パイロットには”おまじない”が必要だ
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記事:梅とら (ライティング・ゼミ日曜コース)
「いってらっしゃいってどういう意味?」
こう尋ねられたらなんと答えるだろう。「行って」と「いらっしゃい」が組み合わさった言葉で、誰かがここから出発する時に使う言葉……うーんなんかしっくり来ない。
『シン・エヴァンゲリオン劇場版?』の中でまだ言葉を知らないアヤナミレイ(仮称)は居候先のヒカリの使う挨拶言葉に疑問を持ち質問をし、ヒカリが「家族が無事に帰ってくる”おまじない”」だと答えるシーンがある。これ以外にもレイは様々な挨拶言葉に疑問を抱き、質問をするが、ヒカリはどの挨拶言葉に対しても”おまじない”の言葉で応えており、それがなぜか自分の中にすぅっと入ってきた。
日本を代表する巨大コンテンツの最終章で一番印象に残っているシーンがこの”おまじない”シーンというのもどこか申し訳ない気もするが、それほど私にとっては印象が深く、頭から離れないシーンであった。
”おまじない”と言うと恋のおまじないだとか、少女漫画の主人公が夢見るような可愛らしい印象だが、漢字にすると「お呪い」にとなる。「呪」の文字が入っていると随分と印象が変わり、おどろおどろしいというか、どこか恨み、妬み、恐怖を感じずにはいられない。人が相手を呪う時、それは相手に執着をしている。言い換えれば呪うほど相手を思っているのだ。そう”おまじない”とは可愛いだけではなく、相手を思うという点では呪うほどに思うという要素も持ち合わせたなかなかヘビーな言葉なのだ。
映画の中でレイ(仮称)がヒカリから教わった「いってらっしゃい」や「おやすみなさい」と言った”おまじない”の数々は一人暮らしでは使うことのない言葉だ。相手がいて、初めて成り立つのが”おまじない”であり、誰かの幸福を願い”おまじない”をかけようと思って発するのが”おまじない”の挨拶言葉なのだ。
”おまじない”とはアクセサリーだ。なくても良いが、あるとなお自分を魅力的にすることができる。自分で買うこともできるが、誰かからプレゼントされるとさらに価値が高まる。”おまじない”の挨拶言葉も自分の心の中で思うより、誰かに声をかけてもらった方が何倍もの効果を発揮する
私の仕事はカスタマーセンターのアドバイザーだ。毎日朝礼があり、毎日当番のチームマネージャーの「今日も1日よろしくお願いします!」との挨拶の後、対応に入る。その時に一人だけ「いってらっしゃい」と送り出すマネージャーがいる。
なぜ「いってらっしゃい」なのだろうか。仕事開始の言葉にしてはどこか異質だ。でも不思議と「よろしくお願いします」とよりもやる気が出て、安心して対応に入ることができた。これが彼女の持つキャラクターのせいなのかなのかずっと疑問に思っていたが、答えが判明した。
彼女は私たちに”おまじない”をしていたのだ。
アドバイザーという仕事柄、辛い対応になることもあるだろう。だけどここにいるから、闘って、無事に帰っておいでというメッセージを彼女は「いってらっしゃい」の言葉に込めていたのだ。
「言霊」という言葉がある。人が発する言葉には魂が宿る。良いことを発すれば良いことが起き、悪いことを発すれば悪いことが起きる。私たちは幼いことから悪いことを言わないよう躾けられてきた。私たちが日常で使う「いってらっしゃい」を始めとする挨拶言葉には大切な人を守り、平穏に導けるよう”おまじない”がこっそり仕組まれている。
”おまじない”を使うことは何の魔力も、勉強も必要ではない。幼い頃からお互いに”おまじない”をかけあっているのだから、経験値は十分。あとは意識して、心を込めるだけで相手に”おまじない”をかけることができるのだ。
映画のクライマックスシーンでは司令官である葛城ミサトが主人公の碇シンジを最後の闘いに送り出すときも「いってらっしゃい」と送り出している。ただの台詞ではなく無事に帰ってこれる”おまじない”だと思うと、どんな言葉よりも最後の闘いに相応しい言葉に思えた。
これも庵野監督の伏線なのか? なんて思いながらその伏線にまんまとひっかかった私の心にはその”おまじない”という言葉が頭から離れなくなっていた。
私たちは社会の一部だ。
学校に仕事、家庭や友人関係、楽しいこと、幸せを感じることばかりではない。他者との関わりの中では辛いこと、苦しいことがあり、相手は違えど、エヴァのパイロット達と同じ、社会という名の敵と闘い続けるパイロットなのだ。もし、自分のかけた”おまじない”で相手が楽になり、無事に生き抜こことができるのであれば台詞として使うのではなく、きちんと言霊を込め、思いを込めて発したい。
さぁ皆さん、いってらっしゃい。
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