メディアグランプリ

新聞配達は人生のステップアップだ

thumbnail


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:藤田多朗(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
私は高校時代、新聞配達のアルバイトをしていた。
放課後はクラブ活動していた為、朝刊のみ配達をしていた。
朝刊のアルバイトをするきっかけは兄の影響が大きい。
 
高校時代の兄は決して柄が良い人物ではなかった。
頭は当時流行っていた不良の代名詞であるパンチパーマ。
兄の仲間も似たような出で立ちでつるんでいた。
素行はあまり分からないが良く家に女性を連れ込んでいた。
 
そんな兄であるがクラブ活動はバレー部でキャプテンを務めていた。
クラブ活動をしながらも遊ぶ金欲しさに新聞配達をしていたのだ。
その後兄は外見に合わず高校を卒業して一浪はしたものの関西の一流大学に入学した。
 
母に言わせれば「あの子は要領がよい」とよく言っていた。
 
とは言え女性にモテモテ、クラブではキャプテン、勉強もやれば出来る、そんな兄に私は憧れを持っていたのと同時にコンプレックスも抱いていた。
私はと言えば中学ではサッカー部に入っていたが補欠のまま三年間を過ごし、勉強も中の下であまりパッとしない学生生活であった。
 
高校でも誘われるままラグビー部に入り学校の成績もあまり芳しくなかった。
 
ある日、兄の働いていた新聞販売所に求人募集の張り紙を見た私はクラブ活動にも慣れてきたので憧れの兄のように新聞配達を始めたいと思った。同じラグビー部に入部した幼馴染を誘って新聞販売所に面接に行き採用となった。
 
初日から十日間、今まで働いたことがなかった私は配達先の家を中々覚えられないでいた。一週間、付き添ってくれた店主に「いい加減おぼえてや」と言われながらも一人で回ることとなった。
 
台帳に書かれた家を確認しながら「ここにはスポーツ新聞」 「ここは英字新聞」 「ここは経済新聞」 と自転車を走らせながら一軒一軒配達していった。
 
坂道の多い配達コースに初めは2時間かかっていたが慣れてきたのと要領がつかめたのか50分で配達を終える様になっていた。
自転車では配れない程の急勾配の坂もあり、その場合自転車を置いて坂道を駆け上がるのである。
そんな場合でも部活のステップの練習をするなどトレーニングの場にもなっていた。
 
配達で大変な時は雨や雪の日である。
新聞を濡らさぬよう細心の注意を払いながらポストに入れなければならない。初めのうちは良く新聞を濡らしてしまう事があったが段々と上手くポストに投函できるようになっていった。もっと大変なのは正月元旦である。元旦の新聞は分厚く二回に分けて配達しなければいけなかった。
 
結局、朝は5時前に起床、学校、クラブ活動といった生活が二年弱続くこととなった。友達との旅行やクラブでの合宿以外ほとんど休む事がなかった。
 
そんな生活を送っていた私は風邪とは無縁の生活を送っていた。
それどころか良いトレーニングとなりクラブでも目立つ選手となっていった。坂道の多いコースは元々強かった足腰を更に強靭なものへと変えて行った。ふくらはぎなどローストチキンを思わせるようなものへと、体育や柔道の成績は日に日に上がって行った。
 
しかし授業は目立たぬよう隠れて良く寝ていた。ある時など一週間の試験前に勉強を集中して行うのだがクラブの公式戦と配達の日が重なり勉強する時間がほとんど無く地理のテストが一ケタの点数で赤点だったことがあった。良く周りの仲間は試験前「俺、全然勉強してへん」といいながら影で勉強しているといった場面をよく遭遇するが、私に至ってはそれがそのままの形で現れた。しかし赤点をとったのはその一回だけで成績自体は以前よりも良くなっていた。
 
学校では様々なあだ名を付けられたが新聞配達を行っていることで「貧乏」と先輩などに呼ばれるようになった。もちろん悪気があって言っていたのではなく親しみをこめてである。逆に同世代よりお金を貯めこんでいた方かもしれない。ラグビーというスポーツを行う上で乱暴な言葉が飛び交うことは日常茶飯事であり、そんな環境によって私自身鍛えられていった。
 
私自身、憧れの兄の様には行かなかったが新聞配達を行う事で様々なことを学んだように思える。
 
新聞を配達して授業を受け放課後クラブ活動といった生活を続けるといった継続力。
 
冬の寒い時でも寝る前に布団の下にズボンやシャツを潜らせ翌朝それを着て配達に行って少しでも寒さをしのいだことや雨や雪の時でも休まず配達した忍耐力。
初めてお金を得る働くことの厳しさなど今の自分の基礎となる事をこの時期に学んだ。
 
ネット社会になりつつある現在、新聞の購読者は減りつつある。
新聞の購読者は年長者が多く若者の新聞離れが進んで行っている。
新聞には時事問題はもちろんの事その地域の情報も記されている。
ネットによる様々な情報が錯乱するなか、フェイクニュースなど情報の信憑性が問われているようにも思われる。
より身近に感じられる新聞は私達の暮らしに根付いたものであり誰もが信頼するものであった。
しかし社会はアナログの時代からデジタルの時代へと目まぐるしく変わってきている。
私や兄が社会に出る前の貴重な経験は今後どの様なかたちになっていくのであろうか。そんなアナログな時代が衰退していくのは寂しい気もするが、また新たな媒体が若者を成長へと導いていくのだろう。
 
 
 
 
****

この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。
 



人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

 

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「東京天狼院」

〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00


■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」

〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168


■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」

〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325


■天狼院書店「シアターカフェ天狼院」

〒170-0013 東京都豊島区東池袋1丁目8-1 WACCA池袋 4F
営業時間:
平日 11:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
電話:03−6812−1984


2021-03-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事