メディアグランプリ

磨くことの価値


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:北川 亮太(ライティング・ゼミ日曜日コース)
 
 
最近、お気に入り家電の一つであった、お掃除ロボットルンバを使うことを止めた。
壊れたからという理由ではなく、清潔な空間を諦めたという意味でもない。
その代わりにとても魅力的なものを見つけてしまったからだ。
 
現在の世の中の流れは、機械やデジタルの力を使い、できるだけ人の手を煩わせないように、時短、省エネという方向に動いているように感じる。
周りを見渡せば、今の生活は、便利にするようなデバイスが溢れている。私もその恩恵を受け、快適な生活を送らせてもらっているひとりだ。しかし一方で自分の手から煩わしい作業や手作業がどんどん切り離されていくことに対して、心のどこかで違和感を感じはじめていた。
 
私は身の回りの整頓はどちらかと言えば苦手なタイプであり、汚れなどがあってもあまり気に止めることはなかった。
しかし社会人になると、住環境に対する意識は以前とそれほど変わらなかったが、職場の影響もあり、自分の足元に対する意識は変わっていった。足元とは靴のことで、靴を大切に手入れするという意識は習慣となり今でも続いている。靴を磨くという作業は、もちろん靴自体の汚れを落とし、整える作業である。しかし同時に心を無にし、自然に心を整えるという作用があるのだ。何か大切なことがある前や心が波立っていると感じる際は心を落ち着かせ、冷静さを取り戻す為に靴磨きをするようになった。靴を磨くことを通して心のバランスをとる。そんな行為であった。またその反面、何かうまく回っていない時は、不思議と靴も汚れていることが多かった。
 
ステイホームが続いていたある日、ふと足元を見ると、床に埃が落ちているのが目に留まった。いつもならルンバのスイッチを入れ、ボタン1つで掃除をするのが普通であった。
しかし、よくよく考えて見ると、小さな埃を取り除く為に、わざわざルンバを起動させ、1時間くらいかけて大げさな音を立てながら部屋全体をガリガリと掃除をすることに違和感を覚えた。家にルンバ以外の掃除機が無かったという理由を除いても、非効率的で、環境にも、そしてそのような選択をしている自分に何だかバツの悪さを感じていた。
 
そこで部屋の棚の奥に眠っていた、小さな無印のほうきを引っ張り出してきて、ちりとりを使ってその埃を取ってみた。とてもシンプルな作業であり、あっという間に終わる。
すると、それだけでは何だか物足りないという気持ちになり、自ずと視線は部屋全体に広がり、無意識のうちに体はほうきで部屋をささっと掃くように動いていた。その作業もあっという間で、5分もかからなかった。
そして、そのアクションが終わった後、そこには小さな埃の代わりに清々しい気持ちが残っていたことに気がついた。
 
私はこの清々しさに「はっ」とした。
便利さに埋もれてしまい、自分で動くという感覚を忘れかけていたこと。そしてそれが喜びや癒しに変わること。
この感覚は何かに似ていることに気づいた。
あの靴磨きの感覚だ。
 
靴磨きの原理同様、この床を掃除するアクションは物理的な面と精神的な面の両面へ作用した。
「磨く」というアクションは、床掃除を単なる床掃除からとても価値ある行為に押し上げていき、家事と呼ばれるものに対してのイメージをガラッと変えていった。
 
そしてもう少し視点上げてみると、日常生活全体に「磨く」という行為が実にたくさん溢れていることに気がつく。
歯を磨く、トイレを磨く、窓を磨く、お風呂を磨く、爪を磨く、車を磨く
「洗う」や「掃く」という行為を磨くの一部に広げればさらに増える。
 
この日々の生活に散りばめられた「磨き」の機会は気がつかなければ、ただの重荷にしかならないが、見方を変えれば、日々の生活に潤いを与えてくれる大切なきっかけになる。
 
お寺でお坊さんたちの修行の一部として掃除を繰り返し行っていることや小学校でみんなで教室を掃除することが教育の中に取り入れられていることは「磨き」を通して潤いを感じられる感覚を養っているのではないか。
「磨き」を普通の日常に取り入れていくことは、心のあり方や考え方にもきっと影響を及ぼしてくるのであろう。
 
そんなことを考えていると価値ある「磨く」という行為の醍醐味をロボットに委ねてしまうことは、とても勿体無いと思えてきた。主体的に「磨く」に関わっていくことはとても魅力的なのだ。そして私はロボットをほうきに置き換えた。
 
「磨く」ことで、日常は爽やかに輝き、心は清々しくなる。
さあ、今日は何を磨こうか。
 
 
 
 
***
 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「東京天狼院」

〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00


■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」

〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168


■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」

〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325


■天狼院書店「シアターカフェ天狼院」

〒170-0013 東京都豊島区東池袋1丁目8-1 WACCA池袋 4F
営業時間:
平日 11:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
電話:03−6812−1984


関連記事