再び舞台の幕が開くとき
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:エミリー(超通信コース)
「私まで緊張してきた……」
今日は約1年半ぶりに会場で生で舞台を観ることができる日だ。
コロナが流行する前は毎月のように舞台を観に行っていた。
隣に座る友人がオペラグラスを取り出したのを見て、
「あ、久しぶりすぎてオペラグラスを持ってくるの忘れちゃった」
私が言うと、
友人は優しく笑っていた。
以前はこの友人と2人でよく観に行っていたが、コロナ禍でチケットは1人1枚しか取れなくなってしまったので、なかなか2人で行くことができなかった。
でも同行者がいて、舞台への期待や感想を語り合うことができるのはとても楽しいことだ。友人も嬉しそう。
今はライブ配信があるので自宅や映画館でも観ることができる。
1年半の間、舞台を観に行けなくても自宅や映画館で観たりはしていた。
それでも私は会場で生の舞台を観るのが好きだ。
生の舞台は生きている。
役者の息遣い。カメラで追わない場所での細やかな演技・演出。
それを感じることができるのだ。
その日は午前中仕事だった。
「絶対に時間になったら帰る。そのために今からこの仕事に手をつけてもなんとか終わるかな」
時計の針と仕事の進捗を慎重に見ていた。
そして、時間になった!
「お先に失礼します」
颯爽と職場を後にした。
友人と会場で待ち合わせて入場。
係員にチケットを見せて入場し、トイレに行く。
チケットを見ながら、
「私たちの席どこだろう。こっちかな?」
「あっちの扉から入ったほうが近かったね」
この一連の流れすら懐かしい。
開幕までは静かにおしゃべり。
「この役者さん、前□□の舞台に出てたよね」
「今度〇〇の舞台始まるよね。△△さん出るんだって」
「最近仕事どう?」
この舞台への期待、今後上演されるであろう舞台の話、近況。
いろいろなことを話した。
ブー
開演が近づくブザーがなる。
「そろそろスマホの電源切らないと」
会場の電気が消える。
外は大雨だったが、それを感じさせない静寂。
そして、舞台の幕が上がった。
スポットライトをあび、歌とダンスが始まる。
魂のこもった歌。
一糸乱れぬダンス。
揃う足音。
感動で体が震えた。
この空気感は自宅や映画館では味わえない。
なんとも言えない感覚。
コロナ禍でも幕を開けることができたという喜びと
コロナ禍でも観劇できたという喜びが一つになった。
私の久しぶりの観劇のタイトルは、「ロミオ&ジュリエット」
有名なシェイクスピアの悲劇をミュージカルにしたものだ。
ベローナという街で争うモンタギュー家の息子とキャピュレット家の娘が恋に落ちるが最後に2人とも命を絶ってしまう。
そもそも有名な話だから、誰もが結末は知っている。
それにこの作品は約10年上演されている、全てではないが何度も観ている。
なので、展開もどこでどの曲があるか、曲の歌詞まで全て知っている。
「なぜ同じ舞台を何度も観るのか?」
もちろん役者さんは公演ごとに変わるというのもある。
舞台は生きていると書いたが、本当にその時その時で毎回微妙に違うのだ。
それを楽しむのが一つ。
そして、変わらないことを楽しむということもある。
「この場面でこの展開があって、この場面でこの曲がある。
そうそう、こういう歌詞だよね。」
これを一つ一つ確認していくのだ。
これも楽しいのだ。
そして、私が一番感動したのは、やはり最後のシーンだ。
ロミオとジュリエットが死に、
神父や乳母、両親がそれを嘆く歌を歌う。
しかし、2人の母親が、
「子ども達の天国での幸せと2人の望みが両家の和解であること」を歌い、
手を取り合うシーン。
何度観ても泣けるのだ。
でもDVDでは泣けない。
舞台で観ると泣けるのだ。
それは、生の歌のもつ力、迫力なんだと思う。
前に「ロミオ&ジュリエット」見たのは2019年。この時はまさか次に観る時に、世の中がこんなにも舞台を観ることが困難になっているなんて夢にも思わなかった。
その時は満席だったが、今回は空席があった。
あえてあけているのか、他の地方の人が来れないから余っているのかわからないが、
コロナ禍で舞台のチケットが取りやすくなっているのではないだろうか。
感染症には気をつけなければならないけど、これまで「チケットが取れないから舞台を観に行けないなー」と思っていた方は、観劇デビューをする良い機会だと思う。
もちろんまずはライブ配信やDVDから観て見るのも良い。
しかし、ひとりでも多くの方が舞台に足を運ぶことが、これからも舞台というものが存続していく力になるのだ。
私もまた舞台を観にいくつもりだ。
***
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