メディアグランプリ

リーダーよ、「これでいいのだ!」と叫ぼう


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:長谷川高士(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「これでいいのだ!」
 
鉢巻き、腹巻き、ステテコがトレードマークのアニメ界を代表する「パパ」の決め台詞。
力強い、不思議な説得力がある。
 
「あれがダメなのだ!」
 
これは、どうだろうか。
エネルギーは感じる。だが何かが違う。
「これでいいのだ!」が持つスッキリとした爽快感、明るく外に向かう広がりを感じない。
それどころか肩に力が入る。
この何とも言えない違和感を、一年前の私は感じていた。
 
減災チーム・トイレの備え。
災害時は断水が原因でトイレに困る。トイレに困った挙げ句、ガマンして病気になり、果ては命を落とす人がいる。いざという時に困らないように「準備を啓発したい」と思ってチームをつくった。
これは、その時付けたチームの名前だ。
名刺交換の時など、余計な説明は不要だった。
読めばすぐにわかってもらえる便利な、それでいて愛着のある名前だった。
 
チーム発足から一年、その感覚は突然訪れた。
「防災の世界って、外から見たら近寄り難い壁があるのかもしれない」
 
どこもそうかもしれないが、防災の「世界」も狭い。
一年間真面目に活動したら、あっという間に周りは知り合いだらけになった。
目的を共にする同志だ。盛り上がる。朝まで飲み明かす勢いだ。
その「世界」の中に居場所をもらえた私は、幸せを感じていた。
 
ところが、ふと冷静になった時、外の世界、つまり防災にそれほど積極的ではない世間との間に、ぶ厚い壁があるのを感じてしまった。
「世界」の中が熱くなればなるほど、盛り上がれば盛り上がるほど、外の世界から離れて、内へ内へとそのエネルギーが向かっていく。
私にはそう思えてしまったのだ。
 
「俺がおかしいのかな……」
違和感を覚える自分を、責めた。
そんな私にヒントをくれたのは、意外にも、ある偉人の言葉だった。
 
「マザー・テレサ、って知ってる?」
彼女が言ったとされる次の言葉を、友人の一人が教えてくれた。
 
「反戦運動には参加しません。平和活動には喜んで参加します」
真意にはいくつかの解釈があるが「ネガティブ+否定語ではなく、ポジティブ+肯定語を彼女が好んだ」という理解がもっとも多く支持されているそうだ。
ネガティブな「戦争」を無くなって欲しいと願い「反対」という否定語で打ち消す。
ポジティブな「平和」の到来を願い、肯定する。
願っている先の未来は同じだが、言葉の持つ力が違うのだ、と。
 
「ジーニーさんはね、否定語が理解できないんだって」
『アラジンと魔法ランプ』の物語に登場するランプの精ジーニー。
自覚されることなく、我々の行動や考え方に影響を与える潜在意識を擬人化した存在であるジーニーは、否定語を理解できないのだと、友人は続けた。
 
「ご主人様である私たちが口に出して思い浮かべた映像を、ジーニーさんは叶えてくれちゃうの。否定語は理解できないから、反戦なら戦争を、平和なら平和を、ね」
このことをマザー・テレサは知っていたのだと、その友人は私に教えてくれた。
 
防災や減災は「ネガティブ+否定語」の構造だった。
口であれ文字であれ、名乗る度に「災い」が出てくるのは単純に「嫌だな」と思った。
このことに気づいた私は、チームの名前から「減災」を削除したくて仕方なくなった。
 
「うーん、まだなんか、しっくりこないんだよねー」
新名称候補「チーム・トイレの備え」を音で聴いたその友人が電話越しに言う。
「えー、まだダメなの?」と思う反面、「やっぱりか」と安堵している自分もいた。
実は「やり切ってない感」を自覚していたのだ。
 
もう一度「ネガティブ+否定語」を探してみた。
もはや候補は「備え」しかない。
「能力が備わる」などと言う場合は肯定的だ。
ところが「何かに備える」のように使うとき、その「何か」はネガティブなものが多い。
隠れてはいるが、トイレの備えは、災害時のトイレに備える、という意味なのだ。
なんと「ネガティブ+否定語」の構造になっていた。
 
「減災」は消せば済んだが、「備え」は消さずに言い換えたい。
「反戦」に対する「平和」を見つけたい。
答えはほどなく現れた。俗に言う「降ってきた」というやつだ。
「自由」という言葉だった。
 
いつも、どんなときも排泄に自由であること。すべての人が生きること。
 
チームが願い、目指す未来のイメージそのものだった。
新名称を「チーム・トイレの自由」に決めた。
 
とは言え、ようやく認知され、多くの人に覚えられてきた名前を手放し、変更を宣言するには勇気が必要だった。
怖くもあった。一部のメンバーには反対もされた。
しかし私は、勇気を出してチャンレジすることを選んだ。
昨年十一月のことだった。
 
変更してから十ヶ月。
結論を言えば、変えてよかった。
「排泄に自由であること」というメッセージは共感を得て、多く人から応援され、支持されている。何よりも名乗る度に、明るく外に向かうエネルギーを私自身が強く感じられている。「これでいいのだ!」の爽快感そのものだった。
肩はリラクッスしていて、柔らかい。
 
交通事故死ゼロ、いじめ撲滅、禁煙、減量、廊下は走らない。
世の中のスローガンには「ネガティブ+否定語」が使われがちだ。
もしもあなたが発信者で、どことなく違和感を覚えていたら、自分のメッセージを見つめ直すことをお勧めしたい。
「ネガティブ+否定語」を見つけたらチャンスだ。
「あれがダメなのだ!」を手放して「これでいいのだ!」と、今こそ叫ぼう。
 
 
 
 
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2019-08-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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