「田舎暮らしというテーマパーク」
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記事:堀口恵(ライティング・ゼミ日曜コース)
「定年退職した後、いつかここに永住したいね」
そう言って標高1,000m越えの地に山荘を購入したのが、今年の春先だった。その「いつか」は予想外に早く訪れた。なんとこの8月から、その山荘に永住することになってしまったのだ。
我々夫婦とも、田舎暮らしの経験は皆無だ。夫に至っては、生まれてこの方、「市」や「区」にしか住んだことがない、いわゆる「都会育ち」。そんな我々が田舎暮らしを始めるにあたって、先に山荘を購入していた友人や現地の方にたくさんのことを教わった。
例えば、薪ストーブに使う「薪」。
割った薪は「1本」「2本」と数えるが、まとめたときの単位は「立米」(りゅうべい)という。薪を積んで、一立方メートルの大きさにしたものを「立米」と呼び、「1立米」=「〇〇円」という単位で売買されることが多いのだそう。さらに、薪の種類によっても値段が変わってくる。マツなどの「針葉樹」は、すぐ燃えてしまうため価格が安く、欅やブナなどの「広葉樹」は、長く燃えるため、高く売買されるのだそう。
今度我が家となる山荘の周りには、木が生い茂っている。なんと、その木を伐採し、売りに出すこともできるのだとか。地元の方が仰るには、この山荘はマツが多いが、高さや量がかなりあるため、「10立米くらいあるかな? 売ったら10万円以上はいくのではないか」と。木を売却したお金で、空き地を畑にする費用にするもよし、薪を買い足すのもよし。「売れる木だから、とにかく、通常より安く伐採できるよ」と言って下さった。
家の木を売る。そんなことは都会暮らしでは思いもつかなかった発想だ。木は剪定して大事に残しておくものだと思っていたし、そもそも都会には木自体をあまり見ない。
新居は本当に「山の中」である。車で5分ほど走ったところにある、昔ながらの個人商店が、一番最寄りのお店となる。それ以外だと、一番近い「スーパー」は、車で30分行った、麓の街にしかない。コンビニは、そのスーパーの先、さらに10分行ったところが最寄だ。そんなところに住むので、敷地内に畑を作り、なるべく自給自足に近い生活をしようと考えている。
ところが、その<畑を作る>ことも、簡単ではないようだ。木を伐採した後、まだ残っている根っこを抜く(伐根と言うそうだ)。伐根した後、土を耕し、新たに黒土を入れていただく。そこで初めて野菜を植えることができるようになる。
まず、木を伐採するのが、木が乾燥して軽くなる12月になると言われた。言われてみれば当たり前のことではあるのだが、「木が乾燥する」という概念も初めて知った。そして、木が乾燥するだけでなく、枝葉も落ちるため、切り落とすのも冬の方が断然楽なのだとか。夫婦とも、頼んだらすぐ伐採・伐根してもらえて、この秋には冬にできる野菜を育て始めることができるだろうと思っていたので、それだけ時間が掛かるということにただただ感心を覚えるだけだった。
さらに驚いたことが、夜になると窓に虫がたくさん張り付いてくることだ。都会の比ではないレベルでびっしりと窓に張り付いている。場所取り合戦でも開催されるのではないかというくらい、大挙して押し寄せてくる。少しでも窓を開けようものなら、我先にと虫が家の中に入ってくる。
虫は光におびき寄せられる。街灯もないこの山荘の中だ。家に光があれば、吸い寄せられるようにやってくるのは考えれば当然のことだ。
これも、電球をLEDに変えることや、アロマオイルの虫除けスプレーを使ってみる・蚊取り線香を使うことで解決できる、と教えて頂いた。電球をLEDに変えた途端、虫の数が激減した。アロマスプレーも、頻繁に使用することで、虫が来づらくなったように思える。
さらに、木製のデッキに使われているペンキにも、虫除け成分が含まれている。そのため、デッキを塗り替えることで、防虫対策もできる。
右も左も分からない田舎暮らしは、何が出てくるのか全く分からない。やればやるほど分からないことが出てきて、その度に、友人や現地の方に教えてもらい、分からなかったことが分かるようになってくる。都会暮らしでは考えもつかなかったことを教えてもらい、それを試すことがとても楽しい。商業科の教員を経て事務職に就き、パソコンを使う仕事しかしてこなかったような自分が、まさか、人生の中で草刈り機を手足のように自由自在に使うようになるなんて。以前は全く想像もしていなかった世界に、今生きている。
田舎暮らしは、言うなれば「テーマパーク」のようなものだ。テーマパークは、下調べをしていても、実際に足を運んで体験することで、下調べのそれとは比べ物にならないほどの楽しさを味わえる。パーク内で何かを食べるときも、実際に並び、実際に食べることで、喜びや楽しさが倍増する。
田舎暮らしも同じだ。体験することでしか分からない楽しさがある。これからめぐる季節を過ごし、どんどん知らない体験をすることで、大変ながらもたくさんの楽しさや発見と出会えるのだろう。
ご縁があって始まった、田舎暮らし。大変さやきつさも含めて、「田舎暮らし」という壮大なテーマパークを、一生かけて存分に楽しんでいきたい。
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