太陽礼拝、恐るべし
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記事:Allie(ライティング・ライブ東京会場)
「◎※△●?!」
朝、ベッドから起き上がろうとしたら、今までに発したことのないような音が口から出た。人間は本当に痛い時、言葉を失うらしい。掛け布団を持ち上げようとするだけで腕に激痛が走る。これは拷問に近い。こんなにひどい筋肉痛になった原因は、間違いなく前日にやった「太陽礼拝」だろう。
私の通っているヨガスタジオでは、年末になると「年末企画」と題して、通常のスケジュールにはない特別なクラスが設けられる。その1つが「太陽礼拝54回」というクラスだ。文字どおり「太陽礼拝」という一連の動作を1つのレッスン中に54回繰り返すだけの、至ってシンプルな内容である。
それにしてもこんなにひどい筋肉痛になるとは。軽い気持ちで挑戦してみたのがマズかった。腹筋も痛すぎてまっすぐに起きられないので、ウォーキング・デッドのゾンビよろしく、うめきながら転がってベッドからはい出し(飼い犬に怪訝な顔をされたのはきっと気のせい)、何とか立ち上がってキッチンへ。いつものようにコーヒーを淹れる。最近新調した電気ポットは優秀で、湧かす温度が設定できる。コーヒーを淹れるのに適した温度は90度~95度。お湯が沸くのも以前のポットより早いので、温かい飲み物をよく飲む私にとっては大変ありがたい。
太陽礼拝は奥が深い。元々はヨガの発祥、インドで太陽神「スーリヤ」への祈りとして用いられていたものだ。自然からのエネルギーを自分自身の中に取り込んで、そのことに感謝の祈りを捧げる意味がある。それが次第に一般人向けにも取り入れられ、そしてヨガの動きの1つとして定着した。
12ほどのポーズを連続で、息を吸いながら1動作、吐きながら次の動作と、呼吸と動きを連動させる。全身の筋力を使うので柔軟性や代謝アップにつながり、血液やリンパの流れもよくなる。冷え性やむくみにも効果的と言われ、いいこと尽くし。ボディメイク中の私には何ともありがたいポーズである。
当日はいつもどおりヨガスタジオに行き、同じようにスタンバイ。週末ということもあって、定員いっぱいに受講する人がいた。レッスンの開始時間になり、講師の先生がスタジオに入ってくる。いつもは1人だけど……おや? 今回は2人だ。ベテランの先生が、新米の先生のレッスンをチェックするのだろうか。前にもそんな光景を見たことがある。
そうしているうちにレッスンが始まった。1回、2回、3回……10回目くらいまでは呼吸も乱れず、特に問題なくこなせた。この調子ならいける! 調子に乗りつつ、呼吸と動作を繰り返しながら心の中でニヤリとした。しかし、ヨガも世の中もそんなに甘くない。
体が温まってきて顔に汗が浮かび、腕で体を支えるポーズがキツくなってきた。何度目の動作なのかはカウントしていなかったので、感覚的にきっと今は40回くらいだろう、と思っていたら、
「27回目です」
1人の先生がみんなに聞こえるように言った。
27回?! ウソでしょ? まだ27回? 自分のカウントはいい加減もいいところだ。人間は自分が苦しい状況に置かれると、都合よく時を進めたくなるらしい。
そして半分の27回終わったところで、かけ声をかける先生が交代した。普段1人しかいない先生が2人いたのは、交代するためだったのだ。先生はみんなの動作を合わせるために声を張りながら動いているので、途中で交代しないと続けるのがキツいということなのだろう。そんなクラスに参加したのか、自分。
当然ながら私の交代要員はいないので、残りの27回を1人でこなさなくてはならないのだが……30回を過ぎたあたりから腕に力が入らなくなり、呼吸も乱れ始めた。まだ先は長い。心が折れそうになる。でも途中でリタイアは絶対にしたくない。でも腕に力が……と何度も葛藤しながら、意識が宇宙の彼方に飛んでいきそうになりながらも、何とか最後までこぎつけた。
ものすごく苦しかったけれど、終わったあとはきつい山道を登りきって頂上についたような、清々しさを感じた。なぜか感謝の気持ちもあった。誰でもいいから「ありがとう!」と言いたくなるような高揚感。きっとランナーズハイのようなものだろう。
礼拝でハイにさせるとは、太陽神は何とも憎い存在である。苦行を乗り越えた先にある多幸感。あんな清々しさを感じたら、また太陽礼拝54回してもいいかも、とすら思ってしまう。ただのドMなのかもしれないが、きっと毎日を楽しく過ごせそうな気がする。
そんなことを考えているうちに、ピーッと鳴ってお湯が95度に達した。電気ポットを持ち上げようとした瞬間、
「●△◎※?!」
と、本日2度目のナゾ音が口から出た。腕が痛すぎて電気ポットすらまともに持てない。恐るべし、太陽礼拝。
再びうめき声をあげながら、飼い犬に冷たい視線を向けられつつ、何とかコーヒーを淹れ終えた。さて、机に向かって仕事を始める時間だ。指先は筋肉痛じゃないから、キーボードを打つには支障ないだろう。
***
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