負け試合の悔しささえも打ち消す、思い出のガパオ
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記事:福田 乃子(ライティング・ゼミ日曜コース)
「試合は負けたけど、今日もガパオが美味しかったからいいや!」
野球観戦に行き、応援しているチームが負けた時のお決まりのセリフである。
往復4時間をかけて野球場に試合を観に行くからには、できたら勝ち試合が見たい。
でもそう思うようにいかないのが、勝負の世界だ。
一喜一憂したくないので、いつも負けることを想定して野球場に行く。
でもそれだけでは、楽しみが無い。
だから、いつも「美味しいご飯」を食べるようにしていた。
それが、「ガパオ丼」だった。(以下、ガパオ)
「マリンスタジアムの名物の球場メシは、ガパオだよ」
マニアなファンである友人から教えられ、初めて野球観戦に行った時に購入してみようとした。
だが、考えが甘かった。
球場に着いてみると、いろいろなキッチンカーやフードワゴンが出ていた。
その中で、一際長蛇の列を成していたのが、その「ガパオ」のお店だった。
一番端っこに配置されており、その理由が「長蛇の列が周りに迷惑をかける」からだった。
試合開始1時間前で、あまりの列の長さに断念した。
だからこそ、「次こそはガパオを食べてやる!」という念だけが残った。
幸にして野球が大好きになった私は、球場に通うこととなる。
そして、その念願のガパオを購入する機会が訪れたのだ。
玄米の上には、溢れんばかりの具。
日本人の舌に合うようにアレンジされている味付けで、「小松菜」がふんだんに使われていた。
さらには、目玉焼きではなく、温玉が具の頂上に鎮座している。
オリジナルのガパオライスとの違いはいくつもある。
でもそんなことは気にならないぐらい、美味しそうだった。
しかも魅力はそれだけではない。
トッピングがいろいろと無料だったのだ。
自家製の漬物や、キムチ、カットレモン、ナンプラーなどの自家製の調味料。
あらゆるものが「無料でどうぞ」と、サービスで置かれていたのだ。
そして、ご飯自体の量が多いにも関わらず、値段が安い。
店に利益が本当に出ているのかと疑いたくなるぐらいに、安く感じた。
元々、「球場メシ」というのは、価格設定自体は市場と比べると高めだ。
だから、余計にそのガパオが安く感じたのかもしれない。
でも、無料トッピングであったり、ご飯の量であったり、いろいろと他のお店では感じられないサービスの多さが、そこにはあったのだ。
「もし初めてお召し上がりになるなら、このトッピングが良いですよ」
オーナーさんはそう声をかけてくれた。トッピングに迷っていたからだ。
そしてそこからオススメを教えてもらって、試してみたのだ。
これがガパオと、そしてオーナーさんとの出会いでもあった。
試合開始後、すぐに出来立てのガパオの蓋を開けてみる。
そこに温玉を割り入れると、赤や緑、黄色といった鮮やかな色彩が現れる。
そして、立ち込める良い匂い。
野球の試合なんてそっちのけで、ガパオを頬張っていた。
一口食べて、すぐ次の一口。
トッピングである温玉が混ざると、また味わいが変わる。
オススメされたキムチを食べてみると、ピリッとした味が加わり、また別の楽しみを見せてくる。
いろいろな味わいと楽しみを見せてくれるガパオに、私はどんどん魅了された。
気づくと、野球の試合は結構進んでいて、周りの歓声で大事なシーンを逃していることも気付くことが何度もあった。
それぐらい、ガパオに夢中だった。
お店に通い始めると、いろいろとオーナーさんともお話をするようになる。
最初に教えてもらったトッピング以外のものを試してみたり、他の食べ方を教えてもらったり。
本来は有料のはずのトッピングを、顔馴染みになったという理由で無料でサービスしてくれたり、とさらに通い詰めたくなる要素が増えていく。
毎回、球場の写真とガパオの写真を撮ることが習慣となった。
味についてのこと、トッピングはこれがよかったこと、オーナーさんとはこんな話をしたということを書き残しておく。
それがどんどん増えていくと、1つのアルバムのようになってきた。
ただの野球の試合を観に行っているだけなのに、それ以外の楽しみが増える。
写真を見返してみると、その時の思い出も一緒によみがえってくる。
応援しているチームが試合に負けたとしても、私を慰めてくれるアイテムになっていったのだ
「試合は負けたけど、今日もガパオが美味しかったからいいや!」
負けた試合の後はいつもそう言って、ガパオに慰めてもらっていた。
ただ、別れは突然やってきた。
そのガパオのお店は、約5年前にマリンスタジアムからいなくなってしまったのだ。
突然終わってしまったアルバムを見るたびに、ガパオが恋しくなった。
しかし、この夏にアルバムの写真がまた増えたのだ。
実は期間限定で、3日間だけガパオのお店がマリンスタジアムに復活したのだ。
私と同じようなコアなファン達は、かつてのように長蛇の列をなして、その復帰を歓迎していた。
オーナーさんとも久々の再会を果たし、「ご無沙汰してます」と会話をする。
その些細な挨拶ですら、楽しかったし嬉しかった。
そして久々に球場で食べたガパオは、以前の思い出の中のガパオよりも何倍も美味しく感じた。
そう、全てが懐かしく、全てが新鮮だった。
かつてのアルバムが、生き返った瞬間だった。
あなたにはそんな思い出の食べ物がありますか?
思い出もたくさん与えてくれるような、記憶の中に残っている味はありますか?
私のアルバムのガパオには、今回の写真とともに、こうコメントが残された。
「試合は負けたけど、今日もガパオが美味しかったからいいや!」
***
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