メディアグランプリ

一目見たときから大嫌いだった、大事な友人の話


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:富田洋平(ライティング・ゼミ夏休み集中コース)
 
 
「一目見た時から好きでした!」
世の中で出会う人間が、みんながみんな一目惚れで好意を持ってしまうならば、きっとケンカも紛争も起きないに違いない。
愛情にあふれ、みんなが仲良く、そして幸せな世界になるだろう。
ただ残念なことは、世の中には「一目惚れ」と同じく、一目で人を嫌う「一目嫌い」という現象が起きるのである。
そして、一目嫌いの人と出会うと、初対面で相手のことを一切知らないにもかかわらず
「この人は、私に嫌なことをする人に違いない」
と思い、戦々恐々としてしまうのだ。
今日はそんな「一目嫌い」というやっかいな人が、本当はどういう存在なのかをあなたに伝えたい。
 
 

 
 
1年前、あるワークショップに参加した。
ワークショップ中に、アシスタントの方が簡単に自己紹介をしたときに、僕は固まった。
「アシスタントをします、『ゆかこ』と申します。よろしくお願いします」
このぐらいの自己紹介だったのだが、僕はゆかこさんのことを一目見たときから嫌い、いや大嫌いになった。ゆかこさんは見た目も雰囲気も、僕をどん底まで落とした女性に似ていたからだ。
 
 
僕をどん底に落とした女性は、お客様先の会社にいた女性社員である。
当時、チームリーダーをしていた僕は、その女性と仕事の話をすることが多かったのだが
「富田さんは会議中、もう話さないでいい」
「富田さんでは話にならない。上司の○○さんともう一度話に来て」
というように、僕が仕事の邪魔で必要ない、ということを暗に言ってくる女性だった。そして、責められ、ダメ出しをいっぱいされた。
この女性と仕事をするようになって、どんどん元気がなくなっていった。そして、大好きなグルメ巡りもしなくなり、ご飯の味もしなくなり、眠れなくなった。無気力と無価値観でいっぱいになって、どん底まで落ちたのだ。
 
 
「ゆかこさんは、あの嫌だった人とは別の人だ」
頭でわかっていても、僕は踏み込めなかった。
どん底の経験が、ゆかこさんに近寄るなという。またあの苦しかった経験をしたいのか、と。
だから僕は、なるべくゆかこさんがいないほうに逃げ、極力会話をしないようにした。関係が薄くなるよう避けていれば、嫌な出来事は起きないと固く信じてた。
 
 
しかし、ある日の朝、ゆかこさんからメッセージが送られて来た。
当時僕は、ボランティアのカウンセリングサービスをWebで公開したのだが、同業者であるゆかこさんが、
「告知文に大事なルールが書いてないぞ。書くのを忘れただけ? それとも意味を知らない?」
というメッセージを送ってきたのである。
書くのを忘れていようが、意味を知らなかろうが、どちらの回答をしてもばっさり切られそうなメッセージで、強く責められた気分になった。怖くなって一度メッセージを閉じ、どう返事をするか悩んだ。
あのどん底の経験を思い出し、「また同じことが起きるのではないか」とぐるぐる考えた。
 
 
やや時間をかけて悩みぬいた後、正直に返事をすることにした。怖いけれど、前回は自分の思っていることを言えなくて失敗したのだ。
 
 
「忘れていただけだよ。教えてくれてありがとう」
そして、嫌だと感じたことを、勇気を出して伝えた。
「ただ、教えてくれたのはうれしいけど、その言い方は嫌だった。表現きつくて嫌な気分になったよ。文字のやりとりだから僕が勝手にきつめに受け取っているのだけれど、朝からちょっとがっかりしたよ」と。
 
 
返事が返ってくるまで、心臓の鼓動がどんどん早くなっていった。もしも、もっと責められたらどうしよう、と怖くなった。
 
 
ゆかこさんから返事がきた。
「ごめーん。文章だと事務的でキツくなるね。
ルールを守らずボランティアのカウンセリングをした人に、苦情があったらしいの。ついつい、おせっかいしました」
ゆかこさんは、僕が嫌な思いをしないように伝えてくれただけだった。伝えなくてもいいのに、わざわざ教えてくれたのだ。素敵なおせっかいだったのだ。
それから少しだけやりとりをして、僕はゆかこさんに心をゆるし始めた。
 
 
ゆかこさんとの交流が始まった。
ゆかこさんは、「こうしたほうがいいよ」と教えてくれたり、悩んでいる僕の話を聞いて、そっと共感してくれたりした。そして、僕の思っていることを尊重してくれた。
気づいたら、ゆかこさんは大事な友人になっていた。あの女性社員とは違うのだ。
 
 
そんな素敵なゆかこさんだが、怖がられてしまうことがあるらしい。
怖がられてしまう、ということを聞くと、「こんな素敵な人を怖がるなんて、なんてもったいない!」と思う。もちろん、自分のことを棚に上げて、である。
ゆかこさんは、相手のことを心配してくれて、思慮深くて、相手の思っていることをきちんと聞いてくれる優しい女性だと知っているから、彼女の良さが伝わってほしいと切に願うのだ。
 
 
一目嫌いになった人たちは、ドラゴンボールのベジータのような存在なのかもしれない。
初めは敵のように見えるけれど、本当は誰よりも、私たちの強い味方なのではないか?
私たちのことを考えてくれる大事な人なのではないか?
 
 
だから、もしもあなたの前に一目嫌いになった人が現れたのなら、「私の大事な人なのではないか?」と考えてみて、素直に気持ちを伝えてみてほしい。
そして一目嫌いな人を、あなたの大事な人にしてみてほしい。
僕は、一目嫌いな人の本当の魅力が伝わってほしいのだ。

 
 
 
 
 

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2019-08-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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