僕がスタバではなくタリーズに行く理由《天狼院通信》
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僕の仕事場は都心にあり、行き詰まると外に出て、近くの大きな商業施設のカフェで仕事をしている場合が多いのですけれども、僕は優先的にタリーズを使っております。スタバもあるのですが、スタバにはある条件が整っている場合にしか行きません。
たまに、仕事でこちらに来てもらう場合、打ち合わせ場所にいつもタリーズを指定していますので、僕と仕事をしたことがある方は、「ああ、あそこね」とわかってくれるのではないでしょうか。
僕がスタバではなく、タリーズを選ぶ理由は、ただ、ひとつ。
タリーズの方が空いているからです。
実は、タリーズの方が、人通りの多い場所にあって、スタバの方がちょっと行きづらいところにあるのですが、タリーズの方が空いている可能性が高い。
それなので、また、待ち合わせ場所を指定する際に、席がなかったことが今まで一度もなかったので、タリーズにしています。
なぜ、タリーズは空いているのか。
いつも、通っていると見えてきたんです、その理由が。
基本的に、タリーズの店員さんたちはにこやかで、接客が丁寧です。スターバックスと遜色がないように見えます。
ところが、なぜか、一度行列になってしまうと、延々と待たされることになります。
僕も、待ち合わせをして、来てくれた方が後で飲み物を買ってくると、かなりの確率でこう言います。
「いやー、ここは遅いですね、参りましたよ」
また、隣の席の人なども、まず一人待たせておいて、一人が買ってくる場合、かなりの確率でこんな風なことを言っているのが聞こえてきます。
「ここさ、すごく遅くてさ」
もちろん、コーヒーの作り方の差や、機械の差もあるでしょう。けれども、それを差し引いても、タリーズはオペレーションが圧倒的に遅いのです。少なくとも、遅く感じられます。
なぜだろうか、と僕は別に腹を立てるでもなく、冷静に分析しました。
(まあ、僕の場合は「本日のコーヒー」をマグカップで頼むと、レジの人がそのまま作ってくれて早いと知っているので、待つことはないので笑)
見えてきたのは、スターバックスとの、「ほんの小さな差」です。
たとえば、スターバックスの場合、カフェモカのトールサイズを頼むと、レジの人が「お願いします。トールモカ」と言ったのに対して、作る人が「トールモカ」と復唱し、その間にレジの人がトールサイズのカップにモカの「M」を書いて、素早く作っているカップの列に並べます。それでから、会計を済ませます。
スタバのレジの人のオペレーションはこうなっています。
注文
↓
作る人への伝達
↓
会計
タリーズの場合は、これとは少しだけ順序が違っています。注文を取ってから、まず、会計を済ませます。それでから、作る人へ伝達します。伝達は声がけではなく、レシートの予備(おそらく注文票)を作る人の近くのボードにはさみにいきます。
タリーズのレジの人のオペレーションはこうなっています。
注文
↓
会計
↓
作る人への伝達
え、別に、順序なんてどうでもいいじゃん。
そうお思いになるかも知れません。けれども、じつは些細なことながらも、ここが大問題なのです。
想像してみてください。
あなたの前には二人、並んでいます。
タリーズはなかなか列が進みません。
ようやく、あなたの番になりました。
ところが、心に決めていた注文を店員さんに告げようとしたそのとき、その店員さんが、ふっと目の前から消えるのです。
つまり、前の人の注文を、作る人へ伝達するために、レジを離れるのです。
これが、並んでいる人にとって、ストレスになります。
なぜなら、タリーズを利用する多くの人が、スターバックスを利用したことがあるからです。スターバックスでは、自分の順番になった途端に店員さんが目の前から消えるということはありません。
こういうことって、ひとつそういうオペレーションの問題があると、必ず、違ったところにも綻びが出てくるものです。
たとえば、タリーズではお客さんが3、4人並んでいても、平気でレジの中間精算(売上と中のお金が会っているかどうか、小売業では決まった時間に確認します)をしているのをよく見かけます。
また、お客さんが並んでいても、流しでミルクのパックを洗っているのも見かけます。
これは、スターバックスでは、ほとんど見たことがないだろうと思います。スターバックスでは当然のように、お客様の方を優先させようとします。
たとえば、スターバックスでは、列が伸びると、レジでも作り手でもない、手が空いているスタッフがメニューを笑顔で持ってきて、後ろに並んでいる人に渡します。
タリーズでもやるのですが、タリーズの場合は、明らかに中のオペレーションがスムーズに回っていないのに、出てきてる。それなら、中を手伝ってと、お客なら思ってしまいます。
また、比較的空いているときに、注文がなかなか決められないお客様がいて、列にお客様が並びはじめた場合、スターバックスの場合は、作り手が、一時的にレジ要員になって、次のお客様の注文を取ってから、再び素早く作り手に戻ります。
ところが、タリーズの場合は、作り手は、手持ち無沙汰に待っているだけです。
これでは、まるで注文が決められないお客様が「悪者」のように見えてしまいます。
何を言いたいのか。
僕は、何も、タリーズに文句を言いたいわけではありません。本当に、できれば、あのままのオペレーションを続けてほしいと思います。なぜなら、打ち合わせに使うときに、これまで通り、空いているだろうからです。
そして、オペレーションがまずい店を見ると、このように、多くの事が学べます。たとえば、天狼院ではこうならないようにしようと、思えるわけです。(実際に、問題がある店から学べることの方が格段に多いので、そういう店は僕にとって宝です)
もし、タリーズがスターバックス級にオペレーションに優れていたならば、僕もスターバックスのオペレーションの素晴らしさ、隙のなさに気づかなかっただろうと思います。
「鼓腹撃壌」の故事にあるように、人は天下が太平のときは、為政者の政治のせいではなく、世の中はこういうものだ、と思ってしまうものです。けれども、ひとたび、戦乱の世の中になると、平和がいかに尊いものかに気付かされます。
それと全く同じ仕組みで、我々は「特上クラスのサービス」に慣れきっています。すると、「中くらいのサービス」を受けただけで、逆にマイナスのサービスを受けているような気になってしまいます。そして、「あそこはサービスが悪い」とお客がつかなくなります。本当は、タリーズのサービスは決して悪いわけではなく、むしろ、丁寧な方なのに。
クレームとして顕在化するならばまだしも、ユーザーは基本的に「無口」なので、黙って、文句も言わずに、来なくなります。それで、立地が悪い場所にあるはずの、サービスのオペレーションがさほど変わらないはずの、ライバル店に人を取られてしまうのです。不思議なもので、多少混んでいても、人はそういったところでサービスを受けたがります。
もっとも、サービスの過剰性について、議論はあるでしょう。
けれども、「囚人のジレンマ」よろしく、どこかが「特上のサービスを提供してしまった」のなら、他も追従しなければ差を広げられることになります。たとえば、ある小売店がライバル店に対して、「あそこはサービスを良くしすぎるからずるい」と言ったって、何になるでしょうか。(牛丼チェーンやマクドナルドなどのファストフード店では、サービスではなく、価格戦争で、「囚人のジレンマ」的現象が起きたことを、覚えている方が多いはずです。(牛丼チェーンは今でもですかね))
オペレーションの小さな違い、ほんの些細な違いが、やがて、業績に決定的な差となって現れてきます。
そう考えると、この記事も、偶然ではなく、必然だったのではないかと思えるのです。
多くの場合、業績悪化は、不況だから、などと外に要因を求めてしまいます。けれども、本当にそうでしょうか。提供する商品に、そして、サービスに、オペレーションに、マネジメントに、本当に疎漏はなかったでしょうか?
同じ業界でも、勝ち組と負け組があるのなら、きっと、負け組の方は内に問題を秘めているだろうと思います。
もちろん、この「タリーズ・スターバックス論」は、僕が通っている店舗だけかも知れません。他のタリーズは超優秀かも知れません。けれども、もしそうならそうで、大問題だということはおわかりかと思います。
店舗ごとにサービスに対して、「ムラ」が出ているという新たな問題が浮上してしまうからです。
ちなみに、最初に僕は、「スタバにはある条件が整っているときしかいかない」と言いましたが、「ある条件」がどんな条件か、もうおわかりでしょう。
そうです、平日の閉店間際や早朝など、スタバが空いているとき、です。
追記:
実は先日、スターバックス日本法人の社長だった、岩田松雄さんとご一緒する機会がありました。新しいタイプの書店、天狼院書店について話を聞いてもらうついでに、このタリーズとスターバックスの違いについての僕の見解を、岩田さんに聞いてもらいました。岩田さんには、「それは鋭い指摘だね、本にも出来る」と半ば冗談で言っていただけましたが、とりあえず、ブログにしてみました。
【東京天狼院オープンニング情報】
天狼院書店が9月26日(木)に、ついにリアル書店をオープンさせます!
場所は池袋です。
オープニング関連イベントのスケジュールは以下のとおりです。
9/12 天狼院プレリュード in OCEAN Casita〜書店と出版の未来を「超」前向きに考える会SPECIAL〜
*こちら参加申し込みできます!→ http://kokucheese.com/event/index/110423/
9/20 「黒船来航」出航除幕式〜プレオープン〜
9/26 東京天狼院プレミア〜オープン〜
皆様のご来店、心からお待ちしております。
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