役に立たないことは無い
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記事:篠原蘭(スピード・ライティング講座)
「何の役にも立たないのに」
幼い頃、姉に言われた一言が妙に気になった。
悔しくて忘れられないではなく、「本当にそうかな? 何か役に立つ事はあるんじゃないか?」そんな気持ちだった。そんな、妙な引っかかりから人の役に立てた事がある。
私と姉は年も近かったので、何をするにも一緒だった。大人になった今でも仲が良い。
しかし、姉のプライドなのか姉は常に私に勝ちたい人だったので、私が勝つ事に対して妙な負け惜しみを言う事があった。私はそれがちょっと面白かった。冒頭の一言も姉が私にどうしても勝てなかった事に対して出た言葉だった。
姉が私にどうしても勝てなかった事、それは髪の毛の伸びる速さだ。
私はこれまで自分より速く髪が伸びる人に会ったことが無いと言っていいくらいに速い。
髪の毛の伸びる速さは平均1ヶ月で1センチ、1年で約12センチだ。正確に測った事はないが、私は1年で15センチくらいは伸びていると思う。ちなみに、姉は明らかに平均より遅いペースだ。
髪の毛の伸びる速さを競ってもどうって事はないが、幼い姉には「妹に負ける」ことは全て許せない事だったのだろう。そうして、冒頭の一言を吐き捨てた「髪の毛が伸びるの速くても、何の役にも立たないのに」
しかし、幼い私には役に立てる事は思いつかず「いつか髪の毛伸びるのが速い事が人の役に立てたらいいな」とぼんやりと思っていた。
実際、元々毛量も多く、伸びるのも速いとケアが面倒だし、美容室に行く度に「前来たのいつでしたっけ? 伸びましたね〜」というやり取りが毎回行われた。
伸びるの速い事、知ってるわ! 誰よりも私が知ってるわ!!
そんな、どちらかというとデメリットの方が多く感じていた髪の毛の伸びる速さだが、私はついに見つけた。役に立てる事を。
病気の人の為に、ウィッグを作るボランティアに髪の毛が寄付できる事を知ったのだ。
それが「ヘアドネーション」と言われている。
知ったきっかけはインターネットだったと思う。自分が寄付に向けて、伸ばしている間にロングーヘアーのイメージが強い女優やタレントが髪を切り寄付をした事で一気に注目されるが、既に伸ばし始めていた身としては若干の悔しさがあった事はここだけの話にしてほしい。
条件が異なる場合もあるが、私は調べた団体は31センチ以上が寄付の対象だった。
髪の毛の長さが31センチと聞くと、そんなに長くないのでは? と、思う人もいるかもしれない。実際、ショートヘアーくらいの長さになる。
しかし、31センチ切っても可愛いヘアースタイルが仕上がる長さと考えると大人でも腰くらいの長さまで必要になる。
男性やこれまでショートが多かった人は考えてみてほしい、腰まで髪のある生活を。
シャンプーやドライヤーは当然大変。
髪をとかして、抜けた毛は1本でもかなりのインパクト。
ゆるかわ系のふんわりヘアアレンジはかなりの鍛錬が必要。
その間に何本ものヘアピンが犠牲になった。
ヘアワックスも軽いタイプは仕事せず、ハードスプレーが神だった。
しかし、こうして私が長過ぎる髪のヘアアレンジができない事に悩んでいる一方で、病気やその治療が理由で髪型の選択肢すら無い人もいるのだ。
そんな人に、私の髪が役立てたら嬉しい。
もちろん、私の髪がそのまま渡されるのでなくウィッグとして加工する工程や、作成に関わるスタッフがあっての事だが、「何の役にも立たない」と言われた伸びるのが速い私の髪が「誰かの役に立つ」なんて嬉しい事だった。
私はヘアドネーションを知ってから3年くらいかけ、髪を伸ばし、寄付をした。
ロングからショートへの変化はインパクトがあった。普段はあまり話さないような人にも「イメージ変わりますね」と声を掛けられた。その度に、「髪の毛を寄付する為に、まとめて切ったんです」と説明した。その頃には、私が伸ばはじめた頃と比べてヘアドネーションを知っている人は増えていたが、実際に行った人はまだ少なかった。
そして、一気に短くすると本当に頭が軽い。今まで何だったんだ? というくらいに頭が軽い。
シャンプーもドライヤーも楽。
落ちてる髪の毛もあまり気にならない。
軽いワックスでも簡単にアレンジできる。
ヘアピンも何度も使える!!
ショートの楽さはわかったが、また伸ばして、また寄付しよう。そう思った。
ちなみに、姉に「昔、髪の毛伸びる速くても何の役にも立たないって言われたけど、あったから!」と話すと本人は言った事をすっかり忘れていた。
しかし、姉の一言が無ければ私はヘアドネーションをやらなかったと思う。ヘアドネーションを知っても興味を持たなかったかもしれない。
妙に気になった一言、それが考えるきっかけとなり、人の役に立つ事もあるのだ。
***
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