ハワイで赤ちゃんがタバコを食べた
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:喜多村敬子(ライティングゼミ 日曜コース)
ともに3歳と1歳になる直前の娘二人を連れて、
夫婦でハワイ旅行に行った時の事だ。
一週間の滞在中、3日目に義父母も日本から合流した。
その合流前に次女がタバコを食べた。
娘たちもとっくに社会人になったが、
この話は義父母にはずっと内緒にしてきた。
あまりにうかつだと怒られたり心配させて、
楽しいハワイ気分が台無しになりそうで、
若夫婦は言いだせなかったのだ。
もう時効だと思うので、ここで告白します。
ハワイに着いて第一日目、ホノルルのホテルのチェックイン前のこと。
ロビーで長女の相手をしていた所、
離れたソファにいた夫が顔色を変えて、
泣いている次女と荷物をひっ抱えてバタバタとやってきた。
声が裏返っている。
次女がタバコを食べたと言うのだ。
口にしたタバコの味がひどかったのか、
次女が泣きだして初めて気づいたと夫は言う。
フロアテーブルの上にあった灰皿が、
ベビーカーに座った次女の手の届くところにあった。
その中のタバコを食べたのだった。
私たち夫婦も義父母も誰もタバコは吸わないので、
普段から子供のためにタバコに気を配ることがなかった。
外出先でのタバコに注意が向いていなかった。
よりにもよって、海外初日にチェックイン前のホテルで、
子供の手の届く高さにタバコがあるなんて考えもしなかった。
11カ月の赤ちゃんでは本人に聞けるはずもなく、
タバコをどのくらい食べたのか皆目見当がつかない。
乳幼児がタバコを食べて急性ニコチン中毒で重篤になる、
死亡する話を聞いていたので、慌てた。
でも、次女はすぐに泣き止んで様子がおかしい所はなかった。
その様子に話に聞くほどの危機感はなかったものの、
後から急変して中毒症状が出たら怖い。
今なら、誰かが口にしていた吸い殻を食べたら、
新型コロナ感染の心配もしなければならないだろう。
すぐにフロントで事情を話し、小児科に連絡、車を出してもらった。
ちょうど英検1級に挑戦していた頃で、ここまでの英語はなんとかなった。
しかし、母国語以外で病状を説明し、
医学用語を理解するのはハードルが高すぎる。絶対避けたい。
日本語を話す医師がいるとガイドブックに載っている
クリニックに連れて行ってもらった。
診察は日本語でいいと安心していた。
タバコを食べたのだから胃洗浄は必至だろう。
こんな小さい子に胃洗浄なんて……と気が重くなった。
夫は長女と荷物の係になり、
以後も当然のように私が対応することになる。
クリニックの受付で私の英語での簡単な説明を聞いて、
係の女性がドクターに話しに行った。
彼女(=私)は英語が分かるとドクターに伝えているのが聞こえた時、
「えっ! でも、日本語話すドクターいるよね」とまだ心に余裕があった。
出て来た欧州系の若い男性医師は当然のように英語で診察を始めた。
「ちょっと待った、難しいのは無理!」
と心の中で叫ぶ間もなくそのまま、診察は続いた。
次女は落ち着いていて機嫌がよかった。
お腹を触診して、ソフトでスムーズだから大丈夫でしょう、
後で吐きだすかもとのことだった。
英語は何とかなった。
その頃の次女はなぜか髪の毛がとても多くて立っていて、
まるでヤンキーのお兄さんのようだった。
乳児検診でもおむつを取るまで、男の子だと思われていたことがあった。
日本人の医師と看護師でも、男の子と間違えるのだから仕方がないが、
この医師もずっと次女の事をhe と言っていた。
私は、子供がタバコを食べたショックと英語のプレッシャーで、
その思い違いを訂正する気にもならなかった。
heでもsheでもどっちでもいいです、
診ていただければ、異常なければという気持ちだった。
heのまま診察は無事に終わり、心配していた胃洗浄もなかった。
言葉の問題は、今ならスマホ翻訳という手がある。
しかし、当時は自力で対応するしかなく、
たまたま知ってる範囲内の英語で済んで助かった。
外国語の勉強をする時、覚えることが多くて、
こんなの使うことないよ、試験に出ないよと思うことはよくある。
でも、日常的に日本語で使う言葉はやっぱり外国語でも使う言葉だ。
この当たり前の事を思い知った。この時は運が良かっただけ。
必要な単語を知らなかったら、
知っている表現を組み合わせて使う技を磨いておくこと、
説明や言い換えをお願いするフレーズを覚えておくことが肝要だと思った。
数時間後、次女はホテルの部屋のベビーベットに、あおむけで静かに寝ていた。
ところが突然、大きな泣き声とともに噴水の様に吐いた。
大量のたばこの葉が入った水っぽいものを盛大に吐いて、泣いて、ケロっとした。
タバコはまるでティーポットで蒸らされた紅茶の茶葉のようだった。
タバコの葉はふやけてカサが増していたのだが、
こんなにたくさん食べたのかと驚いた。
その後ずっと、次女は元気で体調が悪くなることは全くなかった。
合流した義父母に、3歳にならない長女の口からバレることもなかった。
今から思えば、バレても怒られることはなかったとは思う。
これは子供のタバコの誤食の話だが、
タバコで子供が火傷をすることもある。
私の左ひじのそばには火傷の跡がうっすらと残っている。
5,6歳の頃のいわゆる歩きタバコでの火傷だ。
一緒に歩いていた父の知人の火のついたタバコが、
腕に触ってできたものだ。
ものすごく熱く、痛かった。
子供のタバコの事故は、以前よりも禁煙が広がっていて、
減っているかもしれない。
特に家庭では、妊娠を機に禁煙したり室内禁煙になることが多いだろう。
でも、次女の誤食や私の火傷の様に、
家庭の外でのタバコの事故もある。
周りの人は小さいお子さんには注意してあげて下さい。
****
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
お問い合わせ
■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム
■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。
■天狼院書店「東京天狼院」
〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)
■天狼院書店「福岡天狼院」
〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
■天狼院書店「京都天狼院」
〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00
■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」
〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168
■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」
〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325
■天狼院書店「シアターカフェ天狼院」
〒170-0013 東京都豊島区東池袋1丁目8-1 WACCA池袋 4F
営業時間:
平日 11:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
電話:03−6812−1984