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パソコンを譲られて、自分を知った

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:Risa(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「パソコンを安くで譲ってくれるらしいけど、本当にそのパソコンは私に必要?」
 
人生の大事な局面において、自分がこの先どうするかは自分自身ではっきりと決断しなければならない。
 
何度か聞いたことのある人生訓。
でも、決断するって簡単ではない。
 
パソコンを譲り受けるのはそれほど大きなことではないけど、私は決断できなかった。
「譲ってもらった方がいい? それとももっとふさわしいのを探すべき?」
 
結局譲ってもらうことにしたのだけど、それで本当によかったと思っている。
 
すでに8年使っていたノートパソコンはとうとう古くなり、バッテリーの状態が悪くなっていた。
 
それを知った友人が、パソコンの譲り先を探している知人を紹介してくれて、なんと1年前に買ったばかりのノートパソコンを修理代だけで譲ってくれるという。
 
申し出を受けるかどうか迷ったのは、私がそれまで使っていたパソコンとはちょっと性質が違ったからだ。
 
私は機械にはあまり詳しくないのだけど、性能の違いはなんとなくわかる。
私の8年来の片腕だったパソコンは「薄くて軽い」が売りだった。
画面もほどよい大きさだ。
 
反して、譲り先を待っていたパソコンはちょっと分厚めで画面も小ぶり。
しかし、性能というかスペックは抜群で両サイドにはいろんな穴がついていて、いろんな線を差し込むことができる。
 
私のはなにしろ薄型なのでDVDプレイヤーは外付けだし、いろんな穴はついていない。
 
お気に入りの型とはちょっと違ったけど、なにしろ破格の安さだし、スペックもいいらしい。
「これは譲り受けるしかないのだろうか」
 
機械には詳しくないし、すすめてくれる友人の好意をしりぞけるほど「薄くて軽い」にこだわりがあるわけではない。
 
ということで、ありがたく申し出を受けることにした。
 
秋のある日喫茶店で友人と知人と会い、私は代金を、知人はパソコンを渡した。
買った時とそっくりそのまま箱もそろっていたし、付属品もばっちりだった。
 
その人はライターだとかで、書くことを仕事にしたいと思っている私はそんな人の使っていたパソコンを使えるのをとても嬉しく思った。
 
その時は。
 
家に帰り、設定をしていった。
機械おんちながらも、メールの受信や送信ができるようになった。
 
ネットサーフィンもできる。
これはいいではないか。
 
なにしろ、ライターとして食べている人のパソコンだ。
憧れの気持ちでしばらく使っていた。
 
はずだった。
あの時までは。
 
何が起こったのかというと、あまり大きな声で言いたくないのだけど、そのパソコンにおじさんの跡があったのだ。
 
目をひそめたいサイトの閲覧履歴ではない。
初期状態で譲り受けているし!
 
使っていくうちに、細かいところに目が届くようになり、キーボードのすきまに短い髪の毛や元の持ち主のアブラが入り込んでいることに気づいてしまったのだ。
 
アブラというのは、あの顔とか頭とか鼻とかを手でいじっていたら出てくる丸くて小さいあれである。
他人のはちょっと気になる。
しかも日頃自分の手の延長のように使うパソコンに潜んでいるのですよ!!!
 
再度あまり大きい声では言いたくないのだけど、私はパソコンをなんだか使いたくなくなってしまった。
重くて分厚いのもやっぱり私の好みではない。
 
どうやって手放そうか?
 
新しいパソコンへの憧れが冷めつつあったころ、嬉しい知らせがあった。
私に臨時収入が入ることになり、仕事に関することなら何に使ってもいいということだった。
もちろんパソコンは仕事に使うのだから胸を張って新調できる。
 
意気込んで新宿のビックカメラに向かった。
もう私はどんなパソコンを選ぶかで迷ったりしない。
とりあえず中古のパソコンを譲り受けて使ってみたことで、自分にとっても最適なパソコンの条件がわかったからだ。
 
その条件とは、これまでの薄くて軽いというのに加えて「汚れがたまらない」というもの。
つまり、キーボードと本体との間のすきまが小さくて髪やほこりなどのゴミが入りにくいパソコンが私の求めているものなのだ。
 
ビックカメラで物色したら、それにあてはまるのが一つだけあった。
なんとこれまで8年使ってきたのと同じ種類のものだった。
 
でも、それを選ぶ私の気持ちは同じではない。
今度は絶対にこれが自分の求めているものだという確信があるから。
 
そう思えるようになったのは、迷いつつもあの時譲り受けていつもと違うパソコンを一時的に使用したからだ。
確信が持てなかったけど、あの時変化を受け入れたから自分にとって大事なことに気づけた。
 
今回はパソコンについてだったけど、これから生きていくならもっと大きな決断も待っているだろう。
きっと確信をもって決断できることなんて少ないのではないだろか。
でも、思い切って一つ選んでみることで、それが最適ではなかったとしても少なくともそれが好きか嫌いかを知ることはできる。
それを次の選択に活かせばいい。
 
気になるなら、とりあえず踏み出してみよう。
それが次につながるから。
 
ちなみに、あのパソコンはどうなったかというと、紹介してくれた友人が私が譲り受けたのと同じ額で引き取ってくれた。
 
 
 
 
***

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2020-11-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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