スーパー戦隊ヒーローに受け継がれる歌舞伎の血
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記事:佐藤早織(ライティング・ゼミ集中コース)
スーパー戦隊ヒーローを観たことがない、知らないという人はどれ位いるだろうか。
ゴレンジャー、ダイレンジャー、キラメイジャー―――。いわずと知れた四十五年以上の歴史ある、人気子供向け番組である。
熱い正義の心を持ったレッドを始め、クールなブルー、ニヒルなブラック…というように色分けされたキャラクターたちが、5~7人ほどのチームを組んで悪と戦う物語を、一度は楽しんだ経験がある人も多いのではないだろうか。
大人になって特撮オタクになった私は、催事や幼稚園等でヒーローショーをおこなう特撮サークルに入った。そして出版社に入社し、戦隊ヒーローの絵本を作る仕事に就いた。
その中で、気づいたことがある。
スーパー戦隊ヒーローやヒロインたちの物語には、歌舞伎の血が脈々と受け継がれている。歌舞伎の中でも、特に『荒事』とジャンル分けされる、主人公が超人的な力を駆使して悪を倒す、派手な演目からの影響がとても強い。
スーパー戦隊ヒーローのいわゆる『テッパン』といわれるキャラクターやストーリーや演出に、歴史の中で磨かれ、受け継がれる歌舞伎の伝統の技が含まれているように思ったのだ。
日本のアニメや特撮といったサブカルチャーは『クールジャパン』の代表的存在だけれど、もし伝統芸能である歌舞伎からの影響を見つけられたら、それこそとてもクールだ。
私がスーパー戦隊ヒーローに歌舞伎の技を見たそれらの共通点を、少し紐解いてみようと思う。
まずはキャラクターの表現だ。
歌舞伎の荒事の登場人物のキャラクターを表現する方法のひとつに「隈取」という化粧がある。CM等に登場する歌舞伎スター俳優を思い出すと、だいたい白塗りの顔に深紅のラインで模様を書き込んでいないだろうか。
じつはこの隈取は歌舞伎の中でも荒事の中に限られ、特に赤い色は熱い正義の心を持った、超人的力を持った主人公にだけ使われる。
私は、赤という色が正義のスーパーヒーローを表現したのは歌舞伎が起源なのではないかと思うのだ。
また、荒事の悪役にも隈取は使われる。陰険な公家くずれには『藍』、邪悪な妖怪には『黒』『茶』といったように、色分けすることでキャラクターを立たせるのに一役買っている。
そして次に物語の『型』だ。
歌舞伎の荒事もスーパー戦隊ヒーローも、勧善懲悪、正義の主人公が悪を倒すことで物語は完結する。
弱かった主人公が仲間たちの力を借りて強くなったり、一度はピンチに陥ったものの最終的には悪に打ち勝つ『お約束』が覆ることはない。
観客はその様式美の中で、その物語特有の主人公の超人的な力や、演出を見て楽しむ。
これは、最後まで予想がつかない物語の展開や、大どんでん返しで見せる他のフィクションとは大きく異なる点だ。
そして、『外連味(けれんみ)』のおもしろさである。実際に歌舞伎を見たことがなくても、赤い隈取の役者がにらみをきかせ、『見得』と呼ばれる決めポーズをするところは誰でもイメージできるだろう。
登場シーンで、敵を目の前にして大真面目に決めポーズをしたり、『名乗り』を挙げたりする主人公を、私は歌舞伎とスーパー戦隊ヒーロー以外で見たことがない。明らかに観客への大サービス、外連味を利かせた見せ場である。
他にも、外連味を利かせた見せ場の共通点については見得や名乗り以外にも、変身や必殺技や舞台装置、殺陣(たて)と呼ばれるチャンバラ、効果音に至るまで枚挙にいとまがない。
このような見せ場は、歌舞伎の荒事の、俗受けを狙った奇抜な演出がスーパー戦隊ヒーローに受け継がれているのではないだろうか。
最後にこれは余談だが、私がヒーローショーサークルに入り、後に知って驚いたことがある。
ヒーローショーには、一番シンと呼ばれる主役のレッド、レッドを支えるブルーやピンクといった脇役の二番シン、敵怪人、敵ボス、雑魚敵、という役割が決まっている。
そして一番シンにはそのチームで一番上手いリーダーが抜擢され、そのショーの流れやだいたいのセリフから、殺陣(たて)や演出を決める。
そしてこの一番シン、二番シン、という呼び方、そして一番上手いリーダーが一番シンになり、その舞台の演出などを決めていく流れは、今日歌舞伎座で上演されている歌舞伎の演目もほぼ同じだそうだ。
おそらくだが、歌舞伎の作り方が日本中のヒーローショーチームに受け継がれているのだと思う。
遠い存在に感じられていた歌舞伎という伝統芸能が、思わぬところで身近に感じられた瞬間だった。
ここまで歌舞伎とスーパー戦隊ヒーローの共通点をあげた。
元々歌舞伎は江戸時代の庶民の娯楽であり、決して敷居の高いものではなかった。
江戸庶民たちはきっと、遊園地でヒーローショーを楽しんだり、テレビでスーパーヒーローの活躍を応援する感覚で、歌舞伎を楽しんでいたのではないかと私は思うのだ。
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