メディアグランプリ

手軽。気軽。シェアサイクル。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:大谷ナオコ(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「一時置き場、空いてないんです。すみません」
え? 空いてないって、そんなことある?
 
最寄り駅までのバスがないので、自転車は必要不可欠だ。サラリーマンのように駅を毎日使うわけではないので、駐輪定期券は持っていない。その日は朝から顧客先へ向かうために一時置き場へ向かった。そこで管理しているおじさんから言われた一撃だ。
 
駅周辺の一時置き場は一箇所しかない。置ける台数も多くない。駅周辺の郵便局やファストフード、コンビニには駐輪場がなく、銀行の自転車置き場は数台しか置けない。もちろん時間課金制。少しでも路上駐輪しようものなら警告喚起の札がぶら下がる。更なる人口増加で、どんどん監視員の目が厳しくなっているのだ。
 
「そしたら私はどうしたらいいんですか?」と私。
「スーパーの駐輪場か、隣の駅まで行ってもらえる? ごめんねー」とおじさん。
スーパーは駅から5分程。しかも時間制で課金されてしまう。数百円単位の話だが、なんだか癪にさわるのだ。比較的早くうちを出たのでまだ時間はある。それならばと隣の駅まで自転車を走らせた。
途中雨が降ってきた。決断した後の雨は後悔を倍増させる。
「お金がかかってでも、スーパーに停めておけばよかった……」
 
3年半前に引っ越してきた地域は人口増加が激しい。かつて会社員時代に通っていた街でもある。あれから15年以上経過して、駅周辺は思ったほど変わってはいない。しかし、人口推移はすさまじい変化を遂げており、私がその地を去ったあたりから劇的に人口が増えていた。それまでは減少傾向だったのだが、大型マンションの建設ラッシュが続き、ここ10年は右肩上がり。1棟建てば100世帯単位で人がやってくるわけで、保育園も小学校も建設が追いつかないのもよくわかる。
 
少々家賃があがってでも駅近に住むべきだった。
この地に引っ越してきて何度感じたことだろう。
それがシェアサイクルの登場で、一気に解消された。
 
各地でシェアサイクルが増えている。レンタルサイクルと違うのは、事業者が設置する専用の駐輪場(サイクルポート)が点在しているところだ。ビルやコンビニ、駅前などにサイクルポートがあって、会員はポート間ならばどこでも貸出、返却が可能だ。各社が様々な地域に参入しているが、使い方はおおよそどこでも同様であろう。事業者によって1回につき30分から1日使用までと、料金はさまざまである。
 
私にとってシェアサイクルは皮むきピーラーみたいなものだ。野菜の皮をむくには包丁でもいいのだが、使い始めると薄くてキレイにむけるししかも安全。値段もお手頃で場所も取らないのがピーラーだ。駅まで徒歩でもいいのだが、シェアサイクルは駅の定期駐輪場と同額。1回につき30分という時間制ではあるが、ポート間の貸出返却は自由で便利。しかも電動自転車だし。ピーラーと同じように、なくてはならないものになった。
 
存在を知った当時は、まだサイクルポートが少なかった。何回か使ったこともあったが、ここまでの便利さに気づけていなかった。今年に入って伯母から譲り受けた自転車がパンクした。おそらく20年位乗っていた年代物だ。タイヤのパンク以前に、あらゆる箇所が折れていて、修理をしなくてはと気にかけながらもそのまま乗っていた。サイクルショップでみてもらうと、タイヤを外したら車輪のリアまで折れる可能性が高いと、修理すら断られる始末。買い替えを真剣に考えた矢先、近所に小さなサイクルポートができたのだ。そこから一気にシェアサイクルのヘビーユーザーとなった。自転車置き場がほとんどない場所にサイクルポートがたくさんできているおかげで、電車に乗らずに自転車で家まで帰ることが多くなった。電動自転車なので坂はスイスイ行けるし、道をおぼえることもできる。日に焼けるのは玉にキズだが、外の空気は実に気持ちが良い。
 
UberEatsの配達員がこの自転車を使っているのをよく見るが、配達員は登録すれば月額制で使い放題なのだのだそうだ。配達はバイクや軽自動車というイメージ。しかし、運転免許証が必要だ。自転車は運転免許証がいらないので、バイトとして気軽に始める人が増え、UberEatsが急激に広がる。利用者が増えればポートがたくさん増え、利用者がますます増える。どちらもいいことづくめなのだろう。
 
個人的にはシェアサイクルがもっと発展してほしい。通勤通学は電車やバスも便利だが、エコで新しいクルマのカタチでもあるシェアサイクルに期待している。駐輪場のないところが都会には多すぎる。サイクルポートはどんどん増えているので、家や職場の近所にある人には本当におすすめだ。自転車を持っていない人、持っているけど自転車置き場に困っている人、シェアサイクルは知っているけど使い方がわからない人は、まず登録してみよう。
いずれも、交通ルールやモラルを守ることはお忘れなく。
 
 
 
 
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2019-09-26 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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