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大人の階段を、一段飛ばしで駆け上がった先に見えたものは


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:北江りな(ライティング・ライブ東京会場)
 
 
一年に一度、街が色とりどりに華やぐ日がある。
成人の日だ。
 
新年を迎えて初めての3連休。
社会人になると、正月明けに慣れない身体を少しでも休めるための3連休であるが、
その年は違った。
 
「ハタチ」の成人の日だ。
 
同級生たちは、二次会の話で盛り上がっている中、
私はあまり乗り気ではなかった。
 
振袖が黒色だからである。
 
今となってはシックでオシャレだし、
上品で素敵な振袖だと思う。
 
だが、大人になりきれていない子供だった私は、
赤色の振袖が良かったのだ。
 
振袖といったら、赤色とか明るい色というイメージだったし、
せっかく街を彩ることができる晴れの日に、
黒色だなんて、とんでもない。
当時はそう思っていた。
 
なぜ黒色の振袖になったかというと、
祖母、母から代々受け継がれてきた振袖だったからである。
 
そんなの着たくない。と言っても、
もう黒色の振袖以外の選択肢は我が家には無かった。
金銭面もそうだし、
親たちはその代々伝わってきた振袖を
私に着て欲しいとのことだった。
 
大人ならば、心の中で折り合いをつけて、
ぐっとこらえて、受け入れることが出来るだろう。
 
だから私は、子供ながらに、
大人の階段を一段飛ばしで駆け上がることにした。
 
ハタチの誕生日、私は大人になってみようじゃないか、と決心した。
今まで、ジュッサイ、ジュウゴサイ、ジュウハッサイ、と歳を重ねてきた自分が、ニジュッサイではなく、「ハタチ」になった。
なんだか格好いい響きを胸に躍らせながら、街へ1人、繰り出したのである。
 
その日は、日曜日だった。
まずは、馬を見に行くことにした。
牧場でもない、動物園でもない。
なんていったって、大人である。
私は、競馬場へ向かった。
 
はじめての競馬場は緊張した。
でも、私は大人になると決めたのだ。
そう。今も昔も、形から入るタイプである。
 
競馬場が終点の電車に乗り込むと、
そこはもう競馬場の入り口のようだった。
もう既に、競馬新聞を持っている人々が、
静かなる闘志を燃やしながら、座っていた。
 
もっと下調べをすればよかった。
もしや私は、場違いなのでは!?
 
と、後悔をしはじめたが、
意外や意外、着いてみると、カップルや家族連れも多かった。
だが、ハタチの女1人は、私ぐらいしか見当たらなかった。
 
アウェー感はあるが、来たなら賭けねば!
長いカタカナの名前が並ぶ競馬新聞を片手に、
私は、初めての賭けをした。
 
はじめての賭け金は、100円である。
私はまだまだ子供だった。
 
なんだか格好いい響きの名前の馬に、私は100円を託した。
レースがはじまる。
競馬場のボルテージが上がる。
大人たちが、一心不乱に馬を応援する。
馬を応援しているのか。
それとも、馬の勝利の先に見える希望を願っているのか。
たった2分の瞬間に、その場にいる大人たちは熱狂していた。
あぁ、大人の世界では、何かにここまで打ち込めるのか。と感じた。
 
私の子供だましの100円は、200円になって戻ってきた。
ビギナーズラックってやつだ。
初めて勝ち得た100円よりも、大人たちの100%の熱気に感心した。
 
 
競馬場を後にする。
次はタバコだ。
 
街角にある小さなタバコ屋に憧れていた。
いつも暇そうなおばあちゃんがラジオをかけて、通行人を見ている。
前々から気になっていた小さなタバコ屋だ。
 
銘柄なんて分からない。
馬の選び方と一緒で、格好いい名前のタバコを選んだ。
 
「ハマりすぎるんじゃないよ」
 
一言、おばあちゃんが言った。
ギクリとした。すっと胸に刺さった。
 
その時はじめて、おばあちゃんの声を聞いた。
まだまだ子供な自分を見透かされた気がした。
 
ライターに火をともす。
自分で火をつけているくせに、いつ点火するのか分からずビビる。
 
タバコを吸おうとしたが、うまく吸えなかった。
ストローの奥にタピオカが詰まった時のように不快だった。
 
子どもの頃は、「シガレット」というお菓子を口にくわえて
ふかしたふりをしながら、よく食べたものだ。
 
結局、くわえるだけで満足した。
おばあちゃん、安心してくれ。
私にはお菓子のシガレットで充分である。
やっぱり私は、まだ子供だったのだ。
 
 
最後は、お酒だ。
ビールやワイン、カクテル。
大体の人が初めて飲むお酒は、ビールだろうか。
私には憧れのお酒があった。
「カシスオレンジ」
なんだか格好いい。それだけだ。
やっぱり競馬の馬の名前と一緒である。
なんだか格好いい、が好きなハタチのミーハー女子であった。
 
甘い。顔がほてる。鼓動が早くなる。
はじめて体内に入ってくる成分に、身体中が抵抗していた。
どうやらお酒には強くない体質らしい。
オレンジジュースで充分だ。
やっぱり子供な自分だった。
 
この1日で、私は大人の階段を駆け上ったが、
実際は、すべり台を急いで降りる子供のようだった。
 
大人になるのは、簡単じゃない。
 
 
成人式、当日。
私は黒色の振袖を着て、街を歩いた。
周りの人々が、振り返る。
 
無彩色の自分も、
街を彩る一員になれているのだろうか。
 
同窓会で、黒色の振袖を着ているのは
私ぐらいで、友達はみな明るい色を着ていた。
 
少し羨ましく思ったが、私は思った。
 
まだまだ子供な自分は、
黒色を着たらちょっとは大人っぽく見えるんじゃないだろうか。
形から入る。それでもいいじゃないか。
 
着物はきつかったけれど、脱ぐときは少し寂しかった。
 
そのとき私は少しだけ、大人になった。
 
 
 
 
***
 
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