メディアグランプリ

読書の海を航る、夏の羅針盤


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:森真由子(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「この感情は何だろう」
手に取っていた冊子の表紙にはロボットが描かれていて、よく見ると小さな文字でこう書かれていた。
会社帰りにふらっと寄った本屋さんにはこの小さな黄色い冊子がたくさん並べられていた。
そうか、もう夏か。
 
いつからそうなったのかはもう分からないけれど、気付けば毎年夏に登場するこの冊子を探すようになった。
見つけた瞬間、体がうずうずするのが分かる。
本屋さんの中で人にぶつからないのように、なるべく優雅に、でも大股に、その場所へ駆けて行く。
さっと冊子を手に取っては、すぐその場でぱらぱらとページをめくり始める。
なるほど、今年はこういう本のラインナップなのか。
 
年がら年中、本を買いたい衝動に駆られながらも、お金の心配を思い出しては、何とか自制する。
でもその自制がどうしても解き放たれてしまうのが、夏。なぜか。
夏といえば、海。ではなく、私の脳の中には完全に
「夏といえば、文庫」
というアルゴリズムが組み込まれてしまっていたから。
 
本好きの方は、既に謎が解けているかもしれない。
私が手にしていたのは、『新潮文庫の100冊』という小冊子。
出版社の新潮社が1976年から毎年夏に行っている文庫のキャンペーンだ。
私は毎年、どの100冊が選ばれているのか楽しみにしている。
買いたい本が多いのだけれど、あまりにも目移りしすぎて、選書の迷子になることが多々ある。
だからこの100冊が選ばれている状態というのが、迷子にとっては良い指針になってくれる。
 
まず冊子を開くと本のジャンル分けがされている。
新潮文庫の場合、今年は「恋する本」「シビレル本」「考える本」「ヤバイ本」「泣ける本」の5つのジャンルで分けられていた。
このように分けられていることで、自分の興味のある本も見つけやすい。また、逆に普段読まないようなジャンルも認識できる機会になる。
無意識のうちに怖い本やドロドロした人間の感情を描いた本を避けてしまっているときがあるため、「ヤバイ本」ジャンルにあえて触れてみようかなと思っている。
実はこのジャンル分けは、角川文庫の『角フェス』や集英社文庫の『ナツイチ』などの文庫キャンペーンでもされており、どれも興味を引くものばかり。
各社のラインナップには各社の色が出ていて、比べて見るだけでも楽しい。
 
これはあくまで読書のおまけだが、キャンペーンになっている本を買うとプレゼントがもらえたりする。
今年でいうと、集英社文庫はブックバンド、新潮文庫は小さいうちわ型のしおりが1冊買うごとにもらえる。(なくなり次第終了になる)
読書自体が主食なのだ、主食に集中せよ、と自分には言い聞かせながらも、結局デザートのプレゼントに誘惑されてついつい買ってしまう。今年の新潮文庫のしおりは、早々に4種類全部制覇してしまった。
出版社の思惑通りになってしまったけれど、これでちょっとでも本を買う人が増えるならそういう動機でもいいか、とまた自分に言い聞かせた。
 
では、肝心の本はどうだろう。
どの出版社の文庫キャンペーンも素敵なラインナップになっている。
それを前提に踏まえつつ、私はとりわけ新潮文庫のラインナップが好きだ。
夏目漱石、太宰治、ヘミングウェイなど、昔から読み継がれている名作もあれば、近年発行された新刊もある。
昔の新潮文庫のキャンペーンはもっと名作揃いの選書でそっちの方がよかった、とおっしゃられる方もいるが、個人的にはバランスの取れた今の選書が気に入っている。
いかにも古典というものを挑戦したいときもあれば、最近の話題作も読みたいときがある。
そんな欲張りなつまみ食いをさせてくれる。
 
『新潮文庫の100冊』の小冊子をまず手に取ったら、自分が読んだことのある本には、蛍光ペンで線を引いている。
この夏の100冊を何年か経験すると、線を引く箇所が徐々に増えていく。
いい本は翌年も続けて登場したり、何年後かに再登場したりする。
ポイントカードはものによっては期限が切れるとゼロからのスタートになるが、継続して読めばこれはゼロスタートにはならなくなる。
だから年々病みつきになり、もっと線を引ける箇所を増やしたくなってしまう。これも人間の飽くなき欲によるものなのだろうか。
でも読書は減るものではないし、ならばどんどん増やしていこう。これももはやビンゴゲームのような感覚になってくる。
こうなってくると、暑さでバテる人も毎年夏が楽しみになってくるのではないだろうか。本を読むために時に積極的な引きこもりになる私は、仲間が増えることを密かに願っている。
夏だ! 海だ!
と元気よく走り回れる人種でもないのだが、この楽しみがあるから夏は好きだ。
 
本選びの迷子になっているあなた。
そもそも夏休みにやることがないと悩んでいるあなた。
この夏、読書の大海へ航ってみてはいかがだろうか。
本屋に並んでいる小冊子がきっとあなたの羅針盤になってくれる。
 
今年も私は、自分の中でこう叫ぶ。
夏だ! 読書だ!
 
 
 
 

***
 
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2020-08-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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