不眠症は眠れない病気じゃなくて、眠れないことを苦にする病気である
202*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:森野みどり(ライティング・ゼミ2月コース)
「あんまり眠れなかった〜」というせりふで1日をスタートすることが多い今日この頃。
もともと悩みがあると夜眠れなくなりがちで、そうでなくても眠りに落ちるのに時間がかかるタイプではある。
調べてみると、歳を取ると睡眠障害が起こりやすいらしい。あるサイトで、睡眠を坂道にたとえて説明してくれていた。
若いときの睡眠は急な坂道だから、途中で何か障害があっても、あまり問題なく滑り落ちることができる。歳を取ってくると、睡眠の坂がなだらかになって、ちょっとした物音や室温や明かりといった坂道に存在する凹凸や障害が、睡眠の坂を途中で止めてしまいがち。さらに1度止まってしまうと再び転がり始めるのも難しくなるのだとか。
坂道のたとえはわかりやすかったけれど、じゃあ緩やかになった坂道でどうやったら障害物に邪魔されず、スムーズに転がれるのかはわからない。
眠れないときには睡眠薬を使うという考え方もあるだろう。けれど睡眠薬を使うのは本当に困ったときの最終手段として、できるだけ薬に頼らない方法を試したい。
快眠のためには光や音の刺激を減らすほか、枕やマットレス、香りにこだわるのもいいという。
とりあえずできることから試してみようということで、アイマスクと耳栓を導入してみた。アイマスクも耳栓も、朝起きると外れてベッドの下に落ちていることもあるものの、多少の効果はある。とは言え、うっとうしく感じないわけではないのが正直なところだ。
リラックス効果で知られるラベンダーの香りも悪くない。安眠作用のあるハーブで作ったエキスは、入眠を助ける一定の効果がある。とは言え夜中に1度は目が覚めて、なかなか眠りに戻れない。
眠れない話をしていると、不眠に関するニュースや記事が目に入りがちになり、友達や家族から情報をもらえるようになる。
そんな中、専門家が解説する睡眠医療に関するコンテンツを見つけた。睡眠医療の第一人者である教授によると、先進国の成人の3人に1人が不眠の症状を持っているのだとか。
驚いたのは、不眠症が眠れない病気ではなく、「眠れないことを苦にする病気」だということ。あまりよく眠れなくても、問題だと感じなければ治療の対象ではない。不眠症の治療の目標は、日中を健康に過ごせることなのだとされている。
不眠症かどうかは、本人の気持ち次第というわけだ。おまけに、眠れないことを思いわずらうことで、不眠が深刻化する部分もあるという。
この記事を読んで最近の夫とのやり取りを思い出した。
子育てがほぼ終わったフリーランスのわたしは、基本的に時間に縛られることがない。うまく眠れなかった次の日の朝は、目覚ましを無視して予定より遅く起きることが続いていた。
眠れないことを訴えるわたしに、「朝起きないから夜また眠れないのかもね」と言う夫。
わたしには人に何か言われるとつい、自分が責められているように反射的に受け取ってしまうところがある。このときもとっさに、朝ちゃんと早く起きないから夜眠くならない悪循環。自分でやってるんだから、自業自得だろうと言われているように感じた。
でも夫の本意はそうではなかった。ただ客観的な事実を見て、感じたことを言っただけ。
数えられないほどのケンカを繰り返して、夫の言葉に他意がないこと、責めるようなことを言う人ではないことをようやく理解し始めていたわたしは、それって「早起きすれば眠れるようになるんじゃないの?」って言ってるわけじゃないよねと聞いてみた。
答えはもちろん、NO。
* * *
ベッドに入ってからなかなか眠れなくても、夜中に中途覚醒しても、早朝に目が覚めてしまっても、本人がそれほど問題にしていなくて、昼間に元気に過ごせるのであれば、不眠症とは言わない。不眠症かどうかは本人が決める。
このことと、誰かの発言をどう捉えて何を思うのかを自分が決められることは、似ているのではないか。
1つの事象を目の前にして、どう受け取ってどう反応するのかは、自分で決められる。
そうは言ってもやっぱり不眠気味で、今夜は眠れるかなと考えなくもない。けれど幸いなことに好きな時間に寝て起きて、自分のペースで仕事もできる。早朝にお弁当を作る役目からも解放されている。
であれば、あまり深刻になり過ぎず、まだ試していない寝具や香りや安眠に導いてくれるお茶を楽しみに、どうやったらうまく眠れるのか実験するくらいの気持ちでいるのが今のベストな対処法ではないかと思っている。
***
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