メディアグランプリ

ラジオで自分を取り戻す

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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:井上春花(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
ラジオというと何を想像するだろうか?
 
はがき職人。深夜ラジオ。受験勉強のおとも。コアなファン。何かちょっと閉じた世界のお楽しみ……。
自分がラジオリスナーになる前は、私はそんなイメージを持っていた。まさか朝から晩までラジオを聴く生活になろうとは、思ってもみなかった。
 
10代のころからオタクというほどではないけど、お笑いも好きだったし、それなりに色んな趣味を体験してきた。だが、私の周りにラジオを聴いている友達はいなかった。夜中の勉強は好きな音楽を聴きながらだったし、ふとラジオを聴いてみようと思ったこともあったが、当時のラジオ聴取にはCDラジカセのダイヤル合わせというハードルがあった。ザーッという不快音に、なかなか聞き取れないパーソナリティの声。特に興味のある番組もなかった私は、すぐにあきらめて「私には関係のないメディア」の箱に入れてしまった。
 
20年後、その箱から取り出したきっかけは「ラジコ」というスマホアプリ。
これは画期的!なんてったってダイヤル合わせが必要ない。指先のタップのみで聴きたい番組にたどり着ける。そしてタイムフリー機能。深夜ラジオの時間まで起きていなくても翌朝聴ける。
このハードルの低さにより、面倒くさがりの私もラジオの仲間に入れてもらうことが出来た。「面倒くさくない」は、私にとって重要なポイントだ。
 
 
さてここから、いまやラジオのヘビーリスナーである私が、
「在宅続きで人恋しいなぁ」
「忙しさに追われて自分がよく分からなくなってきた」
「ラジオって特定の人の趣味でしょ?」
そんな方に向けて、熱烈にラジオをレコメンドしたいと思う。ラジオって、いつでもそばにいてくれる友達なんですヨ。
 
 
まずは「在宅で人恋しい問題」について。
 
私は2020年3月に17年勤めた会社を辞めた。コロナが理由ではなく、子育てと仕事の両立が上手くいかなくなったからだ。ちょうど世の中が在宅モードになるときに重なり、仕事を辞めた燃え尽き感や寂しさはうやむやになった。しかし、子供の学校が始まり、夫の時差通勤が始まり、家に一人でいる時間が増えると、言いようのない虚無感が出てきた。社会と切り離され、それがいつまで続くか分からない。
 
家で一人になるとラジオをつけた。誰かが話している声がそこにあるだけで、安心した。心を麻痺させるわけではない。不安や虚無感は消えるわけではない。ただ、人の声があると、その方向にずっと落ちていくことはないのだ。視覚・聴覚を独占されるテレビに比べて、感覚への刺激も少ないので、つけっぱなしにできる。そんなさりげなさも素晴らしい。
 
また、ラジオはリスナーメールにより成り立つ部分が大きい。よく「距離が近い」と表現されるが、自分の身近で昨日あったような出来事を、パーソナリティが読んでくれる。「自分だけじゃないんだな」と思えるディテールが、ものすごく精密で高い共感を呼ぶ。
ほぼ毎日同じ時間に放送している番組も多く、お気に入りが出来ると、毎日番組パーソナリティと会っているような気分になる。テレビのように重なって話すわけではなく、一人一人が順番に話すので、丁寧に話が聴ける。どんな考えを持つ人なのか、理解できるようになる。会ったこともないのに友達のような感覚になる。人恋しさもいつしか消える。
 
 
続いて「忙しさで自分がよく分からなくなる問題」について。
 
人が担う役割は何と多いことだろう。
会社員、係長、課長、部長、マネージャー、先輩、後輩、父、母、夫、妻……。
 
会社員時代、私はよく、自分が何をしたいのか分からなくなった。というか、そんなことも考えなかった。意思が明確な人なら役割を超えた自分の感覚を持てるが、そうでなければ、いかようにも染まる。与えられたことを一所懸命することに自己実現を見出し、簡単に自分の時間も犠牲にする。それは少しずつ少しずつ、心をむしばむのだ。小さな意思でも守ることを怠っては、いつか軋みが生まれる。
 
どの時代が一番、自分らしく生きていただろう。それは社会に役割をもらう前だったと思う。あるいは、役割を脇に置いて過ごせる時間。「友達」といる時間ではないだろうか。
大人になって友達と会う時間を持つのは、なかなかに難しい。予定を合わせて、その時間のために万障繰り合わせして、場所を設定して、予約をして、電車に乗ってバスに乗って、約束場所にたどり着く。でも、ラジオという友達は、毎日すぐ側にいる。
 
フラットな時事ニュースや考えさせられる社会問題、趣味の話から思わず笑ってしまう下世話な話まで、あらゆる話題をラジオは差し出す。自分から発信できなくてもいいのだ。心の中で同意したり独り言を言ったり、そんなことでも満足できる。話の核は、もしかしたらあなたの友達よりピッタリくるものが転がっているかもしれない。私はこんなことで心が動く人間だったな、それが分かるだけで、何者でもない自分を肯定できる。小さな意思も見失わず、愛し守ることができる。
 
 
最後に、ラジオが特定の人向けの趣味だと思っている方へ。
私がラジオを聴くようになったのは、つい最近だ。在宅時間が増え、子供の成長と共に一人の時間が増え、スマホで便利にラジオが聴ける時代になっていた。ちょっとした興味から聴き始めたら、無限のコンテンツがそこには広がっていた。
 
お笑い芸人さんに笑わせてほしいとき。
心身ともに疲れて誰かの身近な話に癒されたいとき。
趣味の話題を探求したいとき。
そこに人の気配を感じたいとき。
 
ラジオはどんなシーンにも寄り添ってくれる。何かや誰かのコアなファンがラジオまで追いかける、というイメージを、もし持っている人がいたら、それは捨てていい。スマホでラジオを聴く時代だ、ラジオを聴くための強いパッションは不要。そもそも、ラジオはそんな閉鎖空間ではない。
 
最近友達と会ってなくて寂しいなあ……。そう思ったら、ラジコをダウンロードして、その時やっている番組に、1日5分でもいい、しばらく耳を傾けてみて。いつでもワンタップで寄り添ってくれる友達ができるはず。
 
 
 
 
***
 
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2021-09-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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