身体の声に耳を傾けて、自分のことを知る
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:西田 千佳(ライティング・ゼミ 日曜コース)
「あなたの身体は、あなたの食べたもので、できているのですよ」
この言葉に愕然とした。ぐうの音も出なかった。
年のせいか、疲れが抜けなくなった。
「まさか、更年期?」とうとう私も焼きが回ったかと思った。
心配になって、近くの婦人科で診てもらうことにした。
一通り検査をして、後日、結果を聞きに行った。
診察室で、担当の医師から検査結果が記された紙を手渡された。
その数字が、私の身体の全てを語っていた。
もともと健康には自信があった。大きな怪我もなく、病気とは無縁だった。
20代の頃は平気で無茶な生活をしていた。ほぼ毎晩飲みに出かけていた。
午前様は当たり前。でも、翌朝は普通に仕事に行っていた。
その頃は、お酒が活力だと思っていた。
30代からは、好きな仕事に没頭した。
今ではうるさく言われるだろうが、一ヶ月休みなしで残業続きの生活をしたこともあった。休みなんて必要ないと思っていた。
仕事で徹夜になる日もあった。1時間だけ仮眠を取って、また仕事につくこともあった。
食事は、時間があれば食べるという感じだった。夜中のラーメンも当たり前だった。
好きな物ばかり食べていた。「自分は大丈夫」という変な自信があった。
しかし、身体は正直だ。
40代にもなると、疲れが抜けない。いくら身体を休めても、次の日に疲れが残る。
朝がツラい。身体がしんどい。むくみもひどい。
絶対に、年齢のせいにはしたくない。でも、不調の原因は知りたい。
そう思って、病院で診てもらった。
「女性ホルモンの値は問題ないし、甲状腺も異常はないです」
数値上、まだ更年期ではなかったことにホッとした。
「今は、特に病気という訳ではありません。でもね……」
その言葉に不安がよぎった。医師は、そのまま説明を始めた。
血糖値が基準値より若干高かった。今までは基準値内におさまっていたはずだ。
だんだん体重が落ちにくくなったので、意識的にご飯の量は減らしていた。なのに、何故?
「糖質をもっと減らしてください。何なら、しばらく食べなくても大丈夫です」
「えーっ!」意図せぬ言葉に、声を上げてしまった。
これは、私にとって大問題だ。
おかずがなくても、ご飯さえあれば生きていると思っているほど、私はご飯が好きだ。
減らすのもやっとなのに、食べないという選択肢は全く考えられなかった。
困り果てた私を見て、医師は言った。
「あなたの身体は、あなたの食べたもので、できているのですよ」
心に刺さった。
言われてみれば、その通りだ。
食事が身体に影響するとわかっている人は、本当に食生活に気をつけている。
スポーツ選手は、しっかりと食事の管理をしている。
健康的なダイエットに成功した人は、食事が大切だと言う。
彼らには、当たり前のことなのだろう。
そう考えると、食事が体調に影響したことは、私にも何度かあった。
風邪をひいて熱を出しても、食欲だけはあったので、比較的早く回復した。
どんなに忙しくても、何かしら必ず食べていたから、今まで倒れたことはなかった。
でも、不摂生を積み重ねていた私の身体は、少しずつきしみ始めていたのだ。
身体をあまり動かさないから、足がパンパンにむくむ。
風邪を引く回数が増えて、たまに熱を出す。
これまでにも、私の身体は声を上げていた。私がそれを聞き逃していただけだった。
間違いない。
医師の言葉に、私はただ頷くしかなかった。
そして、医師から勧められたのは、ビタミンB1、B2などが入った、ビタミンB群のサプリメントだった。
「一日三回、しっかり摂ってください」何度も念を押された。
私には、ビタミンB1が不足していたようだった。
糖質を分解してエネルギーに変えるためには、ビタミンB1が必要であり、不足すると疲労物質が溜まって、疲れやすくなるそうだ。
私の不調は、ビタミンB1が足りていないのに、大好きなご飯ばかり食べていたからだ。
今回も、身体は声を上げていた。いつもと違って、きっと悲鳴に近い声だった。
悲鳴とわかって、やっと気づくことができた。
きちんと身体の声を聴いていれば、もう少し早く気づくことができたはずだ。
今までの不摂生を、初めて悔いた。
半年経って、経過観察のため、同じ婦人科で診てもらった。
ご飯はゼロにはできなかったが、頑張って一日一食だけにしてみた。
もちろん、サプリメントは忘れなかった。
その結果、血糖値は基準値に戻っていた。
「数値は良くなってるし、少しは楽になったでしょう」
私は、大きく頷いた。
「でもね、本当に良くなりたかったら、仕事を変えなきゃダメかな」
それは、なかなか厳しい話だ……
この先、まだ仕事はしっかりやりたい。でも、もちろん人生も楽しみたい。
そのためには、身体の声に耳を傾けて、しっかり自分と向き合っていきたい。
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