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トレイルランニングをしたら知らない私の一面に気づいた


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:izumi(ライティング・ゼミ超通信コース)
 
 
うーん。やはり山の中を走るのは楽しい。
あれ? 私ってこんなに人と、よく話しをするタイプかな……。
山の中を走りながら、いつもと違う自分がいることに気づいた。
 
私はトレイルランニングという、山を走るスポーツを趣味にしている。
山の中の林道、登山道、砂利道などがコースだ。
ふかふかな土を踏みしめながら走る。
山は自然があふれていて、樹齢何百年もする御神木を見ると、生命力を感じ、触れるとパワーをもらえる。
気分がすがすがしくなり、リフレッシュできるのだ。
 
山は四季によって、雰囲気が変わる。
春は、新緑の時期で木々の緑がキラキラと輝く。
若葉を見ると、お! がんばっているなあとエールを送りたくなる。
夏は暑いが、山を登るにつれて、気温が下がっていく。
水場を見つけて、手を入れるとひんやりして、天然のクーラーだ。
秋はなんといっても紅葉が美しい。
葉は朱色や真っ赤になり、個性的な色の葉を探すのが楽しい。
落ち葉でふかふかの土は、まるでじゅうたんのうえにいるようだ。
どんぐりは帽子をかぶり、まんまるな体で転がっていて、その姿を愛おしく感じる。
冬は一転して、自然の厳しい面を見せる。いつもと同じ装備や服装で山に入ると痛い目にあう。難易度が高く気軽にいける季節ではない。
 
トレイルランニングを始めたきっかけは、ランニングで、夏のロード練習が暑くて嫌になっていたタイミングだった。
道路の熱気がもわんと伝わってきて、走る気力を失わせる。
普通に生活しているだけでも、38度の異常な気温に生命の危険を感じるのに、走るなんて……。
夏の練習は1KMの周回コースで、走る度に水分補給していた。
同時に頭から水をかぶる。
水をかぶるなんて、驚くかもしれないが、熱中症予防になる。
走らない友達に話すと「そこまでして走るんだ。なんか学生の部活みたい」と笑っていた。
 
そんな時に、練習仲間が山に走り行くと教えてくれた。
山は、平地より、涼しいらしい。
しかも、いつもと違う筋肉を使うので、いい練習になる。
暑くて練習が嫌になっていたので、魅力的に感じた。
涼しくて、練習にもなるという情報は「山に行ってみよう」という気持ちになった。
走れるのだろうか、山は危ないのではという不安があったが、とにかく涼しいところで練習したかったのだ。
 
ただ涼しい場所で練習したいと、トレイルランニングをはじめたら、すっかり魅力にはまった。
トレイルランニングと聞くと、すごくハードな運動を想像するだろうが、そうではない。
私は登りは歩き、下りは走るという無理をしない方法を取っている。
もちろん速く走れる人は、登りの部分も走るのだが、私は無理して登りは走らない。
走らないというよりは、走れないという方が正しい。
山の中で走るという、非日常を体験できる。
街中を走るのと比べると、登りや下りのバリエーションがあって、飽きることがない。
登りや、疲れた時は歩き、また元気になると走るという選択が出来るのが魅力だ。
 
景色を見て楽しみながら運動ができ、メンタルにもよい影響をあたえる。
森林浴の効果があるのだろうか。
山の中にいるだけで視覚、聴覚、触覚など五感に刺激を受けて、リラックスできる効果があると言われている。
みなさんも、自然の多い場所にいくと、リラックスできた経験があるかもしれない。
トレイルランニングをすると、気分転換出来る。
 
トレイルランニングをすると、積極的な私に変身できるのだ。
普段は人見知りで、人に自分から話しかける方ではない。
そんな私が、積極的に知らない人と交流できるようになった。
まるで、魔法にかけられたように、人との交流が楽しくなる。
 
トレイルランニングの大会で出会った人と仲良くなり、SNSでつながる機会が多い。
山の絶景に思わず、「ほんとうに綺麗な景色ですね」と知らない人に話しかけてしまう。
関西に住んでいる私は、信州の大会で、壮大な山の風景に感動する。
遠く見える、雪山を眺めながら走れた時は、疲れがどこかに飛んでいく。
 
人見知りの私が、積極的に人と関わり、仲良くなれる。
自分より随分年上のおじさんと仲良くなり、SNSでつながった経験がある。
山梨県の甲州アルプスオートチャレンジというトレイルランニング大会にでた時だ。
私は32KMのコースに出場していた。
私の走力では、がんばって完走できるレベルだった。
練習して大会に望んだが、初めてのコースに、完走できるのだろうかという不安になった。
 
スタートしてすぐ、白髪のおじさんと走るペースが一緒になる。
「この大会にでたことがありますか? どんなコースなのか教えてもらえませんか?」
気づけば、自分から話しかけていた。
 
おじさんは、突然話しかけてきた私に、優しくいろいろなことを教えてくれた。
去年はもう一つ上のレベルのクラスに出場していたこと。
コースの内容や、どの程度を走れたら完走できるか。
話していると、以前に同じ大会に出場していたと分かった。
二人の距離がまるで恋人のように、一気に近くなる感覚を覚えた。
 
話しながら走ると緊張もとけ、リラックスしながら走れた。
山の登り区間になると、普段から練習しているおじさんの姿があっという間に見えなくなってしまった。
おじさんの年齢は60代半ば位に見え、走る様子はパワーにあふれている。
毎日走り、近くの山でトレーニングしていると話していた。
 
健康に気をつけてトレーニングしていると、年齢なんか関係ない。
おじさんの努力が、かっこよく眩しく感じた。
 
1人での登りになると、周りに人がいなくなり、急に寂しくなった。
スタートしてすぐに、10KMを登るコースのために、途中で給水所がなく、水の残量が不安になる。
登りをゆっくりと進むと、11月の季節でも、汗がダラダラと出ている。
登る度に、体重がもっと軽ければ速く登れるのにと毎回後悔するが、登り切ったところですっかり忘れてしまう。
なんとか登り切り、早く給水所で水を飲みたい一心で走った。
 
ちょうど、おじさんが給水所を出てきたところで、お互い笑顔になった。
「まだ来ないかと思っていたけど、がんばってきたね」と褒めてくれた。
この先のコースを無事に完走しようという思いで、エールを送り合った。
 
やっと、下りのコースに入る。私は登りより、下りの方が好きだ。
リズムを取りながら、石や木の根っこで、ころばないように降りていく。
コツを覚えると下りがどんどん楽しくなり、登りではゆっくりと景色が変わるのにくらべ、下りは、両端にある木々の景色がどんどん変わっていく。
その後もコース上で一緒になる女性と、話しながら走った。
暗くなり、初めてヘッドライトをして山の中を走り、暗い山は足元が見えなくなり、昼間の景色とは一転して厳しい顔を見せるもんだと思った。
 
ゴールした時には日が落ちていた。
驚いたのは、おじさんがゴールで手を振って待っていてくれたからだ。
1人でゴールすると思っていたが、笑顔で手を振っていてくれる。
 
私は一気にテンションが上がり、ゴールした。
その時に一緒位にゴールした女性に「初めてヘッドライトをつけて走ったんです」と思わず話しかけていた。
相手も「私もなんです。初めて使いました」とお互いに勇姿をたたえあった。
おじさんとゴールできた喜びを話し、まるで前から友達だったように感じた。
友達と旅行に行き帰ってきてから、あの時は楽しかったねと、話す気分に似ている。
 
なんで人見知りの私が、知らない人と交流できるのだろうと、考えていた。
普段から、いろいろな人とすぐに仲良くなるタイプではないのに、人懐っこい私に変わる。
トレイルランニングの大会では、ボランティアの人と話すのが好きだ。
普段会社で働いている時は、あいさつこそするが、進んで人と話すほうではない。
大会での私は、まるで別人じゃないか。
 
考えると2つの要素が、私を積極的に変えるのだと気づいた。
まずは、山でのあいさつ習慣が関係しているのではないか。
山はトレイルランニングに関わらず、登山者ともすれ違い際にあいさつをする。
「おはようございます」「こんにちは」
自分が下りで、相手が登りの場合「どれ位で頂上につきますか?」と聞かれる場合もある。
休憩していると、知らない人から「暑いですよね」と話しかけられたり、私も「本当に暑くて困りますね」と答える。
あいさつは、もし遭難した時に、だれと何を話したという情報が、役立つ場合もあるからだろう。
同じ山を登っている者としての、助け合いが必要だからだ。
山では知らない人と、挨拶や世間話しをするのが普通なため、話すというハードルが低くなる。
 
もう一つは、山に入ると森林浴効果でリラックスできる。
するといつもと違う考えや、発想が生まれているようだ。
一緒の大会に出て、つらい思いをしてゴールを目指している。
知らない人を同志のように感じて、一体感が生まれる。
住んでいる地域も、年齢、性別、全く違っているが、同じ大会に出ている。
一緒の大会に出ている人の背景を想像してみる。
この日のために頑張って、練習してきたんだろうな。
楽しそうに走っているな。
コースで休憩しているが、大丈夫だろうか。
足を引きずっている人は、もともと故障していたのかもしれない。でも、大会に出たかったのだろうな。
そう想像すると、思わず話しかけてしまう。
 
ロードのマラソン大会では、知らない人に話しかけるような経験はない。
やはり、山で走る影響が大きい。
普段は自分の奥に眠っているが、トレイルランニングを通して積極的な一面がおきてくる。
人間にはいろいろな面があり、その一部しか見えてはいない。
人には、積極的な面、臆病な面、楽観的な面とさまざまな面がある。
普段は人見知りな私も、積極的な一面もあるのだなと分かった。
 
トレイルランニングは、山を走るのが楽しいというだけのスポーツではない。
山に入り、自然を楽しむと、自分の意外な一面を知ることが出来る。
これからトレイルランニングの大会で、どんな私が出てくるのだろうかと考えると、ワクワクしてくる。
もしこの文章を読んで興味をもったなら、まずは山を歩いてみてほしい。
いつもと違う自分を感じるはずだ。
私たちの知らない一面を引き出してくれる。
 
 
 
 
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2021-11-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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