街の魅力は5歳児が教えてくれた。
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:スミオク ミホ(ライティング・ゼミ日曜コース)
「なんてたのしい“まち”なんだろう〜♪」
5歳の息子が言ったひとことに、私は密かに衝撃を受けた。
いつもの日曜日、いつもの公園で遊んで、いつもの道を歩いて帰っていた時のことだった。
ちょっと違ったのは、その直前、久しぶりに道沿いの和菓子屋さんに寄ったこと。昼食用に、子どもたちも大好きなおいしいお団子をたくさん買った。
公園で遊んで、お団子買っただけなのに、この子はなんて幸せそうなんだろう……
「こんな街なんて出て行ってやる〜!」とまでは言わなかったが、25年前の私は実家を出て他の街へ行くことしか考えていなかった。
将来なりたい職業に就くためには大都市の学校に行かなくては、そう思っていた。お金に余力がない家なのは分かっていたけれど、勇気をふり絞って進学して一人暮らしをしたいことを話すと、案外と簡単に「分かったよ」と言ってくれた。お金の工面をどうするか、私は想像すらしていなかったと思う。
翌年、親の隠れた努力のおかげで生まれ育った街を離れたけれど、結局なりたい職業に就けるほどの技術は身につかなかった。原因は明らかで、安易に専門学校を選んでしまった上、遊びに夢中になって努力を怠ったからだ。今だから言えるけれど、当時は不器用すぎて技術を学ぶことと、恋愛や遊びを両立させることができなかった。
親に負担をかけたことを反省して(失恋したともいう)、8年住んだ大都市=大阪から地元に帰ってきたのが16年前。
再び地元に住み始めると、つい大阪と比べてしまう。何にもないな街だなと感じてしまっていた。
・好きなブランド、メーカーの店舗がない
・遊びに行けるエンタメ施設がほとんどない
・好きなアーティストのコンサートも開催されない
・テレビのチャンネルが少ない
など、ないないづくし。
仕方がないので、友達を頼ってたびたび大阪へ遊びに行き、物欲や遊びたい気持ちをなんとか満たしていた。
それでも結局は地元で働き続け、結婚して、年子の母になった。
年子の子ども2人を連れて遊びに行ける場所は公園くらい。
天気がよければ、毎日公園。
遊んでばかりいた独身の頃には思いつきもしなかったことを考えるようになった。
・子どもが遊びやすい公園って少ない
・雨の日も遊べるところが少ない
・どうやら子育て施設より観光施設に力を入れている街らしい
正直私は、整備が万全とは言えない公園へ通う毎日に飽き気味だったけれど、子どもたちには目に入る景色を伝えていた。
「いいお天気、青空がキレイ」
「山がキレイに見えるね」
「金木犀の匂いがするよ」
“まだ話せなくても大人の言葉で話しかけてあげて”
そう教えてくれた人がいて、私は幼い子どもたちに赤ちゃん言葉などではなく、普通に話しかけていた。
子どもたちは素直に受け入れ、今ではすっかり天気や道端の花、景色について話すのが定番になった。
それから、街もよく見ている。子どもの狭い世界だからこそ見えるミクロな視点。
余計な知識がないから、街をそのまま受け入れられる。
スーパー、コンビニ、ドラッグストア、和菓子屋さん、焼肉屋さん、ファーストフード、レストラン、公園、図書館、ゲームセンター、映画館、お医者さん……
子どもにとっては自分たちが行けるところが世界のすべてのようになっていて、街にはなんでもあるのだ。大人にとって変わらないつまらない景色でも、子どもにとっては楽しい世界なのだ。
かつての私のように“何もない街”なんて、絶対に思わない。
息子が“楽しいまち”と教えてくれてから、私も子どものように素直な気持ちで街を見直せばいいんじゃないかと考えた。私は少し気取っていたのかもしれない。もっと自分が、家族が住んでいる街を大切にしたい。
そう思って、最近は歩いて行ける店舗をなるべく利用するようにしている。
徒歩30秒の歯科医院、クリーニング店、焼肉店。
歯科医院はかわいい歯科衛生士さんがいるし、クリーニングはめちゃくちゃ仕上がりが良い。焼肉も安くて美味しい。
食材の買い出しにも車で行っていたが、徒歩10〜15分で行けるスーパーが2ヶ所もあった。買う量が少ない時は、運動も兼ねて歩いて行くことにした。
公園も実は歩いて行けるところが4ヶ所、自転車でがんばればさらに1ヶ所。その日の遊びたい遊具によって行き先を選べるし、いいのかもしれない。
そのうち子どもたちも知識をつけて、あの街の方がいい、ここは田舎だと言うだろう。
けれど君たちのホームグラウンドはここだったんだよ、こんなに楽しかったんだよ、帰ってきても来なくてもいいけど、いつでも待ってるよ。そんな気持ちを伝えるいつかのために、日々の写真を撮りためていたりする。
***
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