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私は鎖から放たれ、翼をもらった


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記事:かりん(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
先月で、20年以上続けた会社員人生を終えた。
まさか自分の人生の中で、こんな大胆な行動をするなんて、数年前どころか数ヶ月前の私ですら考えていなかった。
 
最後の3ヶ月はほぼ有休消化期間だったので週に1日も出社していなかった。有休期間は毎日次のステップのための学びの時間に充てていた。
因みに……当初は転職する気でいた。
私は会社員に嫌気がさしていたわけではない。チームで仕事することはむしろ好きだったし、大企業の会社員として安定していることも魅力的だった。そのおかげで、産休や育休を躊躇なく取得でき、時短勤務やフレックス勤務など、ありとあらゆる恩恵を受けられたと思っている。限られた時間の中とはいえ、小さい子供たちと満足いくくらいの時間を共にできたのは、大企業で会社員をしていたからだと思う。
 
私は、公務員の父と主婦の母のもとに長女として生まれた。祖父も公務員だったので、「公務員 is best」という考え方が当たり前だった。それくらい保守的な家庭で生まれ育った。
 
そんな私のママ友が「起業したいと思っている」と話してくれた。初めてその友人から話を聞いたときは「すごい!」としか思えなかった。尊敬と感心しかなかった。
しかし、今考えると、きっとその時から彼女の影響を受けていたのだと思う。
 
退社を決めてから、次にやりたいことのために学びを始めると、全てが有意義な時間に感じられた。とにかく気持ちの向くままに学んで行った。そうしていくうちに、自分がしていることが、どうも起業に向かっているようにしか思えなくなった。
 
しかし、私には何もない。
 
誰かのように作品を生み出せたり、提供できるサービスを持っていたり……
とにかく商品を持っていない。そんな私が何で起業をするというのか。
 
そんなある日、クラブハウスのサービスが開始した。招待制のクラブハウスは、日本国内でもまだユーザー数が多くない。しかし、ビジネスをしている人は、当たり前に早期参入していた。そこで、たくさんの起業家の方々の超有料級のセミナーを視聴するうちに、私の価値観はどんどん変わっていった。
 
起業をするということは、ありのままの自分で生きるということ
起業をするということは、人生の優先順位を自分で決めるということ
起業をするということは、自分の言動の全ての責任を自分で取るということ
 
会社員時代の自分を振り返った時、全て真逆だということに気づいた。
大企業で会社員をしていると、自分の仕事の範囲外の仕事をするのはタブーだ。例えば、私は設計職だったので、取引業者さんと仕様の打ち合わせはするけれども、見積もりの入手依頼をしてはいけない。金額の話をするのは調達という部署がする仕事なので、「見積りをお願いします」の一言を会議の場で発してしまうだけで叱責されてしまう。
 
当たり前のように自分で仕事の優先順位を決められないし、自分のミスの責任を自分で取ることすらできない。
 
ありのままの自分で生きられ、人生の優先順位を自分で決められて、自分の言動の責任を取れる
 
なんて素晴らしいんだと思った。
枠に捉われることなく仕事が出来ることに魅力を感じられずにはいられなかった。
 
そんな毎日を数ヶ月過ごして出社した私は、久しぶりの会社で、ものすごい懐かしさを感じた。
昔、毎日通った学校に大人になってから行った時の気分と言ったらわかりやすいだろうか。
とにかく全てが懐かしかった。まだ数ヶ月しか経っていないのに、何年も経っているかのような感覚だった。
 
最後に絶対会いたかった同期(と言っても年齢や実力的ははるかに上の先輩)と話が出来た。彼はすごく興味深く私の話を聞いてくれた。今、彼の置かれている状況は私が知っている10年以上の中でもかなり過酷な状況だったので、すごく羨んでくれた。
 
でも、羨ましいことばかりではないよ?しなければならないこと、したいことは山盛りで学ぶことが多すぎて毎日が大忙しだし、まだまだこれからも沢山色々やっていかないとビジネスとしては成り立っていかないのはわかってるしね。
 
と話した私に彼が言った言葉が忘れられない言葉になった。
 
でも、全てやりたいことに向かってしていることだよね?自分なんて、やりたくないことや無駄だと思っていることを山盛りさせられてる状態が続くんだよ。
 
同じ「忙しい」という状態一つとっても、確かに中身が全く違う。
 
そうか私はもう本当に違う世界に身を置き始めているんだな
 
そう思った。
それから数日かけて挨拶回りをした。今までお世話になった他部署の上司や同僚。たくさんの人と話していると、前述した同期と同じような話をする人がほとんどだった。
 
次の仕事は決まっているの?と聞かれ、
「まだですが、絶対決まると思っています」と答えていた。
もちろん転職できる自信があったから、そう答えていた。
しかし、次第に気持ちが変わった。
「起業しようと思ってます」
自分でも驚いたが、思わず言語化していた。
話す相手は、バリバリの会社員。みんなポカーンとするか、「社長さんだ!」とほくそ笑みながら、半ば馬鹿にしたような言葉をかけられたりもした。
 
しかし、なぜか気持ちが怯まなかった。理由は今もわからない。
言っていくうちにどんどん気持ちが固まっていった。
 
まだ、私は何者でもないかもしれない。しかし、なぜか1年後には今見えていない未来が見えている確証がある。どこからこの自信が来るのかはわからない。
ただ、一つ言えることは、信頼できると思った人に「とにかく自分がいいと思うものを提供していきなさい」と言われた。その言葉を信じて生きているだけでエネルギーが満ち溢れてくる。
 
お互いの人生のクオリティを上げて生きていきたい。
 
私が一方的に誰かの人生のクオリティを上げるだけではなく、私自身も人生のクオリティを上げられる人と出会い、死をも恐れなくなるくらい精一杯生きたい。
会社員という鎖から放たれ、ありのままの自分で生きるという翼をもらった私は、必ず自分が望むご縁がいっぱいの人生を生きて行くはずだ。
 
 
 
 
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2021-03-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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