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女性取締役の嵐に翻弄された、人事の話


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記事:mihana(ライティング・ゼミ8月コース)
 
 
「人事って、何か偉そう……」
そんなイメージがあるのではないだろうか。
私も、以前はそう思っていた。
 
新卒で入社した会社に勤務して、今年で8年目になる。最初の3年は、コールセンターに勤務していた。その時、私にとって人事というのは、直接話したりメールを送ったりすることでさえ、緊張してしまうような存在だった。
 
ところが、入社4年目で、私は人事異動により、“人事”になってしまった。
 
異動して最初に思ったことは、人事にはやることがたくさんあるということだ。採用や研修、異動調整、労務管理、給与計算……挙げればキリがない。傍から見ていた時には、あまりやることがなさそうで、お気楽な部署だと思っていたけれど、想定外に多岐に渡る仕事をこなしているということが、来て数ヶ月も経たないうちに分かった。
 
様々な仕事の中で、私が一番好きなのは、研修の仕事だった。新入社員研修、昇格者研修……。どんな内容の研修にするか、誰に講話してもらうか、いろいろ考えるのは、とても楽しかった。
 
初めて担当したのは、若手女性のための、キャリアに関する半日の研修だった。入念に準備は行ったものの、司会を務めることもあり、研修当日はとても緊張していた。女性取締役にも同席いただくことになっていて、更に緊張感が高まった。
 
最初は、会社で活躍しているベテラン女性の方々に、今までのキャリアについて講話いただくパートだ。若手女性は、熱心に話を聞いている。順調な滑り出しだった。
 
その後、ベテラン女性と若手女性をいくつかのグループに分け、女性のキャリアについてディスカッションをしてもらうパートになった。私はしばらく椅子に座って、その様子を眺めていた。どうやら、どのグループも、話が盛り上がっているようだ。
 
「よかった、よかった……」
すっかり安心していたその時、後ろからいきなり喝が入った。
 
「人事が偉そうに、何ぼけーっと見てるのよ! 早くどこかのグループに入って、話を聞きなさい!!」
女性取締役だった。
 
この日が初対面だったのに怒られた私は、内心「ひえーっ」と思いながら、慌ててグループに入った。話を聞いていると、出産や育児など、女性ならではの悩みを抱えながら、皆働いているのだと実感することができた。
 
ディスカッションが盛り上がり、少し時間が押していた。司会だったので、「終了です」と言おうとマイクを持ったとき、またも女性取締役の喝が入った。
 
「盛り上がってるんだから、もう少し伸ばしてもいいでしょう。司会はね、様子を見つつ、臨機応変に進行するものなのよ!」
確かに、皆夢中だったので、ここで切り上げるのは勿体ない。私は、その後のプログラムを微調整し、ディスカッションを延長することにした。
 
終始ドキドキしっぱなしだったが、初めての研修は無事に終了し、若手女性は、皆満足した様子で帰って行った。女性取締役も帰ろうとしていたので、私はお見送りをしつつ、お礼を伝えた。すると、最後の喝が入った。
 
「人事なんだから、もっと従業員と向き合って仕事しなさい。自分から寄り添って、話を聞くの」
そして、エレベータ-に乗り、振り向きざまに言った。
 
「人事は、皆に、あなたの言うことならなんでも聞く、と思ってもらわなきゃダメ。人の心を掴むの。人心掌握が、人事の仕事よ」
 
まるで、ドラマのワンシーンのように、エレベータ-のドアが閉まった。
 
ディスカッションの時、人事がいると従業員が遠慮してしまうかな……と思った気持ちも、ないわけではない。ただ、実際参加してみると、そんな心配は不要だったし、参加したことにより、従業員がどんなことを考えているのか、知ることが出来た。また、従業員の盛り上がりが分かったからこそ、臨機応変にプログラムを調整し、研修を更に良いものにすることが出来た。
 
たった数時間の研修の間に吹き荒れた、女性取締役の喝の嵐は、とても激しかったが、人事にとって、仕事にとって、大切なことを学ぶことが出来た。それは、相手に自ら寄り添い、向き合う姿勢だ。見ているだけ、聞いているだけではなく、そこから一歩踏み出すのだ。
 
寄り添い、向き合い続けることであれば、私にも出来るかもしれない。偉そうな人事じゃなくて、身近な人事を目指すのだ。心を掴めるようになるには、まだまだ修行が必要かもしれないけれど。
 
今でも、仕事で悩んだ時には、嵐の日を思い出す。すると、自分にもまだ出来ることがあるかもしれないと、今日も頑張ろうと、そんな風に思えるのだ。
 
 
 
 
***
 
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2021-11-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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