大企業ではクビを宣告されるくらい問題児だった私が、今は実家の農機具店の看板娘としてメディアで注目されるようになった理由
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:J子(ライティング・ゼミ福岡会場)
テレビCMによくでているような大手企業への就職を勝ち取った私だが、
ポンコツ社員の日々が始まってしまった。
仕事内容はタウンワークに載せる求人をだしませんか? と営業すること。
アポイントを取り、営業に伺った先の社長と商談。
「社長、この求人内容では全く募集こないですよ」
私の言葉で社長の感情のやかんは5秒で沸騰。
「もう来なくていいです」
その当時の私はなぜ社長が怒っているかもわからなかった。
会社に帰り、次のお客様のために企画書を作る。
パワーポイントの1枚を作るのに5時間かかった。時計をみるといつの間にか朝の4時。ミーティングは朝7時から始まる。非常階段で仮眠した。
やっとできた企画書を上司にみせると、
「まったく伝わらない」また1からやり直し。
そんなお客様や上司を怒らせる日々が3か月続いた。心も体もボロボロだった。
営業成績は全く伸びない。
「このままだと、先を考えなきゃいけない。」
事実上のクビの宣告だった。
そんな時父から1本の電話が。
父は長崎で小さな農機具店を営んでいた。
「発明したじゃがいも種芋植え付け機を雲仙市の助成金事業に申請したい。自分は字を書くのが苦手だから、おまえが企画書を作ってくれないか?」
との相談だった。
「じゃがいも種芋植え付け機?何それ?ま、よくわからないけどいいよ」と返事し地元へ向かった。
久しぶりの地元。澄み切った空気が心地よかった。
農家のお客様に機械を使ってみた感想を聞くと嬉しい声が次々と上がってきた。
「社長がいないと農業はやっていけんよ」
「83歳だがこの植え付け機があればこの先10年まだまだじゃがいも作れる」
感想を聞いた農家さん全員が褒めてくれた。
「そんなに父が発明したじゃがいも種芋植え付け機とやらはすごい機械なのか!?」
他のじゃがいもの農業機械やじゃがいも生産について調べてみるとじゃがいも栽培の厳しい現状に気づいた。
従来のじゃがいも種芋を植え付ける作業は過酷だった。
1日20キロ歩きながら植え付けするそうだ。植え付けは大体1週間だとすると、ハーフマラソンが1週間続く。
83歳の農家さんがハーフマラソンを1週間!? か、過去すぎる。
一方で父が発明した機械なら歩かなくていい。座って植え付けができるからだ。父の機械があれば、20キロ歩かなくていいのだ。
じゃがいもの生産量は1位が北海道、地元の長崎は全国3位でじゃがいも生産の一大産地だということがわかった。
最近は農家の高齢化が進み、生産をやめる農家のお客様が増えてきているということだった。
北海道にはじゃがいもの植え付け機はあるが、大きすぎて長崎の狭い畑では使えないこともわかった。大手企業は沢山台数が売れると見込めないので小さい機械は作らない。
困っている農家さんを助けられるのは父の発明した機械だけなんじゃないか。
そんな時、突然母から電話が。
「お父さんが機械の下敷きになって今から救急車で病院に向かうことになったよ」一命をとりとめて現場に復帰したものの、私はこの事故を機に決意した。
「父が発明したじゃがいも種芋植え付け機を世の中に発信していけるのは自分しかいない。実家の仕事を手伝おう」
じゃがいも大好きなガールで「ジャガール」とネーミング。
自らジャガールちゃんと命名し、赤いつなぎを着て、畑の実演に出発した。
ダサいロゴは作りたくないとロゴも一新。ホームページ、ブログを立ち上げた。
「子育てサークルジャガールズ」を姉と立ち上げ、じゃがいもの収穫体験、得意な英語を使ったリトミック遊びなどで地域の人たちにもジャガールを知ってもらうきっかけを作った。
助成金の企画書をいつもバックの中にいれて、会う人みんなに「こんな機械作って広めたいんです」と話しまくった。
想いはつながった。
高校時代の友人経由で地元のテレビ局とつながり、「じゃがいも親子の奮闘記」という5分間のニュースを放送してもらえたのだ。
想いは全国につながり新聞、テレビ、雑誌、ラジオなど合計40のメディアがジャガールのことを紹介してくれたのだ!
大手企業で働いていた時は、ポンコツだった私。
社長や上司怒らせて、クビを宣告された。会社に私の居場所はなかった。
私は必要とされる存在ではなかった。
そんな自分が今では「ジャガールさん!」とお店で呼んでもらえるようにまでなった。畑に実演販売にいくと、「ジャガールと会えてうれしいです」と言ってもらえる存在になった。父が発明したじゃがいも種芋植え付け機が私の居場所を作ってくれた。
小さい頃は父の油で真っ黒になった手が嫌いだった。油臭いのが嫌いだった。
今では心から父に感謝したい。
「50年間、雨の日も暑い日も寒い日も、一緒懸命仕事をしてくれて本当にありがとう」
***
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