私が語学を続ける理由とテレビショッピング
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記事:CHACO(ライティング・ゼミ平日コース)
先日、テレビについて大いに考えさせられる体験をした。
これまで約20年間、私はテレビとは距離を置いて生活してきたが、ヨーロッパに住んでいた期間と、その後の日本でのテレビなしの生活で、日本のテレビをまともに見ることはなかった。
それが、この1年間、家にテレビを置いたときからいろいろと面白いことに気付きだしたのだ。
とにかく、食べ物の番組が多いこと。朝から晩まで一日中、グルメ番組をやっている。見ていると、紹介されるお店がどれもとてもおいしそうで行ってみたくなるのだ。ただ、外食やお取り寄せで食べ続けたその結果、気になってくるのが体型や健康だ。だから、テレビではグルメ番組の合間にこれまたダイエットや体操、健康情報番組がたくさん放送されている。
比較のためドイツのテレビについて言えば、ニュース、ドキュメンタリー、討論番組、推理ドラマなどが多く、日本のテレビに比べてかなり地味だ。
これはそのまま人々の会話の内容に反映されており、ドイツでは友人や家族同士でもいわゆる議論をすることがふつうにある。
一方、日本では、特に女子が集まると新しいお店やグルメ情報は話題に欠かせない。逆に言えば、人々の興味に沿った内容の番組が作られていると言ってもいいのだろう。
そのように感じながら過ごした1年間で、確かにテレビはいろいろな情報がビジュアルに、タイムリーに得られる情報源として優れたメディアだという結論に至ろうとしつつあったその時だった。つけっぱなしのテレビをダラダラと見ていたとき、あのおなじみのテレビショッピングでお掃除ロボットが紹介されていた。ちなみに私は家事はできることなら自動でやる派だ。食洗機はヨーロッパ仕様の大型を愛用し、床掃除も拭き掃除専用のロボットに任せている。今欲しいのは、自動で窓ふきをしてくれるロボット、自動で洗濯物を干してくれるロボット、自動で料理をしてくれるロボットなどなど、あれば確実に買っているはずだ。
ただ、ルンバをはじめとする掃除機ロボットだけはいくつか希望に合わない点があり未だ導入していない。
そんな時に、テレビショッピングの魅力的な数々の言葉で巧みにその気にさせられ、勢いでルンバを買いそうになってしまったのだ。
我が家では家電の買い物は必ず夫に相談することになっている。異なるメーカーのものを価格や性能などすべてを完全に比較して、納得のいくものだけを購入するという暗黙の了解があるため、そのプロセスを私がすっ飛ばそうものなら、後で面倒なことになるというのは経験上百も承知のはずだ。なのに、「注文は本日限り」、「分割手数料なし」、「インターネットでも注文できる」などと聞いて、もう少しでポチっとルンバを注文しそうになってしまったのだ。今思えばあれは、一種の狂気ともいえる精神状態だった。
ギリギリで我に返り思いとどまることができたきっかけは、掃除機ロボットで一番気になっていた「音の大きさ」である。テレビショッピングでは触れられなかったこの音を確認しようと、動画サイトを検索していたのだが、それすらおそらく「音がそれほど気にならない」ことの理由付けを探していたにすぎないように思う。そんな時、なぜかふと我に返って、
「今使ってるブラーバのほうが断然静かじゃない? そもそもブラーバで十分じゃない?」
と気づいたのだ。ブラーバは拭き掃除専用ロボットで、乾拭きモードで市販のワイパーシートを使えば掃除機の代わりにいい仕事をしてくれる。しかもほとんど音がしない。これを思い出した瞬間、あの熱狂がスーッと冷めていった。
「私、なんでルンバなんか欲しくなったんだろう……」
と、自分の行動が自分で信じられなかった。
そして、我が家にルンバはいらないという現実に引き戻してくれたのは、他でもない夫だったのだ。彼がその場にいたわけでもないし、相談したわけでもないが、ドイツ人の夫の影響が大きいことは間違いない。
一般的にドイツ人には、物事をまずは疑ってみる癖のようなものがある。聞いたことをそのまま信じないのだ。ドイツはナチスという過去の過ちを繰り返さないよう、戦後はそれを教訓として、周りに盲目的に流されることなく一人ひとりが自分で考える教育をしてきた国だ。
「そうだ! そうだった! 流されるとこだった!」
それが考え方や行動に染みついている夫は、私のような衝動買いは決してしない。ときにはそれが私にとって不都合にもなることは否めないが、積極的に取り入れるべき姿勢でもある。
そして、私はふと思い当たった。私がこれまで何十年も英語やドイツ語を学び続けているのは、いわばテレビショッピングに簡単に誘導されない自分になるためではないだろうかと。日本語だけの情報源には偏りがあるし、量も十分ではない。客観的な視点が得られない場合も多い。日本が世界から「本当は」どう見られているかを日本語でない情報源から得ることで、自分が置かれたポジションを客観的に知ることができる。
これからの社会は、国際関係にしても環境問題にしても、日本だけで内輪ネタで盛り上がってる場合ではない。個人レベルですら他国と同じ感覚で協力してやっていかなくてはならない時代だと思う。そのカギとなるのが、英語をはじめとする外国語の習得であることを私は疑わない。そして、日本を正しく外国に伝えるにも、わが身を客観的に振り返り自分の可能性を広げるにも、語学の習得は今後、生きていくうえで必須のツールになるだろう。
そして、このツールを得たとき、何よりも自分の可能性は大きく広がり、選択肢と自由が増え、それが自分の最大の武器のひとつになるかもしれないことはぜひ知っていてほしいと思う。
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