お笑い芸人ハライチは新規事業を生む天才だった
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お笑い芸人ハライチは新規事業を生む天才だった
記事:やまぐちりょう(ライティング・ゼミ5月開講通信限定コース)
経営コンサルティングの仕事をしていると、
「新規事業を立ち上げたいが、どうすれば良いのか……」
こんな声をよく聞く。
一口に新規事業を立ち上げると言っても、
アイディア出し、ビジネスモデル検討、サービスローンチの各フェーズで
やらなければならないことは多岐にわたる。
そんな中でも、多くの方が口をそろえてあげる課題が、
「ありきたりなアイディアしか出てこない」
というものだ。
普段から新しいアイディアを出す仕事をし、
自らの業務と直接関係しない領域にもアンテナを張り、
情報をキャッチしている人ならいざ知らず、
そうでない人が突然新しい、かつ良いアイディアを出すのは困難だろう。
特に効率化のために業務のシステム化・定型化が一定程度進んでいる大企業では、
アイディアを出すことが必要となる場面は多くない、というのが実情ではないだろうか。
では、どうすれば新しいアイディアを出すことができるのだろうか?
様々考案、活用されているアイディア発想法の中に、”強制発想法”と呼ばれるものがある。
文字通り、何らかの制約や条件を付けて、強制的にアイディアを発想する手法だ。
強制発想法の中にもいくつもの種類があるのだが、その一つが”クリエイティブ・マトリクス”と呼ばれるものだ。
これは、縦軸と横軸に別々のカテゴリーに属するテーマを並べ、
それらの掛け合わせから強制的にアイディアを発想する手法である。
温泉旅館の旅行者に対するプロモーション案を考える場合を例に取ると、
縦軸にカップル、ファミリー、外国人旅行者と人のセグメントを、
横軸にガイドブック、ウェブサイト、口コミと情報源をそれぞれ取った上で、
これらを掛け合わせて連想されるものを、順に考えていく。
ファミリー×ガイドブックと考えれば、ただ単に情報を掲載するのではなく、
子供も楽しめるような飛び出す仕掛けをしたガイドブック絵本を作ってみよう、といった発想が生まれる。
漠然と旅行者に対するプロモーション案を考えるよりも、制限がかかることで発想の幅が限定され、アイディアを発想しやすくなる。
「んーー、確かに少し発想がジャンプしている気もするけど、まだ物足りないなぁ」
中には、そう感じられた方もいるのではないだろうか。
これは、縦軸、横軸ともにテーマの”温泉旅館”、”旅行者”、”プロモーション案”に近いものを選んだためだ。
では、ありきたりではない、少し飛躍したアイディアを発想するためにはどうすれば良いか?
参考になるのが、電通が開発した”ミラクルワードカード”という手法だ。
この手法では、電通が集めたアイディア発想を広げる魔法の言葉、”ミラクルワード”を用いる。
ミラクルワードカードとは例えば、”1000年に一度の……”、”毎月届く……”、”いきなり……”など、
既存の単語と組み合わせるだけでアイディアの飛躍を生む言葉が書かれたカードだ。
これらの言葉を書かれたカードをワークショップ参加者に配布し、
“……”の部分に言葉を入れることでアイディアを発想してもらう仕組みである。
先ほどの温泉旅館の例を考えて、
“毎月届く……”に”温泉旅館”を組み合わせてみると、”毎月届く温泉旅館”という新たな言葉出来上がる。
一方は、テーマに近い言葉だが、もう一方は全く関係のない言葉であり、新しい言葉が出来上がった。
新しい言葉である以上、もはやありきたりなアイディアでないことは確か。
次に重要なポイントは、この言葉の意味合いを考えることだ。
「毎月届く温泉旅館とはどんなものだろうか……」
比較的考えやすいものであれば、毎月温泉の日帰り入浴券が届くサービスや、
あるいは月に1回、全国各地の入浴剤が届くサービスなどがあげられるだろう。
“ミラクルワードカード”という手法は、新たな言葉を作り、そこから連想されるものを考えていくことで、新しいアイディアを生み出すのだ。
これに似た方法を巧みに操って笑いに変えているのが、ハライチだ。
もはや紹介するまでもないだろうが、ボケの岩井勇気とツッコミ澤部佑の幼馴染で結成されたお笑いコンビだ。
彼らのネタは、ボケの岩井が投げかける言葉に対して、ツッコミの澤部が返答していく。
序盤に岩井が投げかける言葉は、
実際に世の中で使われているイメージがつきやすいものだが、
後半になるにつれて、現実に使われることのない言葉を投げかけるようになる。
これに対して澤部が知恵を振り絞って何とか解釈し、返答する。
まさに、このやりとりは新たな言葉を生み出して、
そのイメージを具体化する、ということを漫才の中で繰り返しているのだ。
(彼らのネタを見たことがない方は、是非一度見ていただくとイメージが湧くだろう)
そのプロセスこそ、”ありきたりでない”新規事業のアイディアを生み出すプロセスそのものである。
読者の中にアイディアを発想することに悩んでおられる方がいれば、
是非今回紹介した強制発想法を活用してみていただきたい。
ハライチの二人のように、楽しみながらやれば、今までにない飛躍したアイディアが出てくることだろう。
***
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