メディアグランプリ

拝啓、ちばてつや様 国松君は、元気ですか?

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記事:垂水 明美(ライティング・ライブ大阪会場)
 
 
先日、調べ物をしていたら、突然、あるイメージがフラッシュバックしてきました。それは、子供のころ読んだ漫画の一場面でした。
主人公、石田国松君が大暴れする 「ハリスの旋風」 という漫画の一場面です。
そう思うと、もう見たくて見たくてたまらなくなり、調べ物はどこへやら、本棚の奥をひっくり返して探すと、ありました! 大好きだったので、総集編を買っていたのです。
一気に読み直して、なんでこんなに好きだったのか? …… 少し分りました。
 
まず、読者は、国松君といると、とてつもなく、元気が出てくるのです。暴れん坊で、全く勉強できないというよりは、しない国松君。今でいうところの、LD 学習障害とでもいうのでしょうか? ちばてつやさんも、こんな風に書いてます。学園ものなのですが、「授業中の国松君は、書くことがない?」ので、……
国松君が、登校したら、いつもすぐに場面は、放課後になるのでした!
このあたりが、ちば漫画の楽しいところです。
 
「ハリスの旋風」は、1965年~1967年、少年誌連載でした。ご存知ない方もおいでかと思いますので少し、紹介しましょう!
主人公、石田国松くんは、方々の中学校で様々な問題を起こし、両親と弟のアー坊と一緒に都内に流れてきたのです……。何しろエネルギーがあふれているので、ことあるごとに、いろんな人やモノと衝突します。
越して来て早々、国松くんは、補導されそうになってしまいますが、それを救ってくれたのが、名門「ハリス学園」の校長先生、どじょう髭の先生でした。
彼を学園の生徒として、面倒を見てくれることになって、物語は始まります。
この先生は、これ以降もことあるごとに国松君を救ってくれます。
 
どんな人も成長するときに、誰か一人、その人を見守り、何があっても共にいてくれる、そんな存在があると、その人は、大丈夫なのではないでしょうか?
校長先生は、そんな存在です。人が成長する上で、とても大切なことだと思います。
さて、勉強はできない、いえ、しない石松君ですが、スポーツ万能、野球、剣道、拳闘部(ボクシング部、このあたりが時代を感じさせます)で活躍するのですが、だから場面は、すべて放課後です!
でも、新入りなのに、物おじせず、好き勝手にのびのびやってしまうので、すぐに番長や、猛者、強者とぶつかってしまいます。その結果、試合でカタを付けるのではなく、決闘や果し合いに巻き込まれてしまうのです。それを野球部、剣道部他で、さんざんやらかすのです……。
拳闘部ではカリスマ主将がおこした、しごき事件が、国松君によって明るみに出されて大騒ぎになるのですが、そこに園長先生が仲裁に入り、全校生徒の前で正々堂々試合をして、決着をつけるように促してくれるのです。
 
この物語のなかでは、試合だけではなく、決闘や果し合い、喧嘩がしばしば、扱われます。
暴力シーンは、…… なのですが、対立しているどおしがぶつかり合い、互いにその思いやエネルギーを発散することで、仲良くなれなくても理解する、互いを認めることができる、そんなことが描かれているように思います。
真正面からぶつかる、全力を出すことで自分の力量が分かると同時に、相手の力もわかる。すると今度は相手を認め、助け合うことができるようになるのでしょう。国松君が絶体絶命のピンチに陥った時、過去に敵対してきた者たちが、駆けつけて助けてくれるのは、そんな成り行きからなんですね。共に居てくれる仲間ができたということです。
 
どんなことも思う存分表現し開放すると、人はありのままの自分として居ることができます。そうすると、今度は、互いに認め合うことができるのでしょう。
勝負、試合、スポーツが持っているそんな一面もこの漫画の魅力かもしれません。
 
そして、もう一つの魅力は、なんといってもこの国松君が持っている、キュートな可愛らしさ。可愛らしいということは、すべてを受け入れ許してしまえるということ。それは主人公のキャラクターデザイン、おチビでおっちょこちょいなところにもよるのでしょうが、何しろ元気で明るく、どんなことが起きてもくじけない。失敗してもあきらめない。思いついたら、すぐ、どんどん行動する。
そんな国松君。彼に、読者は自分自身を重ね合わせて、感情の開放や、わくわく感、達成感を味わっているのでしょう。
 
国松君のようにありたい……。その原動力は何だろうと思ったとき、それは、彼が「自分自身のことが大好き!」ということにたどり着きます。自分を愛しているということ。もちろん作者のちばてつやさんが登場人物を愛をもって描いて下さってるからなのですが、それは、ここでは、自分が大好きな国松君、自己愛にあふれた人物として表現されています。失敗しても、人から何と言われても、自分を信じているから、またむくむくと起き上がって、何度でも挑戦できる。
国松君から溢れ出した自己愛は、周りの人たちにも伝わって、みんな彼のファンになるのです。もちろん、読み手の私たちにも……。
そんな国松君に、会いたくなりませんか?
 
 
 
 
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2022-03-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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