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綺麗なネイルは子育てを頑張るママの証

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:月村あゆみ(ライティング・ゼミ 通信限定コース)
 
 
私はネイリストになって10年、そして自分のネイルサロンをオープンして7年になる。息子たちの歳と同じだ。
ネイリストになったきっかけは正直言って思い出せない。なんとなく過ごしているうち、気がつけばネイリストになっていた。
でも、自分のネイルサロンをオープンすることにしたきっかけは、よく覚えている。
 
あの頃、私は育児に疲れ果てていた。
 
揃ってよく泣き寝ない、いわゆる「育てにくい子」だった双子の息子たちを抱え、マイホームのローンを抱えてほぼ毎日午前様だった夫や、社会人生活を謳歌する友達を羨む余裕もなく、誰とも話さずに一日を終えるのが当たり前だったのだ。
当時よく思い出していたのが、高校2年の時のクラス担任の口癖だった。「人の人たる所以は、人と人との関係にある」ドイツの法律家のことばだという。いじめ自殺や家出なんて話が出るたび、おまえら友達や家族を大事にしろよ、という文脈でよく口にしていたことばだった。
 
人は他人との関係によって人になる。
それならば私はなんなんだ。
 
誰とも話さず、ただこの泣き叫ぶ赤ちゃんたちのために悪戦苦闘を繰り返してる。そしてその合間に力尽きて一瞬眠りに落ちる。そしてまた泣き声で目を覚まし、戦いに戻る。最後にお風呂にゆっくり浸かったのはいつだっただろう。自分の髪の毛をちゃんと乾かしたのは?きちんとスキンケアをしたのは?
これが子育てなんだろうか。
 
もうお母さんなんだから。子どもたちのためには、自分を犠牲にするのが当たり前。お風呂だって髪の毛だってスキンケアだって、ママは後回しでいいの。
小さい子がいるのにバッチリお化粧したり、綺麗にしているママなんて、子どもより自分を優先してるみたい。ちゃんと子育てしてないんじゃない?
SNSに溢れていそうなそんなあれこれを、必死に自分に言い聞かせながらも、一人きりで誰とも会話のない毎日に、何度も、もう無理、もう限界、と思った。
 
そんなある日、ふとあるポリッシュのボトルが視界に入った。
本来、「マニキュア」は手先のケア全般を指し、その中で、爪に塗って色を付ける液体のことをポリッシュとよぶ。
正確にいえば、それはずっと目の前にあったのだけれど、きちんと認識していなかった、と言える。
その日は息子たちも珍しく機嫌がよく、早々に昼寝をしてくれ、しかもベッドに置いてもどちらも飛び起きることがなかった。久しぶりに両手が空いているこのタイミングで、まさに視界に飛び込んでくるかのように目に止まった、鮮やかな赤色の1本。
それは、O・P・Iの25番。
赤ポリの超・定番だ。不器用な私は、ネイリスト検定1級に合格するまでに、この25番を10本は使った。ネイリストになる前は高卒の事務員だったから、そこそこの値段がするこのポリッシュを買うたび、毎回毎回胃が痛くなる思いだったっけ。
 
気がつけば、私は半分ほど使ったそのボトルを持ち、自分の爪に塗っていた。
息子たちを産んでからというもの、ヤスリを使う余裕もなく、爪切りで雑に切っているせいで、あちこち二枚爪になっている上、甘皮も伸びまくりの汚い素爪に、ベースコートも塗らずに。
毎日サロンワークに明け暮れていたあの頃とは違って、随分ガタガタな仕上がりになったけど、それでも塗り終えた時、満足のため息が漏れた。手荒れやささくれでボロボロの手が、ネイルのおかげで少し綺麗になったように思えた。
その後、息子たちが泣いて起き出し、いつものドタバタが始まったけれど、爪先の赤が視界に入るたび、気分が良かった。やってよかった、と思った。
 
珍しく、日付が変わる前に帰宅した夫も、久々に機嫌の良い私を見て嬉しそうだった。
「どうしたの今日は。何があったの」
毎日毎日育児の愚痴ばかり聞かされて、夫もさぞ大変だったのだろう。久々に明るい顔でおかえり、と言う私に、荷物も置かず、夫は聞いてきた。
「あのね、家でネイルサロンをやろうと思うの」
夫は一瞬目を見開いた。
「私みたいに小さい子どもがいる人こそ、ネイルで気分転換をすることがすごく大事だと思うの。小さい子どものいる私だからこそ、小さい子連れで来てもいいネイルサロンをやりたい。家なら子どもがいてもいいし、泣いてもいいし」
「だけど、小さい子がいる人が、ネイルなんてする?」
「だからこそ、だよ。家事や育児で荒れた手や爪のケアもできるし、何より人と話ができるってことがすごく大きいの」
「そうかもしれないけど。でも、お客さんが来なかったら?」
「自宅サロンなら、初期費用もほとんどかからないよ。道具も一通り揃ってるし、買い足すものも特にないし」
そこまで言うと、夫はため息をついて、上着を脱いだ。
「もう、決めてるんだね」
うん、と頷き、自分の爪を見る。綺麗だ。
「じゃあ、頑張って」
 
あの日から、今日でちょうど7年。
泣いて泣いてどうしようもなかった息子たちも、すっかりやんちゃな小学生になった。
 
最初はやっぱり、小さい子どもがいるのにネイル?と言われたりもしたけれど、最近では、お客様が赤ちゃんを連れたお友達を連れて来てくださることも多くなっている。
あの頃の私と同じように、出産をして間もないママネイリストが、自宅でサロンを開業することも多くなってきたようにも感じる。
 
ボロボロになって、誰とも会話もせず、それでも子どものためにと自分の全てを犠牲にして邁進するのも、子育てかもしれない。
それが良いと思う人は、それでいい。
でも、私は、綺麗に整った爪が視界に入るのを楽しんでも、ネイリストとの会話を楽しんでも、ちゃんと子育てはできるよ、と伝えたい。
あなたも、子連れOKのネイルサロンに、一度、来てみませんか。
きっと、今より少し、気分良く頑張れるようになると思うから。
 
 
 
 
***
 
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2020-08-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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