ハラミが関東の焼肉店で食べられるようになったのはいつだろう
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名前:篁五郎(リーディング倶楽部)
焼肉を食べに行ったときに”ハラミ”って頼むと思う。
低カロリーだし、ほどほどに肉の弾力性を感じられて赤身肉同様、肉本来の旨味が楽しめる人気メニューですから。
でも、昔は関西地方だけで関東では出ていなかった。
1990年代のボクシングシーンを彩った名ボクサー・辰吉丈一郎が雑誌の対談したときの場所が東京の焼肉店だったときにメニューにハラミがなくて残念がっていたことがあった。
でも、今ではどこの焼肉店でも食べられる。
因みにハラミはホルモンの一種で、牛の横隔膜の背中側、胸とお腹の間にあり、肺を動かすための筋肉。牛の体のほぼ真ん中に位置しているハラミは、筋肉ではあるものの肺に付いている器官であることからホルモンに分類されている。
このホルモンに分類される部位が関東の焼肉店で出てくるようになったのは、ある出来事が起きてからになる。
その顛末を教えてくれるのが、元プロレスラーで「ミスターデンジャー」と呼ばれていた松永光弘氏の著書『デスマッチよりも危険な飲食店経営の真実』だ。
松永氏は現役時代からステーキ店を経営しており、その出来事で自らの店も閉店寸前に追い込まれた経験談も著書の中で語っている。
先ほどの答えだが、狂牛病が起きてから関東でもハラミが出るようになった。焼肉店や牛肉店は、狂牛病で多く店が閉店に追い込まれた。何せ牛を食べるのは危険なのだから誰も店には寄りつかない。
吉野家、松屋、すき家といった牛丼店も売り上げが急落。生き延びるために牛丼ではなく豚丼を出すようになったのを覚えている人もいると思う。
騒ぎが収まっても牛肉の値段は以前よりも上昇しており、安く肉を提供ために今まで使っていなかったハラミを仕入れるようになったのだ。
災い転じて福となすとはこのことかもしれない。
狂牛病の騒ぎはメインに扱う飲食店に多くのことを教えてくれたことになる。松永氏もこの体験を隠すことなく『デスマッチよりも危険な飲食店経営の真実』(ワニブックス)に綴っている。現在のコロナ騒ぎに通じるものもあるかもしれない。
この本を読んでいると「かっこつける」ことは生き延びるためには不要だなというのを実感する。実際に集客のために自らの恥をさらしてきた。
先述の狂牛病騒ぎので値上げをしないといけなくなったときも恥をさらしてしのいできた。
店の看板を出すときもかっこよさよりも目立つことを優先させて恥ずかしいくらいの看板をこしらえた。
ステーキ店を始めると決めたときも現役プロレスラーのプライドを捨ててアルバイトをしてノウハウを学んだ。
それもこれもすべてステーキ店経営で成功をするため。だからこそかっこつける必要などなかったのだ。その精神は肉の仕入れやメニューにも現れている。実はデンジャーステーキはメニューが「デンジャーステーキ」と「手作りハンバーグ」の二種類しかない。
しかもメインの「デンジャーステーキ」はステーキ400gにスープ、ライス、サラダが付いて2,000円と格安である。どうしてそんなに安く提供できるのか? という秘密も開けっぴろげに語っている。
なぜなら、”サガリ”という牛の横隔膜の肋骨側についた厚い部位を使っているからだ。牛の絵を描くとすると、リブロースや前バラの近くに位置する内臓部分で、サシが少なくしっかりとした赤身ながら柔らかい肉質が特徴だ。
誰もステーキとして使わないから安く仕入れられるという。
理由だけ聞くと「なんだ」と思うかもしれない。しかし、お客の元へステーキとしてくるまでたゆまぬ努力をしてきた結果が「デンジャーステーキ」なのだ。
実はサガリは筋や脂身が肉にびっしりとこびり付いていて、そのままではステーキとして提供できない。それをすべて取り除くことからがスタートとなる。
柔らかくて弾力のある肉塊に包丁を入れ、筋スジや脂身だけを丁寧に取り除くのは簡単そうに見える。しかし包丁のテクニックも必要だが、とにかく体力と腕力がないといけないそうだ。
何せ150人から200人分のステーキ肉にこびり付いている筋や脂身を取り除くのだ。それだけですべての体力を奪ってしまう。
松永氏は「自分が現役プロレスラー(開店当時)だからなんとかなった」と語るほど過酷な作業だ。夜に店を開くのに朝から店に入って黙々と作業をする。それをずっと続けてきてからこそ開店から24年経った今でも生き残っているのだ。
最近では自分以外に肉の仕込みができる店員ができたお陰で負担は楽になったという。
そんな経験から得た教訓が『デスマッチよりも危険な飲食店経営の真実』には綴っている。きっと読み終わった後に「飲食店経営だけは止めよう」と思うに違いない。
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