矢印の向きを変えると頼み上手になる
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:深谷百合子(ライティング・ゼミ超通信コース)
つい最近、生まれて初めて自分で「雑誌」を作った。雑誌と言ってもページ数は36ページの小冊子だけれど、企画から編集、印刷手配に至るまで「ひとり編集長」として、この3ヶ月半制作に携わってきた。
「ひとり編集長」というと、何から何までひとりでやったみたいに聞こえるが、私にとって今回の経験は、「チームの力」を実感する絶好の機会となった。
会社員時代から私は仕事をひとりで抱え込むタイプだった。なかなか素直に人にお願いできないのだ。「自分でやってみたい」、「自分がやった方が早いし納得がいく」という自負があったし、人に何かを頼むと嫌がられるのでは? という怖れもあった。頑張りのきく方だったから、ちょっと無理すればできることなら、ひとりでやるのが好きだし気楽だった。
でも、手に負えなくなって中途半端に終わることもしばしばあったし、やれたとしても、独りよがりなものになって、何か結局自己満足で終わってしまうことも多かった。
今振り返ってみると、そういう時の私は「自分が」と全てにおいて自分に矢印が向いていた。ところが、今回雑誌を作ろうと思ったのは自分のためだけでなく、私の中国語講座の受講生の方達のためでもあり、その先にいる読者のためでもあった。「この作品は多くの人に読んで欲しい」、「これまでの努力の成果を発表する場を提供したい」、そんな思いが自分の中にあった。そう思わせてくれる素敵な材料が、私の手元に既にあったからだ。
その作品とは、例えば赤ちゃんを持つ母親同士の日常会話を中国語にしたものだったり、創作童話だったり、日本酒と米菓の関係についての話だったりと、私には到底書くことのできない内容の作品だ。そこには、自分の子どもと同じ保育園に子どもを預けている中国人ママと友達になりたいという優しい思いや、人が人を思うことの大切さを伝えたいという思い、日本人の多くが知らないとっておきのエピソードを紹介したいという思いが詰まっていた。
さらに、童話となるとイラストが欲しくなる。けれども、私にはイラストを描くことができない。そこで、スキルマーケットを通じてプロのイラストレーターに依頼をすると、童話の世界観そのままの素敵なイラストのラフ版がすぐに送られてきた。
童話を書いてくれた受講生の方にラフ版を送って見てもらうと、「この部分はこんな風にするとよいのでは?」と提案してくれた。私には思いもつかないような提案だ。早速提案の内容をイラストレーターに伝えると、すぐさま修正してくれた。今までの私だったら、自分の考えで指示を出して、自分で判断していたに違いない。でも、それをしなかったことで、チームで作り上げている感覚があったし、実際それによってクオリティはグンと上がった。
もしこれが、自分の作ったものだけで何から何まで自力で雑誌にしようとしていたら、途中で挫折したか、できたとしても、貧弱な内容に終わっていたと思う。あるいは、「もっとデザインを学んでから」等と、形にするより更に学ぶことを優先していたかもしれない。
矢印は自分に向けると苦しくなる。でも外側に向けるとどんどん広がっていく。今まで自分に向けていた矢印の向きを、180度変えてみたら世界は全く違っていた。「記事も書かなきゃ」、「写真も選ばなきゃ」と、いっぱいいっぱいになることもなかったし、何日も徹夜して仕上げるというようなこともなかった。楽に、早く、楽しく物事を進めることができたのだ。私はただ、雑誌全体の構成と誌面レイアウトを作り、データにまとめ、印刷手配をしただけで、雑誌は無事期日までに完成させることができた。
今回の雑誌作りを通して、私には私の役割があることを改めて知った。それは「言い出しっぺ」になることだ。「こんなことをやりたい!」と旗を立て、形にしていくことだ。
会社員時代はそれが上手くできなかった。言い出して走り出してはみるものの、人に頼れず、自分で抱え込んだ結果、結局自分でできる範囲のことしかやらなかった。なぜ上手くいかなかったのか? それは、あの頃「やりたい!」と言い出したことの多くは、自己満足の域を出ず、「やったその先の未来」を描いていなかったからだ。もっと言うと、「どうしてもそれをやらなければならない理由」も持っていなかった。だから人を動かすことができなかったのだろうし、何が何でもやり遂げようという意志も弱かったのだろう。
でも今回、私には雑誌を作りたい理由があった。そしてこの雑誌を通じて「私も自分の思いを文字にして伝えてみよう」と思ってくれる人がいて、その人が書いたものがまた誰かの心を揺さぶる、そんな繋がりができていったら、どんなに素敵だろう。だから雑誌を作ろうと思ったのだ。決して簡単なことではないけれど、簡単じゃなかったからこそ人の力を素直に借りることができたのだと思うし、協力を得ることができたのだと思う。
ここからまた新たな挑戦が始まる。ひとりでも多くの人に届けることができるように、雑誌作りに協力してくれた人達の思いを繋いでいきたい。
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