メディアグランプリ

「アナと雪の女王」のエルサから世の中のママへメッセージ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:関戸りえ (ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「この問題がわかる人、手をあげて!」
 
算数のクラスで先生が生徒に聞いた。
「はい、はい、はい!」と自信満々にみんなが手をあげる。そして、先生に指名をされた生徒が前に出て、黒板に答えを書く。
「よくできました。みんな拍手」
 
生徒の中には、答えが分かっていなくても手をあげる子がいて、先生も「S君本当にわかるの? それなら、前に来てやってみて」といった瞬間、「この問題の答えがわかる人、手をあげてー」と先生のモノマネをして、クラス全員を笑いの渦に巻き込む、ムードメーカー的な存在の子もいた。心の中では、S君のことを羨ましく思っていた。なぜなら笑いを取れる子は大抵人気者で、どこにいっても友達と仲良くなれるイメージがあったからだ。
 
私はというと、「答えはわかっているけど、手をあげない」タイプだった。
その理由は、当てられたら恥ずかしい。万が一答えが間違っていたら笑われたり、他の子達にバカだと思われたら嫌だという気持ちがものすごく強かったのだと思う。
 
何をやっても自信が持てなかった。例えば、写生大会では、なるべく友人たちと離れて一人ぽつりと絵を描いていた。かつて、クラスメイトに「これ何の絵? 下手くそやなあ」と言われたことがきっかけで、自分は絵が下手だと思い込んでいたのだ。だから、他人からのコメントや批判には、人一倍敏感だった。
 
私の記憶の中で、母に褒められたことがない。
団塊世代の父と母は、その当時の標準的な家庭を築いていた。2児の親で、夫が働き妻は家を守る専業主婦という、いわゆる核家族だ。
父と叔父は双子で、お互いの長女は同い年。親戚内では何をやっても比べられてきた。
特に、母は私の全てをコントロールしようとした。
「M子ちゃんのお家は、お母さんが日中いなくて鍵っ子だから、遊びに行っちゃダメよ」とか、「T美ちゃんは、ピアノもバレエも習っていて、お母さんも学のある人だから、仲良くしなさい」
 
習い事もたくさんさせてもらったが、ほとんど私と周りを比べて、できないことを見つけ出しては「何とかちゃんはちゃんとできるのに、どうしてあなたはできないの? 情けない」といって、ピアノやそろばんなど、できないことをできるようになるまでやらせたのである。
「できるまで」というのは、明確な基準がなく、結局は母の機嫌次第だったのだと思う。
 
「あなたのために、私はいろんなことをやらせてあげているのだから、言うことを聞きなさい」「勉強かできないと、将来ろくな大人になれないわよ」と母は私を洗脳した。
「私みたいになってほしくない」というのは、母自身を否定しバカにしているという思いがダダ漏れであった。
子供心に私は母のこれらの言葉を素直に聞くいい子を装いながら、マグマが地中でグツグツ煮えたぎるが如く反発心を強めていった。
 
どの親も、当然ながら自分の子供が失敗したり、苦労して欲しいとは思わない。我が子の悲しむ顔を見て嬉しい親はいない。
だから、将来起こりうる困難を少しでも避けるために、褒めたり脅したりしながら親の思う安全な将来を想像して、足元の小石を取り除いていくのではないか。
 
雨の日に子供は傘をさしたがらない。むしろあえて雨空の下へ出ていってはしゃいだり、水溜りでチャプチャプしたりジャンプしたりするのが好きなのではないか? それはどんな子供も、いま目の前にある楽しいことに心奪われるからなのだ。
大人は、「濡れるから、家の中に入りなさい。濡れたら風邪を引くわよ」と、言うか、傘を差し出して少しでも雨から子供を守ろうとするのだ。
でも子供には、大人の心の声が聞こえているのです。
「濡れたまま家の中に入ってきたら家中が濡れて、床を拭くのは私の仕事なの。濡れた洋服を脱がせたり洗濯したりしなくちゃならないの。雨だから乾かないのよ。風邪をひいたら、病院に連れていったり、看病したりしなくちゃいけないの。余計な仕事を増やさないで」
傘をさし出すのは、何も雨の日ばかりではない。晴れの日にも傘を差し出す親もいるのを知っている。「紫外線に触れると、将来しみやしわの原因になるからダメよ」
 
将来がどうなるかは、誰にもわからない。不安や恐怖をいだくのも当たり前のことだと思う。どんな感情も家族や周りの人に伝染する。だから、自分の親には堂々としていて欲しいのである。
母だからとか親だからというのは、肩書きではなく、ただの役割にしか過ぎないと私は思う。
 
いい母も悪い母もない。子供はみんな親の笑顔が見たいだけなのだ。そのために我慢していい子を演じるのだ。演じるのにも限界があって、次第に親への反発をしていくというループにはまっていくのだ。
私は就職を機に、煮えたぎったマグマを噴出させ5年以上家族と連絡を取らなかった。
 
親である前に、一人の人間だということを再認識しよう。パーフェクトな親なんて存在しないのだ。今まで隠してきた「自分のできないことや苦手なこと、弱さや不安」も全て捨てて「アナと雪の女王」のエルサのようにありのままで行こう。
それは子供にとって、生きていく中で安心や勇気となるだろう。
 
 
 
 
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2019-12-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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