執着を手放せば。
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:ふるはしゆうこ(ライティング・ゼミ通信限定コース)
人は大なり小なり「執着」を握りしめて生きている。
何かに対してモヤモヤしたり不安になったりすることは、恐らく自分が握っている「執着」のせいかもしれない。
私は、夫の実家のある、地方の田舎に住むのが嫌だった。
夫とは、東京で働いていた時に知り合い、そのまま結婚した。ずっと、東京に住むつもりだった。
ところがだ。突然、3月に夫が名古屋に転勤になった。私は育児休職で会社を休んでおり、皮肉にも保育園が決まらず、育児休職を延長しようか、遠くの無認可保育園に預けるか、職場復帰のタイミングを考えあぐねていた時だった。
最初に言っておくが、名古屋が嫌いなわけではない。
知らない場所に行くことにとても抵抗があったのだ。そして、東京にずっと住む夢が早々に絶たれたことに、私は失望していたのだ。
幸いにも、転居先で保育園が運よく見つかった。転勤が多い春先だったこともあり、ちょうど1枠空いたとのこと、滑り込みで娘を預ける場所を確保できた。
私は名古屋の事業所で無事、職場復帰をすることとなった。
名古屋事業所の皆さんは皆良い方ばかりで、仕事は楽しくすることができた。仕事をしているときは、全く問題はなかった。
問題は仕事のない土日だ。
娘と二人。どうしていいかわからない。子供と上手に遊べない。家の目の前の公園に行っても、10分が限界だ。車もなく、行動範囲は限られる。
極め付けは、子育ての話ができる友達が一人もいない。
土日に話す大人は、夫以外は、スーパーのレジのお姉さんだけだ。
東京だったら、友達もいっぱいいるのに。
東京だったら、子供とも過ごせる場所がいっぱいあるのに。
東京だったら、電車でどこにでも行けるのに。
東京だったら、東京だったら。
私は「東京に住みたい」をギュッと、溢れないように握りしめていた。
無意識か、意識的かわからないが、夫にことあるごとに「東京に帰りたい」と言っていたようだ。主人は本社へ移動することになり、晴れて東京に戻ることとなった。
本当に嬉しかった。また、友達がいる場所に戻れる。大好きな街に帰れる。頬は緩みっぱなしだった。
地下鉄東西線が走る、東京に程近い千葉県市川市に住まいを決めた。
さあ、友達と会うぞ!いろんなところ行くぞ!ワクワクしてたまらなかった。
ところがだ。
名古屋にいた時と、生活はなんら変わらない。小さい子供が二人もいると、独身時代のようにフットワーク軽く動くことはできない。それでも、ベビーカーを押し、子供を抱っこ紐で抱えて、電車を乗り継ぎ、遊びに行っていた。
とはいえ、そんなこと頻繁にできるはずもなく、次第に電車に乗って遊びに行くことは減ったが、それでも、都内にすっと出られる、今いる環境に大満足していた。
子供を預け、あるママ向けのセミナーに参加した時だった。ランチをしながら、参加した方と講師の方とおしゃべりをする機会があった。
その時に、名古屋で馴染めなかった話をしたら、講師の方がこう言った。
「自分が住む場所を、良い場所にするにも、悪い場所にするにも、自分次第じゃない?」
ハッとした。
私は、「東京に住みたい」を握りしめて名古屋に行ったばっかりに、名古屋の良いところをみようともしなかった。ことあるごとに東京と比べ、さらに強く握りしめていた。
名古屋いたとき、会社の事務所の先輩方がランチに誘ってくれたし、お腹の大きい私のことをいつも気にかけていてくれていた。
歩いてすぐ近くに動植物園があって娘と何度も遊びに行ったじゃないか。
東日本大震災の時、私は東京にいた。新幹線が走らず帰れないときに、車で1時間かかる場所から、義両親が飛んできてくれて、娘を一晩預かってくれていたな。
そうだ、娘が肺炎で入院した時も、義父が、毎日のようにお弁当を買ってきてくれて、私を、少しの間だけでも休みなさいと、時間をくれたんだった。
私は、自分で自分の住む街に真っ黒く墨を塗っていたのだ。
少しずつ、握りしめている手のひらを緩め始めていると、夫が実家近くに住みたいと、会社を辞めて、また愛知県に戻ることになった。
以前の私なら、実家近くなんてとんでもない、と大反対しただろう。でも、そのときは小反対だけして、言う通りに夫の実家近くに住まいを構えた。
「自分が住む場所を、良い場所にするにも、悪い場所にするにも、自分次第」
あの言葉を思い出した。
私は、千葉にいた時に取得したベビーマッサージの教室を愛知県でスタートさせた。
この地で、自分から、自分を広げていこう、と思ったからだ。
たくさんのママさんと赤ちゃんに出会えた。ベビーマッサージがきっかけで、今もなお、繋がっている友人もできた。
同じ地域で活動する、ベビーマッサージの先生ともたくさん繋がった。同じ仕事をしている仲間、個人事業主の心細さを補いつつ、お互い切磋琢磨しながら、助け合い活動を広げたことも、いい経験となった。
愛知県に戻ったら、以前のように前職の先輩方が声をかけてくれて、いまでも定期的にランチに誘ってくれている。
自分の意識次第で、活動の幅が広がり、交友関係も広がったのだ。
そして、前と違って、ここでの生活を楽しめるようになっていたのだ。
私は、「東京に住みたい」という強い執着に気づいた。
そして、それを少しずつ手放していった。私は、場所にとらわれずに、自分が過ごす場所を楽しみたいと思い、行動した。
執着を手放すことで、見えなかったものがスゥーッと見えるようになった。
執着はネガティブな感情を生み出す。
なんで私はここに住まないといけないんだろう。
なんで私が、どうして私が、と矢印を外に向け、見えない何かに怒りや不安をぶつけてしまう。
執着を手放すと言うことは、矢印が自分に向く。
自分自身と向き合い、自分はどうしたいのか、どう在りたいのかを見つけた時、自然と執着していたものが手から離れて行くのかもしれない。
そう出来たら、生き方がシンプルに、そして楽になるのではないだろうか。
まだまだ、私は小さな執着をたくさん握っている。あれも、これも。
必要でないものは少しずつ、少しずつ、手放していこうと思う。
人生をシンプルに、そして楽しみたいから。
***
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