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ゼロから3ヶ月でマラソンを2回走った私がランニングをお勧めしない本当の理由


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:ブロムベリひろみ(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「私、走ってるの」。それは2015年6月のことだった。久しぶりに会ったまきちゃんは、連絡の途切れていた数年間に彼女に起こった出来事をいろいろ教えてくれた後、はずんだ声で近況を話した。
 
“まきちゃんが走ってる?”。 それまでの彼女と走ることの間には隔たりがあるように思えて、話がピンとこない。だいいち私は走ることが嫌いだ。健康になるのではなく体に悪い影響を与えるものだと真剣に考えていた。走っていない人にはそれとなく罪悪感を与えるちょっと威圧的な感じも嫌だった。
 
「今では、もう走らない生活になんて戻れない。それに走ることって本当に簡単。ウェアにさえ着替えれば、家を出た瞬間にもう走ってるし、帰ってきたらシャワーを浴びて終了。あー、走ろうかな? いやだなー、とか悩んでいる時間があればその間に外にでて、何分か経ったらもう走り終わっているしね」。
 
“そっか、よくわかんないけど、まきちゃんが楽しそうでよかった。でも私は絶対一生走ったりしない。それにまきちゃんも私に走ること勧めたりしなかった。人類には走る人と走らない人がいるのだ”。それが4年前の私の持論だった。
 
私は運動とは無縁ではない。中学と高校ではバスケット部に入っていたし、テニスなどの球技も好きだった。でも球を追いかけるという目的もなしに「ただ走るだけ」のどこがオモシロイのかまったくわからなかった。走るのはしんどい。運動をした後の爽快感を求めるなら、走るよりもきつめの筋トレの方がいい。ましてやもう若くはないので、急に心拍数が上がることでばったり倒れてしまったり走っている途中に足をくじいてしまえば元も子もない。ランニングはとにかく危険そうだ。
 
“別に無理して走らなくても体を健康に保つ方法はいくらでもあるし。毎日最低8000歩は歩くと決めてからずっとやってる。ヨガに週に2,3回行くようになってからも、一周年の記念日を祝ったばかり。私は一生ランニングとは縁なく生きていく”。ほんの4ヶ月ほど前まで、私は本気でそう思っていた。ただ、村上春樹が規則正しく毎日走っているということだけ、なんとなく気にはなっていた。
 
2019年5月17日。私は街なかのランニングシューズ専門店にむかっていた。これまでは信号が赤に変わりそうな時にせいぜい3メートルくらい横断歩道を「小走り」する程度の生活であったことを打ち明けて、お店の人に靴を選んでもらう。
 
どういう風にしてランニングを始めればいいですか? と聞くと、思ってもみない答えが返ってきた。「いつもよく歩いているのでしょう? であれば靴だけこのランニングシューズを履いておいて、いつものように歩いて。そして、ちょっと走ってもいいかなー? って思えたら走る。無理しなくていいから、しんどくなったらまた歩く。で、またちょっと走るかなー? って思えたら走る。そんな感じで歩くついでにちょっと走るって感じで、それで始めてみて」。
 
お店の人のこのアドバイスは効いた。2日後の5月19日、勧められるまま予算の2倍以上の大枚を払って買ったランニングシューズを履いて、私はいつものようにウォーキングにでた。少し歩いたところで恐る恐る走ってみた。数歩走り出しただけであっという間に息が切れる。
 
“やっぱり体に悪いわ”。走るのをやめる。歩く。またほんの少し走る。歩く。走る。歩く、歩く。
 
その後も圧倒的に歩いて家まで帰ってきたが、それでも合計すると400メートルくらいは走ったようだ。走った感はほぼゼロだったけど、それでも走る生活の一歩を踏み出した私は感動してこう思っていた。「マラソンってこれを100回繰り返せばいいだけ? なんや、もしかしたら手が届くのかも!」。
 
あんなに忌み嫌っていた「走ること」。そんな私を走る気にさせたのは「健康」ではなかった。いや、うまくいけば健康にもいいかも? とはもちろん思っていたけれども私に靴を買いに行かせた動機はまったく違うところからやってきた。
 
それは一冊の脳科学の本。
 
スマホとストレスとの関係を脳科学の見地から説いた書籍を読んだことに始まり、その領域に関する知識を深める中で私は『一流の頭脳』という本に出会った。この本に書かれていたのは脳のパフォーマンスをあらゆる方向から押し上げる「運動、特にランニングなどの心拍数をあげる運動」の持つ力だ。
 
心拍数があがる運動をすると脳への血流が増える。脳の「思考」を司る前頭葉に大量の血液が流れ、機能を促進する。さらに運動を定期的に続けると前頭葉には新しい血管が作られ、送り込まれる血液や酸素の供給量が増え、老廃物の除去がスムーズに行われる。記憶や感情に重要な役割を果たす海馬でも、運動により血流が上がることでストレスや不安を鎮める力が強化され記憶力がよくなる。そのようなことが数々の研究で既にはっきり証明されていることがこの本には書かれていた。
 
私にとって決定的だったのは、スウェーデン人の医師が書いたこの本の「創造性と運動の関係」を扱った章で「村上春樹」が例としてでてきたことだ。運動が創造性を高める。自分でも経験したことがある人もいるかもしれないが、それはただ単に運動の爽快感から頭が冴えたり気分がリフレッシュされたことによるものではなかった。
 
アメリカのスタンフォード大学が行った実験によると、新しいアイデアをひらめく力は体を動かすことにより強化され、ウォーキングよりもランニングに効果があることが実証されていた。体にある程度の負荷がかかるほうが身体の強化だけではなく創造性においても効果が高い。ちなみにアインシュタインが相対性理論を思いついたのは自転車をこいでいる時だった、ということもこの本から知った。
 
さて、私は5月19日に小さな一歩を踏み出してから少しずつ走る習慣を重ね、ここ2ヶ月は1週間に2,3回、一回につき3kmちょっとを20分で走ることを続けている。使っている活動量計やアプリによると、私はすでにマラソン2回分くらいと同じ距離を走ったらしい。
 
走ることは、「ストレスや不安への耐性」を強化したり「創造力」を高める以外にも、「集中力」「モチベーション」「記憶力や学力」「健康長寿」などにポジティブな効果をもたらす。運動と脳内物質の関係、そして運動が脳のアップグレードにどう作用するかなど既に科学的に実証されている数々の効果は、やる気さえあえば誰もが自分で確認することができる。
 
しかしランニングを始めてからの3ヶ月ですでにマラソン2回分の距離を走った私も、かつてのまきちゃんと同様、走ることを人に勧めることはないだろう。どうして効果絶大の「秘密」をわざわざ人に話す必要があるだろう? そう、人類には走る人と走らない人がいるのだ。他の人には勧めないが、私はもう走らない生活には戻れない。
 
 
 
 
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2019-08-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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