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メディアグランプリ

健康経営は、植林活動である。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【10月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:水野雅浩(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「上が『何かイベント的なことをやれ』っていうから、ね。ウォーキング大会も考えたんだけど。みんな、参加しないだろうから。社員向けに健康習慣の講演会でも、やって頂けます?自由参加だから何人集まるか分かりませんが」
 
目の前のソファーに座っている男性は、某大手広告代理店の人事部長だ。余分な仕事が増えたと思っているのか、気乗りしていないのが伝わってくる。貧乏ゆすりで、ベルトの上に乗ったお腹が揺れている。煙草のにおいがする。大きめのスーツの下には、大きめのワイシャツ。体全体が緩んだ靴ひものようだ。
 
こんな場面は100回以上経験している。
 
目の前にある、この一本の細い糸ほどの機会を逃してはいけない。この細い糸は何百人という社員の健康につながっていくのだから。心の中でそう唱えて、内面のざわつきはいったん横に置き、にっこり笑って返事をする。
 
「もちろんです。職場でできる健康マネジメントをテーマに社員の皆様に精一杯、お話しさせて頂きます」
 
私は「仕事のパフォーマンスを上げる健康マネジメント」をテーマに、執筆、講演、研修、コンサルティングをしている。対象は、企業、行政、大使館など多岐にわたる。
 
ここ数年、ビジネス雑誌では「健康経営」というキーワードが出ない日はない。
企業が従業員等への健康投資を行うことで、従業員が元気で長く働くことができ、結果、生産性の向上につながるというものだ。
 
健康経営の背景には、日本の人口構造の転換がある。
かつての人口が増えていた時代は若い労働力がどんどん入って企業を活気づかせた。しかし、今の人口が減りゆく時代は、中高年、つまり体力がなく、病気がちな労働力が増えて行くという時代。つまり、おじさんたちの健康マネジメントを会社で行う必要ができてきた、という訳だ。
 
では、健康経営は広まっているのか?
 
いや、どの企業もまだまだ、模索段階だ。
 
そして企業の多くは、今日、私がミーティングをした人事部長のように、「上からやれと言われたから……」「競合企業がやり始めたから……」「組合が提案してきたから……」
重い腰を上げようか、迷っている。という状態だ。
 
私は、企業で社員向けに健康マネジメント研修をする中で、必ずアンケートをとる。
項目は2つだ。
 
1つ目は、「どんな健康の悩みを持っていますか?」という内容。
 
肩コリ、冷え症、疲労、便秘、眼精疲労、肌荒れ、偏頭痛、めまい、たちくらみ、足がむくむ、肥満、尿が近い、爪が割れる、過食気味、小食、ため息がでる、風邪を引きやすい、などなど……。見ていて、気が滅入るような言葉が並び続ける。
 
多くの企業で、ビジネスパーソンの健康の悩みのTOP3は、1位:肩こり、2位:慢性的な疲れ、3位:睡眠不足だ。職場に出社することによって、疲れが年々蓄積していくのだ。そしてこの蓄積した疲労はこびりつき、こそぎ落とす事は難しくなっていく。これでは、仕事の生産性も上げるのは難しいだろう。
 
アンケート項目にはもう一つ質問項目がある。
 
「これらの悩みがなくなれば、仕事のパフォーマンスは上がると思いますか?」
YESの方は□に✔をして下さい。
 
例外なく、100%チェックが付く。
 
このアンケート結果を見て、人事部長も顔色が変わる。
いわゆる健康診断では見えてこない、社員たちの無言の悲鳴だ。
 
日本は経済成長を追い求めるあまり、社員の健康を犠牲にしてきた。そのつけが回ってきている。新卒の頃はイキイキと働いていた社員達も、また、体力に任せて乗り切ってきた中堅社員たちも、中年になり心も体もカサカサになっている。
 
社員という名の資源は無償で提供されていたと勘違いし、極限まで使い倒した企業が沢山ある。それは、まるで、森林伐採を続けたために、はげ山になった山のようだ。ちょっと嵐が来たらとめどなく土砂崩れになりかねない。
 
健康経営は、はげ山に、植林をして行くようなものだ。と、
いつも思う。
 
確かに、時間がかかる。
しかし、一本一本、苗木を植えて行くことで、やがて山には緑が戻る。緑が増えて、木々がしっかり根をおろせば台風が来ても山はびくともしない。
 
社員が出社して健康になる職場作りは、どんなことができるだろうか。
社員に問いかけると、こんなアイディアが出てきた。
 
朝礼時の3分間のラジオ体操。
ランチの後の15分の昼寝タイム。
仕事終わりの疲れをリセットするストレッチ。
 
確かに、こんなことでいいの?と思うような、アイディアだ。
しかし、それを継続したらどんな変化が生まれるだろうか。
 
もしも、ラジオ体操をして肩コリ、腰痛が減り、疲れが今の半分になったら。
どれほど体が楽になるだろうか。
 
もしも、眠気と必死に戦いコーヒーを飲みながら乗り切っている毎日が、15分の昼寝で頭をすっきりさせ、集中力を回復させることができるのなら。
どれほど仕事の効率は上がることだろう。
 
もしも、終業時のストレッチをすることで、仕事の疲れをリセットできたとしたら。
家族にどれほどいい笑顔で会うことができるだろうか。
 
職場での健康習慣が定着すれば、健康を経営戦略などと言わずに、企業文化として定着するはずだ。そのころには社員一人一人に活力が戻り、はげ山は森に戻るはずだ。
 
一本一本、木を植えて、森を作る。
遠い道のりだ。
しかし、魅力的な道のりだ。
 
賛同してくれる仲間を集い、一緒に見たこともない森を作っていきたい。
 
 
 
 
***
 
 
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。
 

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2019-08-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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