令和版“小6女子”の社交術
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記事:かなたあきこ(ライティング・ゼミ7月開講通信限定コース)
夏休み。
受験生にとっては“天王山”と称される、熱く長い戦いの期間である。我が家の長女も中学受験予定で、絶賛、塾の夏期講習中だ。朝もはよから起きてお弁当を持ち、朝からうるさい蝉時雨の中を自転車で漕ぎ出していく背中は逞しい。
今日も日が暮れるまで勉強かと思うと気の毒になるくらいだが、娘は他の受験生よりさらにハンディを負っている。実は7月末にこれまで通っていた塾から別の塾へ移る、いわゆる“転塾(てんじゅく)”を決意し、夏期講習から今の塾に通い始めたばかりなのだ。
この時期の転塾はかなり大きな賭けで一か八かだったが、今のところ塾の雰囲気も合っているようで、チラホラ新しくできた友達の名前も聞かれるようになった。親としてはほっと一安心といったところだ。
先日も丸一日の講習を終え、家で夕食を取っている時に塾のお友達の話題になった。隣の席同士で、消しゴムを忘れた日に貸し借りさせてくれたことがきっかけで仲良くなったという、Yちゃん。
娘の通う塾は、近隣にある4校ほどの小学校から通っているお子さんが多く、「Yちゃんはどこの小学校?」と聞くと、娘いわく「知らない」とのこと。えぇ!? まずはそこを会話の糸口にするんじゃないの!?
さらに問い詰めると「どこの学校とか全然興味ない」「誰もそんなこと気にしない」と言い放つので、じゃあいったい休み時間に何を話しているのかというと、塾の先生のクセ真似やうるさい男子の悪口で盛り上がるのだそう。Yちゃんはその塾にもう3年も通っているので事情通で、いろいろ教えてもらうのが楽しいらしい。Yちゃんを通じて、“塾友の輪”が広がりつつあるようで何よりなのだが、現代の小6女子の社交術には少々驚きを隠せなかった。
思えば私の友達作りは、相手のバックグラウンドを知ることから始まってきた。中学の時は「何小から来たの?」から始まって、高校の時は「(市内の)どこの区出身?」が入学式の定番の会話だった。
東京の大学に進学するとさらにスケールが大きくなり、北海道生まれ、九州から上京してきた、はたまた韓国からの留学生など、だんだんと知り合う友人たちのバックグラウンドも多様化していった。
しかし、出身校や生まれ育ちを聞くことからスタートする社交術は、ともすればバイアスがかかりやすい。
北海道生まれの友人は何となくのんびりして大らかなイメージがまとわりつき、九州男児は威張っててえらそうに見え(ごめんなさい!)、山陰出身と聞くと……もれなく薄暗い性格の人物のような(ほんとごめんなさい!!)。
当たり前だがこれはあくまでイメージに過ぎず、せっかちな道産子もいれば、超レディーファーストの九州男児もいるだろう。さらに筆者の配偶者は松江出身だが、取り立ててネクラというわけでもない。初対面でバックグラウンドを聞くことで、私個人が持つバイアスによって友人を勝手に色分けしていたかと思うと、今更ながら申し訳なくなる。
話は戻って、令和2年の夏休み。
娘は昭和生まれの母とはまるで違う方向から、友達作りのアプローチを試みている。「通っている小学校」という、たった12年しか生きていない少女たちにとっては大きなバックグラウンドのはずの要素には、まったく関心を持っていない。友達になる決め手となるのは、気が合うか合わないか。話していて、楽しいか楽しくないか。それに尽きるというのである。
デジタルトランスフォーメーションが進むこの時代に、なんと原始的でワイルドな価値観なのだろう。メスが放つフェロモンの臭いをオスが嗅いで、気に入ればカップルとなる昆虫の世界を見ているようだ。
フィーリングがすべて。気が合えば、どこの誰だろうとかまわない。そんな価値観を持った令和の小6女子たちは、バックグラウンドが持つバイアスという名のハードルを、軽々と飛び越えていく。
そんな軽やかなステップをうらやましいと思いつつも、そういえば自分も最近はそんな風に友達を作ってるかも、ふと気づいた。生まれてはじめて、ママ友ができた時のことを思い出したのだ。
「子供が同じ年で、同じ幼稚園」という条件だけで集まった、年代も出身もバラバラの母親50名。そこから徐々に交流を深めてママ友に発展し、幼稚園をだいぶ昔に卒園してもいまだにお付き合いのある友人もいる。共通項は“ママ”というだけで、卒業した大学もどんな仕事をしていたのかも、よく分からないまま10年来の友人関係が続いている。
そんなママ友作りを振り返って思うのは、やっぱりフィーリングがすべて。気が合えば、どこの誰だろうとかまわない。
私自身が小6女子だった頃からン十年経つけど、今ここにきて友達作りの原点回帰をしているのかもしれない。だとしたら、最初から軽やかな社交スキルを身に着けている娘たちの世代は、これからどんな風に友情を育んでいくのだろう? 何のしがらみもない、ただ気が合うから付き合う、令和版・女ともだち。うーん、なんだかカッコイイぞ。
今朝も塾にでかける娘を見送って、家に入ろうとした時、庭の木で盛大に鳴いている蝉を見つけた。ああそうだ、キミも自分の鳴き声をただただ気に入ってくれる誰かを、一生懸命呼んでいるんだよね。フィーリングぴったりの気が合うお嫁さんが、どうか見つかりますように。そんなことを祈りつつ、そっとドアを閉じた。
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