雪が降ったら、犬は本当に喜んで庭をかけまわった話
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記事:yajima(ライティング・ゼミ集中コース)
クリスマスからの大寒波で、私の住む東北地方の街にも、
多いところでは30センチほどの雪が降った。
ニュースでは、連日大寒波による大雪の予報が流れていたが、
正直なところ、全く信じていなかった。
毎年、大寒波と大雪警報が出され、朝起きたら何センチ積もっているのだろうと
ビクビクしながら窓を開けると、1センチほどの積雪があるだけ。
だから、今回もたかを括っていた。どうせ大袈裟な警報だろうと。
しかし、今年は、違っていた。朝起きると車の上には、10センチ弱の雪が……。
朝から、夫と共に大慌てで支度をし、除雪をした車に乗り込むと、
大渋滞が予想される通勤路に、重い足取りで向かった。
人間の、特に大人にとって、あまり歓迎されることはない降雪だが、
大歓迎するものもいる。それがうちの愛犬だ。
毎日の散歩は、あまり好きではないらしく、人間が無理やり連れていかないと、
5分ほどですぐに帰ってきてしまう日もある。特に暑い日や、乗り気がしない日は、途中でしゃがみ込み動かなくなってしまうことも。そうなると、引っ張っても呼びかけても絶対動かないとの固い意志を表明し、全く動いてくれない。
人間の方が諦めて、仕方ないから帰ろうかと声を掛ければ、すぐに立ち上がり、家に向かって一直線。先ほどまでのやる気のなさはなんだったのだろうと思うほど、楽しそうに強い足取りで、帰っていく。あまりの変わりぶりに半ばあきれている飼い主を、ぐいぐい引っ張って、家路を急ぐ。見たいテレビでもあったのか、なんて思うくらい、強い意志を感じてちょっと笑てしまう。
そんな愛犬だが、雪の日だけは、どんなに帰ろうといっても、全然帰りたがらない。人が、いや犬が変わったのではと思うぐらい、散歩を楽しんでいるのである。
普段は、飼い主の後ろか横をトコトコとついてくるように散歩しているのに、この日ばかりはと、前を歩いてどんどん遠くに行こうとし、飼い主が追いつけず、ぴーんと張った散歩紐に気づいて、早くとばかりに振り返る、なんてこともある。雪の積もった地面に足が触れる時には、頭に音符でも見えるんじゃないかと思うくらい、足取りは軽やかで、何なら少し浮き足立っているのである。
雪の積もった広場では、雪玉を投げて欲しいとアピールし、キャッチしたら大興奮で何度も投げろとせがむ。雪を転がせば、猫のようにじゃれつき、たまに雪を食べながら、降り積もった雪を全身で満喫する。
いつものやる気のないあの子はどこへ……。本当にいつもと同じ犬だろうかと疑いたくなるほど散歩を楽しんでいる。
対して人間は、大寒波の中、鼻が痛くなるし、首も縮こまって、肩こりまでしてきた。どうして背中にもカイロを貼ってこなかったのかと悔やみつつ、愛犬の相手をしている。寒くて寒くて、散歩を終えて一刻も早く家に帰りたい。こんな日こそ、いつものやる気のなさを発揮してくれていいのに……。
そろそろお家へ帰ろうと、さりげなく帰る方向に連れて行こうとすれば、あからさまにがっかりした顔をして、少しだけ帰りたくないと、抵抗する愛犬。それを見て、心が多少痛むが、それでも、寒さには勝てなかった。いつものコースを散歩して、早々に帰路に着いた。
後ろをとぼとぼ付いてくる愛犬。なんだこれ、いつもと真逆だ。
「犬は喜び庭かけまわり、人はこたつで丸くなる♪」そんな歌が頭の中で流れた。
まさに、犬は喜んで庭を駆け回った。童謡の描写は正しかった。ただし、こたつで丸くなったのは、猫ではなく、寒波で身体中が冷えてしまった人間だったが。
思い返せば、子供の頃は、雪が降るのが楽しみで仕方がなかった。愛犬のように、
庭をかけまわって兄と遊んでいた。寒すぎで手に霜焼けができようとお構いなし。
雪だるまを作ったり、かまくらを作ったり、雪合戦をしたりと一日中外で遊んでいた。
いつからだっただろう、雪が面倒臭いものに変わったのは。天気予報で雪のマークを見かけると、どのくらい降るのだろうと心配し、朝は雪が降っていませんようにと願いながらカーテンを開ける。雪が少しでも積もっていれば、がっかりした気持ちになり、その日1日の大変さに思いを巡らせる。
雪が面倒だということが、いつの間にか当たり前になってしまっていたが、この気持ちが、子供の頃からのものではなかったことに、楽しくはしゃぐ愛犬を見ていて気づいた時に、何だかずい分大人になっていた自分に思わず苦笑いした。
犬は喜び庭かけまわり♪ 明日は休日だ。
少しは愛犬の全力の幸せに付き合ってみようかと思う。
***
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