くなどして夫婦仲を保ちたいものだ。
 
 
 
 
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2019-08-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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