メディアグランプリ

アフリカの哲学に学ぶ助け合いの精神


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記事:長塚正一郎(ライティング・ゼミ10月コース)
 
 
突然ですが、みなさんはバスや電車の中で、初対面の人に話しかけたことはありますでしょうか? 日本にいると、そんな機会はなかなかないことではないかと思います。
ましてや、外国人の方に積極的に話しかける人なんてことは日本人からしたらなかなかないことです。日本の電車で、見ず知らずの人に馴れ馴れしく話しかけたら、通報されてもおかしくありません。日本ではそれくらい他人と距離を取るのが普通です。みんなスマホの中の世界に埋没しています。
もちろんバスの中は静かです。みんな周りに配慮して声のトーンを落としますし、そもそも初対面の人と話さないなんてことをしないのですから。
 
ところが、世界に目を向ければ、バスの中がてんやわんやの国もあるのです。
それが今回の記事の主人公であるエチオピアです。
 
私が初めてエチオピアの長距離バスに乗った時のこと。2018年の12月。うだるような暑さの日でした。私は首都のアディスアベバから、南部の町に移動しようと唯一の交通機関であるバスを利用して、少数民族に会いに行こうと意気揚々とバスに乗り込んだのでした。
 
日本の路線バスくらいの小さな車体に5列シート。荷物は膝の上。20キロものバックパックを膝の上に置き、その上にデイパックを置くという過酷な環境です。道は舗装されておらず、砂ぼこりが宙を舞い散らかします。それにも関わらず、エアコンがついていない。窓は全開。バスの中に、砂ぼこりが充満します。
 
しかし、そんなことを忘れてしまうくらい、バスの中がうるさいのです。とにかく、うるさい。満員のバスに乗っているエチオピア人はみんな、隣の人や前後の乗客、さらには、離れた席の人と大声でおしゃべりしているのです。これがうるさいなんの。ただでさえ、暑くて、息苦しくて、膝の上には大荷物でしんどいのに、この騒音です。たまったもんじゃありません。
 
僕は当然、大家族で、親戚で、みんなで故郷に帰るものだと思っていました。親戚どうしの内輪話で盛り上がっているのだと。
ところが、隣に座っているエチオピア人によくよく話を聞いてみると、そうではないらしい。彼らはみな、その日に初めて会った人のようなのです。つまり初対面。それにも関わらず、さも盟友かのように肩を組んで笑い合い、談笑しています。
 
僕は信じられない思いで彼等を見るしかありませんでした。日本では考えられないことが目の前で繰り広げられています。なんで、初対面の人同士でここまで打ち解け合って、仲良くできるのか。理解できません。
 
そこに日本人が失ってしまったなにか大切なものを感じたような気がして、なんとなく寂しくなったのをよく覚えています。見ず知らずの人と打ち解け合い、近況を報告しあい、互いにケアしあう。そんな関係を外から傍観するしかない自分がいるのでした。
 
しかし、アフリカの本領が発揮されるのはこの後なのです。
 
僕の隣にはソンケさんという、サングラスに強面のいかつい兄ちゃんが座っていました。彼と話していると、どうやら彼は、UAEで英語の教師をしているエリートのようです。日本人は珍しいようで、いろいろな質問をぶつけてきます。
さらに、自分の娘さんの写真を見せてくれたりと、会話がはずみます。話題は、僕の旅のことへと移っていき、移動手段や宿泊手段をつぶさに聞かれます。
 
金欠バックパッカーだった僕は、基本的に宿を予約するということはせずに、行き当たりばったりに泊まる場所を決めており、その日も、到着した町でテキトーに野宿をするつもりでした。
そのことをソンケさんに伝えると、「お前、それはいけない。危なすぎる。俺に手伝わせてくれ」と力強く迫ってきます。そんな危ないことをするくらいならうちに泊まっていけと。
 
このときの”Let me help you”ということばは、今でも僕の心の中に、圧倒的な温かさでもって焼き付いています。
 
その後、ソンケさんのおうちにお邪魔し、お母様や自慢の娘さんや兄弟を紹介してもらって、大変心温まる経験をさせていただきました。一緒に夕食をとり、夜空と田舎町の夜景を眺めます。
 
彼等の輪を、その外から見ることしかできなかった自分。そしてその輪の中へ入れない自分を、外から見ている自分。そこに日本人が失いつつある精神を感じ、どこか寂しい気持ちになっていました。ところが、彼らのホスピタリティは、そんな僕をも包み込むほど大きく寛容で温かいものでした。真の人間味とはこのことを言うのか……。この人を助けたら、これくらいの見返りが期待できる、といった打算的な考えは存在しません。シンプルに助け合う。困った時はお互いさま。あたりまえに目の前の人をケアする。そこに文化や国籍の違いなど、存在しませんでした。
 
帰国してからアフリカの哲学について調べると、こんなフレーズが出てきました。
 
I am because we are.
 
みんながいて自分もその中の一員だからこそ、自分が存在していられるのだと。
これぞ私がエチオピアで身をもって感じた、あの温かさ、助け合いの精神なんだと思います。そこには純粋な人間の在り方があるような気がします。
 
このドライな世界の中で、彼等のようなウェットな人間でありたいとの決意を新たにし、筆をおかせていただきます。
 
 
 
 
***
 
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2021-11-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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