地元の平和は、狛犬によって守られる
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記事:岩槻まなみ(ライティング・ゼミ日曜コース)
「コロナが一日も早く終息しますように・・・」
ご近所にある泰叡山護國院瀧泉寺で、手を合わせた。
ここは通称「目黒不動尊」と呼ばれる寺院。日本の三大不動尊のひとつである。
目黒不動尊はちょうど1時間で帰ってこられる程よい距離にあり、散歩がてらお参りするのが私の日課になっている。
今朝も爽やかなお天気に誘われるように、世界中のコロナが終息して平和になりますようにと手を合わせてきたのだ。
毎日のように目黒不動尊にお参りするといっても、さほど信心深いわけではない。
ただ、お寺や神社に行くのが好きなのだ。目黒不動尊が大好きなのだ。
それはきっと、両親の影響があるのだろう。幼い頃から母に手を引かれ、毎日のように詣でていたからだと思う。あ、母も信心深いわけではない。たまたま実家から徒歩2分のところに神社があって、毎日のように神社の前を通るから手を合わせていただけのことではないかと思う。
皆さんはご存じだろうか。
目黒不動尊には狛犬がたくさんいることを。
どの神社にもお寺にも狛犬が魔除けのために一対で置かれている。が、目黒不動尊は一対どころではない。いわば狛犬展示場。狛犬巡りを楽しめるお寺なのだ。
“にしむら”うなぎ店から漂よってくる美味しそうな香りを嗅ぎながら、最初に出迎えてくれるのが、仁王門の前にいる1999年生まれの若い立派な狛犬だ。現在、私たちと同じように大きなマスクをしている。
そこから15歩ほど歩いた仁王門の裏に、石膏でつくられた乳白色の大きな狛犬がいる。この狛犬たちは昭和生まれ、40歳くらいだろうか。京都の「龍神社」にある狛犬を手本に作られたようだ。並外れた美しさで威厳が漂う。私の1000倍くらいの威厳だ。
仁王門を過ぎると、醤油顔のすらりとした和風狛犬が迎えてくれる。なんと足元に子犬がいるではないか。この狛犬だけではない。ここから30歩ほど先にいる尻尾がくるりと巻いた和風狛犬たちも、足元の子犬を守るように台座に座っている。
さらには本堂に通じる階段の横には、3匹の子犬と一緒に欄干に寄りかかっている和風狛犬がいる。彼らはみんな文久2年生まれ、159歳だ。
いったい何匹の狛犬がいるのか? 獅子ではなく和風犬も狛犬と呼んでいいのか? 欄干に寄りかかる態度っていかがなものか? そんな自問を楽しみながら目黒不動尊の懐の深さに感謝しつつ足を進めていく。
さて、目黒不動尊本堂に通じる男坂の階段を上がり切ったところに、表情豊かで愛らしい狛犬がいる。驚くことに彼らは1654年生まれ、367歳だ。都内で最古の狛犬だ。
鼻の穴の中まで見えるブルドック系のお顔と、左右に分けられた“たてがみ”は、一度見たら忘れられないチャーミングさ。なんと言っても思わず触りたくなるふっくらとしたお尻が可愛すぎる。このお尻にどれだけの参拝者の心が癒やされただろう。
なぜ、私はこれほど狛犬が好きなのか。
あれは6才頃だったと思う。いつものように母に連れられて、徒歩2分の神社に参った時のことだ。
「ねえ、お母さん。どうして犬がいるの?」
「狛犬さんたちは、私たちの町を守ってくれているのよ」
「町を守ってくれているの?」
「そう。夜中に、狛犬さんは町中を走り回ってパトロールしてくれているのよ」
子供の質問に仕方なく応えたウソの答えなのだろうだが、母の言葉は私を一気に狛犬好きにさせた。
「狛犬さん、パトロールありがとう。私たちの町を守ってくれてありがとう」
本殿での参拝が終わって階段を降りていくと、美しい牡丹が描かれ尻尾がぐるぐる巻きの170歳超えの狛犬たちに出会える。台座にも牡丹と狛犬の絵柄がしっかり彫り込まれている。牡丹は百花の王、圧倒的存在感だ。
さらに女坂の階段を降りていくと、頭を下げた狛犬がいる。文久生まれの150歳を越えるいい歳の狛犬だ。何歳になっても頭を下げることは大事。「ごめんなさい」は大切だと教えてもらっている。
ここで紹介したからと言って、目黒不動尊に参って欲しいわけではない。
ただ、狛犬好きにはたまらないパラダイスのお寺だということを伝えたかった。
そう、目黒不動尊は神社ではなくお寺。摩訶不思議なことに鳥居があるお寺だ。
多くのバラエティにとんだ狛犬がいる。手水舎以外にも龍がいる。カエルの像がある。牛の像がある。目線より高い位置にゾウの像がある。あり得ないほど目線より高いから、ほとんどの参拝者は気づいていないのではないかと要らぬ心配してしまう有様だ。
あなたが参拝するお寺や神社はどこですか?
そこには、普段は見過ごしてしまいがちな摩訶不思議がって、そこには、普段は当たり前のように通り過ぎてしまう狛犬がいる。
狛犬は守護獣として、魔除けとして神社を守り、参拝する私たちを見守り続けた長い歴史がある。さらに地元の平和を守るため、夜な夜なパトロールしてくれる有り難い存在なのだ。
今度立ち寄ることがあったら、ご本尊だけでなく狛犬たちにも、そして摩訶不思議なものたちにも注目してほしい。
邪悪なものから、あなたとあなたの地元を守ってくれる・・・そんなご利益があるかもしれないのだ。
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