寝不足の原因
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記事：本多宏美（ライディング・ゼミ12月コース）
寝不足だ。
年末年始に遊び過ぎたわけではない。枕が悪いわけでも、身体のどこかが悪いわけでもない。この数年、ずっと寝不足なのだ。
もちろん、学んでいることの宿題があったり、夜遅くまで仕事をしなくてはならない場合もあるのだが、たいていは繁忙期のみ。こんなに長期間睡眠不足なのはウン十年前に娘を産んだ時くらいか。それでも半年くらいだったはず。
とにかく色々あって、今もずっと寝不足なのだ。
というのも、この数年、眠れない日々が続いているのだ。
私はストーカーにあっている。
きっかけは、私の娘。４年前に娘がその青い瞳にひとめぼれ。出会った当初、あまりに痩せているので、娘もかいがいしく世話をしていたのだが……
気が付いたら私がストーカーされていたのである。
最初は気のせいか？ と思っていたのだが、どうも私のことを気に入ってしまったようだ。
私が行く先々についてきたり、ふと振り返ると私をじっと見つめていたりする。足音もなく近づいてくるので、ぶつかりそうになったこともある。いや実はぶつかったこともある。
ひどい時は、私の仕事場のドアの前でなきさけばれたこともあるくらいだ。
友人にもこのことを話したが、笑い飛ばされてしまった。
だが、ストーカー行為なんて可愛いもの。寝不足の原因は、他にもあるのだ。
アレルギーのある方には申し訳ないのだが、最も大きな原因…… それは、深夜に起きる金縛りなのである。
金縛りはだいたい２回起きる。
一回目は夜の２時くらい。息苦しさで目を覚ますと、身体が動かせない。仰向きで寝ていようが、横向きで寝ていようが、それは突然やってくる。必死の思いで身体を動かし再び眠りにつく……
二回目は朝方の４時過ぎ。ブルルンブルルンというまるで排気量の大きいバイクのような音とともに身体がうごかせなくなる。胸の上に重い重いかたまりが乗っている……
隣に寝ている主人に助けを求めようと必死に手を伸ばす…… と、ふとしたきっかけで身体が軽くなるのだ。そして私はまたウトウトと夢の中へ……
こんな感じが年がら年中続いているのだ。特に寒くなってくると頻繁におきる。
主人に聞くと、主人も同じように金縛りにあうらしい。ただ主人は徹底的に気が付かないふりをしているそうだ。
どうやら、私よりも激しいらしく、喉元や頭も押さえつけられるそうだ。私の方がまだましだな…… と思うようにしている。
そんな状態が数年続いているのだ。寝不足にもなる。
ただ安心してほしい。私も主人も睡眠不足だが健康には何ら問題はない。というか、健康であるように気を付けるようにすらなった。
どうだろうか、同じ経験をしたことがある方はいらっしゃらないだろうか。いや、きっとこの話を読んでいる方の中にも同じ経験をしたことがある人がいるに違いない。
実は、昨夜も同じように金縛りにあったし、今日もストーカーされた。
きっとこの先十年は同じことが続くだろう。
コロナのこともあるが、すっかりこの数年で家の中にこもるようになってしまった。
古くからの友人たちはこんな私を見たら驚くに違いない。
以前の私は旅行が大好きで、飲み会や食事会も頻繁に出かけていたし、夜遅くまで遊んでいることも多かった。そんな私が旅行は日帰り、せいぜい一泊二日。飲み会や食事会の回数も減り、夜はできるだけ早く帰りたがるのだ。こんな風になるとは自分でも想像していなかった。
私は狂ってしまったのだろうか。いや相当狂っているに違いない。寝不足が続いてほしいと思ってすらいるのだ。
ちなみにこの話はノンフィクションである。
でも警察に行く必要もなければ、お祓いに行く必要もない。
私はこの現実をしっかりと受け止めて暮らしていくつもりだ。
どれだけ寝不足になろうと、この寝不足ができるだけ長く続いてほしいと思っている。
そして、これからも私は寝不足の原因に色々なものをみつぐだろう。
ストーカーされても思わず笑顔になってしまうし、金縛りにあっても命の尊さを感じられているからだ。
その青い瞳で私を見つめ、絶対的な信頼を寄せてくれる。ツンデレな態度で私を振り回す。
今日も明日もトイレに行こうがお風呂の中にいようが、お布団の中だろうが追いかけてきてくれる。
そんないとおしい存在が、私を待っていてくれる。
さあ、今日も美味しいものを買ってお家へ帰ろう。
ドアをあけるときっと待っているはずだ。
「おかあしゃん、大好きにゃ」と長いしっぽをピンと立てて。
ん？ 何の話をしていたのかって？
私が寝不足で幸せだという話をしていたのだ。
私がお布団に入れば、夜中の二時頃一緒に寝ようと布団にもぐりこんでくるに違いない。そして朝四時過ぎにはお腹がへったとたたき起こされるのだ。
今夜も寝不足確定。ああ、幸せだ。
＊＊＊
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