二人三脚のやる気スイッチ探し
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
【12月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:Yuki Hashizume(ライティング・ゼミ平日コース)」
「やる気スイッチ君のはどこにあるんだろ」
後頭部や、おでこ、シャツをまくりあげた背中に光るオレンジ色のスイッチを押すと男子学生はエネルギッシュに走り出す。
このフレーズと映像が脳内に思い浮かんだ人は、確実に私と同じ世代もしくは少し上の世代の方だろう。
当時は「うまい表現したもんだ!」なんて笑いながら食卓を囲んでテレビを眺めていたのを思い出す。
家族で笑いながら話しのネタにしたりもしていた。
「やる気スイッチなんてあるわけないじゃん!」
と心の中で文句を言っている思春期真っ只中の女子高生だった私。
そんな過去の私を見つめている現在の私は、まさに「やる気スイッチ探しの旅」に出るのだ。
子供たちと二人三脚で。
あれから時は流れ、30代半ばになり小学生の子供二人と暮らしている。
小さい頃は「〇〇しようね〜、こうするといいかもね」と母親のアドバイスを聞いて日々を暮らしてきた子供たちも、7歳と10歳になった。かわいい時期は弾丸のように過ぎ去ってしまい、気がつけば反抗期と思春期を駆け出そうとしている男二人は「可愛い」という形容詞が似合わない時期に突入してしまった。
そして、毎日が衝突でバトルの日々を過ごしている。
「三連休終わりだよ! 宿題は全部終わったんだよね?」
と問いかける私に対して
「まだだよ! うっさいな! 分かってんだよ!」
長男10歳。この年齢にしてこの返答。確かに私も少し突っかかってしまったな……反省はするものの「宿題」は終わっていない訳で。
じゃあYOUどうすんのよ? と思いながらこっそり観察してみる。
結果、宿題には手をつけずにひたすら小説を読んでいる。気づけば夕飯。そしてそのまま寝てしまう。
そんな長男を見ている次男7歳はもちろんの事、右へ倣えで同じ反応だ。
二人とも翌朝目が覚めて、終わってない宿題を抱えテンションだだ下がりで登校していくのである。
そんな状況を打破しようと動くのが母の務めだと思っている。
勉強しやすい環境にすれば自発的に勉強してくれるのかと、部屋を整えてもみた。
母が付き添えば、やるかと思ってマンツーマンで付き添ってもみた。
ご褒美があればやってくれるのかと思ってチラつかせてもみた。
兄弟どちらか片方が勉強を始めればツラれるかなと試してみたりもした。
母歴10年。私。全敗である。
もう宿題なんて知らないよ。
好きにしたらいいよ。
そう思い始めた私の心はぽっきりと根元から折れかけてしまった。
「ねえ、君たちのやる気スイッチは一体どこにあんの? お母さんには見つけられないや」
ポツリと呟いた私の一言に反応したのは次男だった。
「僕も分かんないな。やる気スイッチは目に見えない奥の方にあるんだよ、きっと」
昔のCMも見たことがない7歳の次男には「やる気スイッチ」という言葉が通じたようだ。
ワクワクした目をして私の顔を覗き込む次男に、つられるように長男も会話に加わってきた。
もしかして今がタイミングなのでは? と思い二人に問いかけてみる。
「じゃあ、そのやる気スイッチを押すにはどうしたらいいと思う? 二人が宿題や勉強を忘れずにできるやる気スイッチ。どこにあるかな?」
私の頭の中でナレーションが流れた気がした。
「Ladies and Gentleman! 今宵の謎解きショーの始まりです! 彼らのやる気スイッチがどこにあるのか? あなたには見つけられるでしょうか?」
勉強机が綺麗なら宿題できる?
ダイニングテーブルでならできる?
勉強の前におやつ食べたらできる?
宿題もどんな順番ならできる?
静かな方がいい? 賑やかな方がいい?
褒めてもらえたらいい?
どうしたら嫌な気持ちを感じずに、宿題をすることができるだろうか? を質問を繰り返して掘り下げてみた。
答えがすぐに出ない時もある、そんな時は過去にあったシーンを思い出させてみたりもした。
もしくは「こんな事あったらどうする?」とイメージさせてみたのだ。
そのやりとりを繰り返していくと、二人の嫌なこと。求めている環境が違うことがわかってきた。
驚く事に少しずつだが謎だらけのモヤモヤが消えていくのを発見できたのである。
その結果たどり着いた答えがこちら。
「僕は静かだと、いろいろ考えちゃう。音楽聴きたい。エドシーランがいい。あとは、お母さんが仕事しているテーブルで一緒にやりたい」と次男。
「僕は、静かじゃないと無理〜先におやつ食べてから自分の勉強机でやりたい。一人で。ぶっ続けは無理だから、休憩するからね」と長男。
なんという事だ。
共通点がほとんど無いのだから、一緒に宿題なんてできるわけ無いじゃないか。
母親のくせに、私は「こうあるべき、こうしたら良いはず」という自分の考えを押し付けていたのか。
子供たち本人も、気がつく事が出来ていなかった「宿題をするやる気スイッチ」を押すために必要な条件は難しいものは何一つもなかった。
ただ、それぞれが求めているモノが違うだけ。それを用意してあげていれば彼らは自発的に考え、行動する事が出来たのだ。
謎も解け、答えがわかった次は行動あるのみ。
学校から帰ると二人はバラバラに行動を開始する。
長男はまずはおやつを食べ、リラックスした後にランドセルを開く。そして宿題を持って自分の勉強机で休憩も自分のタイミングでとりながら勉強している。
次男はおやつを目指して、帰宅後すぐにランドセルを開く。宿題を持って私の仕事場にやってくるのだ。パソコン作業している私はYouTubeで彼のお気にいりのエドシーランを流す。私の横に座り、話をしながら宿題を一個ずつ解いていく。
なんと今のところこの方法で連勝中なのだ。
どうやら、私たち家族は無事「やる気スイッチ」を見つける事が出来たようだ。
毎日気持ちよく宿題を終わらせ、夕飯を迎えられる時間が幸せだと噛み締めながら「次は何のやる気スイッチ」探そうかな? と考えてみたりもする。
そうだ。
明日は試しに「私が心地よく〇〇するためのやる気スイッチ」を探してみようかな。
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