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お片付けはスルメイカの如く。


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記事:スミオク ミホ(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「なんでこんなに汚いんですか?! もう少し掃除しておいてほしかったですね」
ため息まじりにそう言われて、私は困惑していた。
そういえば6年前にも同じことを言われたな……前のアパートから出る時だ。賃貸アパートの退去の度に、私は管理会社の人に同じ文句を言われていた。
私は掃除道具をほとんど持たない女だった。
 
生活習慣というのは恐ろしい。
親や祖父母が家で掃除している姿の記憶がない。狭い家なのに物も多く、とても片付いているとは言えない実家だった。
しかし、それで当たり前として育ってきて、進学のため一人暮らしを始めた時には私の生活サイクルの中に「掃除」という習慣がなかったのである。
掃除をしなくたって生活はできてしまう。
たしかハンディワイパーは何かのタイミングで買ったと思うけれど、あまり使った覚えがない。
当時の私にとって、掃除してなくてホコリだらけ、片付けしてなくて床に物が散らかり放題、なんて当たり前のことで、そこに問題意識はこれっぽっちもなかった。
(かろうじてバス・トイレ掃除はホテルのバイトで経験していたこともあって、たまに掃除していた)
 
当時の彼氏が転がり込んできて狭い1K2人暮らしになったけれど、これまた掃除片付けを知らない男で状況はどんどん悪化していった。
ホコリだらけは想像しやすいと思う。
片付けしていないという状況をご説明させていただくと、とにかく床の上に直置きしている物が多い。
プラスチック引き出しケースに服やタオルを入れていたけど、常にはみ出していて引き出しを閉めた覚えがない。CDや本も収納場所からはみ出る量になっても対処せずにどんどん床に広がっていく。ちゃぶ台の上は文具や化粧品で埋まっていて、食事をする時にザザーっとかき分ける。
年甲斐もなくぬいぐるみをたくさん集めていたが、飾る場所は万年床の脇。ホコリと共に山積みにするだけだった。
最悪だったのが食器で、2ドアの低い冷蔵庫の上に並べてフキンをかけておいただけ。掃除をしない部屋でそんな状態だと食器なのにホコリが……(惨状をご想像ください)
 
ゴミ部屋とまではいかないけれど、とにかく汚い部屋だったと思う。そんな部屋でホコリとガラクタに埋もれていても気づかず6年も生活していたが、とうとう彼氏とうまくいかなくなって実家に逃げ帰ってきた。
地元で再就職して、あてもなく本屋巡りをしていたある日、平積みされた本に目が止まった。
それは「部屋の掃除をして運気をアップしよう!」というような本だった。
 
目から鱗だった。
掃除をしたらいいことがあるなんて……今までの人生で誰も教えてくれなかったよ!
長い恋愛に失敗して、落ち込んでいた私の心にグッとくる内容。
そういえばウチの家族はなんだか運が悪い気がする……
家の中が汚いからだったんだ!!
 
単純にそう思い込んだ私は、水回りや納戸など、長年の汚れが溜まっているところを中心に実家の掃除を開始。掃除はキレイになるのが目に見えて分かるし、集中して取り組めるとなかなか楽しかった。自分が掃除を好きだと感じるとは、新しい発見だった。
 
しかし片付けは一筋縄ではいかず、物を捨てずにため込んでいた家族を見ていたからか、私も捨てるのが苦手なのだ気づく。しかも長年のクセはなかなか取れず、脱いだ服を山積みにしてしまったり、子どもが生まれてからは、おもちゃを片付けられなくなった。
数々の片付け本を読んだけれど、結局マネできることは少なかった。だって各々持っているものや収納スペースが違うから、間取りやインテリアなどの好みに合わせて自分で考えるしかない。
 
模索する中、自分の当たり前を塗り替える一言に出会った。
「片付け(収納)は、元の場所に戻すこと。次に使う時のためのスタートライン」
 
そんなふうに考えたことなかった。
でも「スタートラインに戻す」と意識するだけで、次に使う時のことを意識して仕舞う場所などを考えることができたし、子どもたちにも「元の場所に戻すんだよ」と言うことができるようになったと思う。
最近、夫が嬉しいことを言ってくれた。
私が自分の荷物が片付けられないと嘆いていると、
「みんな、自分のものはなかなか片付けられないよ。キッチンとウォークイン(クローゼット)すごく片付いてるし大丈夫だよ」と。
「え……そう??」
夫はいつも私に、脱ぎっぱなし、テッシュ置きっぱなしだよねと笑っていたから、片付けのことで褒めてくれるなんて思ってもみなかった。
急に目の前のモヤが晴れた気がした。
 
本当にキレイ好きの方からすれば、まだまだ掃除量も足りない、片付け方も美しいとはいえないけれど、あの運気アップの本に出会ってから15年、ようやく「掃除」と「片付け」が私の生活習慣になってきたのだと思う。
 
この先もまだまだ続く人生の一部となる生活習慣。
長い長い時間をかけて見直すことができた。これから先も子どもたちの成長シーンなどに合わせて、やり方を変えながら続けていきたい。
スルメイカを噛むように、長く味わい続けられると良いなと思っている。
 
 
 
 
***
 
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2020-10-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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