道を聞かれるという才能について
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記事:タマひろし(ライティング・ゼミ夏期集中コース)
あなたは道を尋ねられたことがありますか?
私はあります。ありまくりです。
旅行先で歩いていると道を聞かれます。バス停で地図とにらめっこしていても道を聞かれます。老若男女にかかわらず、道を尋ねられます。
私一人の時だけではありません。誰かと一緒でも道を聞かれます。
大学生の時、家族旅行で台湾に行った時には、私だけが現地で道を聞かれました。
大学院生で海外での学会発表のため、同僚とヨーロッパに行った時には、スイスでもドイツでもオーストリアでも道を聞かれました。
あるマーケットで30分間に5回も道を聞かれた時には、同僚からどっきりでも仕掛けられてるんじゃないかと疑われたこともあります。
大学院を卒業した後、恩師と一緒に海外に学会発表に行きました。いつものように、トルコでもドイツでも道を尋ねられました。
夕食の時に、恩師が不機嫌そうに言いました。
「俺はこれまで一度も道をきかれたことなんてなかった。なのに、昨日も今日もお前と一緒にいると、一日に何度も道を聞かれる。これじゃ時間がいくらあっても足りやしない。お前がぼーっとしているから話しかけられるんじゃないか?」
そんなにぼーっとしているつもりもありませんでしたが、そう言われるとそうなのかもしれない。明日からはキリッとしてみようと思いました。
次の日。いつも通りでした。
今度は「話しかけるなオーラ」というものを出して過ごしてみることにしました。
変わりませんでした。
海外発表という華々しいアピールをしたはずなのに、よく道を聞かれるボーッとしたやつというレッテルを貼られたまま、帰国することになりました。
帰国してから、私は様々な工夫を試みました。イヤホンで音楽を聴いているフリをしたり、忙しいフリをしたり、どのようにしたら話しかけられず、道を尋ねられないだろうかと検証しました。どのようにしたら「ぼーっとした人」に見られないかと考えました。しかし、どのような試みもうまくいきませんでした。
どのような努力をしても実りのない時、人は絶望します。
私は、どんなに努力し、工夫しても、ボーッとしているように見える人間なんだ……とても苦しい気持ちを抱えていました。
そんな私の気持ちをよそに、駅や道やバス停で、私は道を尋ねられ続けました。
やがて、諦めの境地に至りました。道を尋ねる人たちに罪はありません。そう思って、自分がどう思われるか知っている場合は道を教え、わからない場合には一緒に地図を見て行先を探しました。
恩師のあの言葉から3年経ったある日、会社で「接遇」の講義を受けました。本来、新入社員向けの講義だったのですが、希望者は受講可能ということで、なんとなく受講しました。
講義では、お辞儀の姿勢、丁寧な態度とはどのようなものかを学びました。講師の方がおっしゃるには、接遇とは学んですぐ身につくようなものではないということでした。普段からの心がけや過ごし方こそが大事であり、その結果、相手が話しかけやすい雰囲気をまとったり、誠実そうな態度が表に出るのだということでした。
ここで、そのような人の例として、道を聞かれやすい人が挙げられました。
私たちは誰にでも道を尋ねるわけではないそうです。道を知っていそうかどうかではなく、話しかけて、立ち止まって応じてくれそうな方、親切そうな方、丁寧そうな方に話しかけるのだそうです。
講師は教えてくれました。
「道を聞かれやすいことは才能のひとつ」
この言葉は、何年もトラウマを負っていた私を救ってくれました。
また、新たな自分の資質に気づくきっかけになりました。
グーグルマップの普及に伴って、道を尋ねられる回数は減りましたが、歩いていると今でも度々道を聞かれます。昔と違って、今ではすっかり清々しい気持ちで答えられるようになりました。
今、私は働く方の健康を支援する仕事をしています。人生の岐路に立って進むべき道が分からなくなった方や、先が見えなくなった方が、私に相談に来られます。相談に来られる方々がどのような人生を歩むべきかについては、私にはわかりません。一生懸命に話を聞くことと、一緒に悩むことしかできません。来られる方々は相談を重ねながら、自らの手で難局を乗り越え、自分の人生の進むべき道を歩まれて行かれます。
もし、あなたが道を聞かれたら、二つのことを思い出してください。
道に迷った時、相談する相手は誰でもいいわけではないんです。道を尋ねられたら、その時、あなたは選ばれた方だということです。
道を尋ねられたのは、あなたの持つ才能のためかもしれません。その才能は、信頼されやすさ、丁寧さ、親切さかもしれません。多くの人を助ける力をお持ちなのかもしれません。
***
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