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合コンの勝者は清楚系女子か、小悪魔か

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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:水野光(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
「いい人がいたら紹介して~!」
私は会う友人に言いまくった。結婚式の参列に忙しくなってきた25歳の初夏。私は独り身だった。
 
半年前のクリスマスに5年付き合った彼と破局。結婚するつもりでいたし、過ごした時間が長かったので傷心で泣きはらした。
花が咲き誇る春になっても傷はまだ癒えなかったが、新しい自分になりたくて今までやったことのないことに挑戦しようと決意。石垣島に一人旅に行くことにした。せっかくなので、一週間のダイビングのライセンス取得のスクールに申し込んだ。
初めて見る美しい海の世界に私は心洗われ、水中で体力を消耗することでよく眠れるようになった。ダイビングの資格も無事取得することが出来、自分一人で新しいことに挑戦できた、と少しの自信が湧いてきた。
 
石垣島を後にした私は次の恋愛に向けて活動開始。第一次結婚式ラッシュがやってきていたので、このチャンスを無駄にするまいと参列する度に同席した友人にいい人を紹介してもらうようにお願いした。信頼の置ける友人の紹介なら間違いないだろと私は確信していた。
 
程なくしてAちゃんから連絡があった。
先日の結婚式で同じテーブルだったAちゃんは、高校の部活の友人だ。今アプローチされている男性に食事に誘われているのだが、一人では緊張するので一緒に来てほしいとのこと。相手側も一人男性を誘うので、4人で食事をしようとの誘いだ。
私はすぐに「行く!」 と返事した。
 
合コン必勝マニュアルや愛され女子の秘訣を謳った本を読み漁り私は準備を整えた。
本来私はよく喋るし、勝ち気で豪快な性格。しかし、喋らないほうがモテるよ、と男友達に以前言われたことを思い出した。必勝マニュアルにも控えめな女子が良さそうなことがかいてあった。なんとか清楚な女子を演じて、彼氏をゲットしようという戦略を練った。
みなぎる熱意と闘志とは裏腹に、髪をふんわりとゆるく巻いて、白のシフォン素材のトップスに膝丈のフレアスカート。愛され可愛い戦闘服に見を包み、ナチュラルに見えるメイクをしっかり施した。あとはマニュアル通り女優となって清楚系女子を演じ、彼氏ゲットだ!
 
合コン当日。一時間前にAちゃんと待ち合わせし、今日の打ち合わせをすることにした。
彼女は、小柄で真面目で可愛くて頭のいい子だった。女子大出身で恋愛には奥手なので、「何を話していいかわからないから宜しくね…!」とお願いされた。
私は初めての人との会話に抵抗が無い。仕事でも営業職なので彼女をアシストする会話をすることくらい朝飯前だ。
「任せて!でも今回は清楚系で頑張ってみるね」 と意気込む私。つい最近まで失恋を引きずっていたことを知っているAちゃんは「お互い頑張ろう!」 と励ましてくれた。
 
作戦会議を終え、約束の店の前で男性陣と合流した。
お相手の男性二人も高校からの友人だそうで、真面目な印象だった。ふたりとも理系男子だ。
乾杯とともに会話スタート。まずは自己紹介と趣味の話に。
Aちゃんの番。彼女の趣味は歴史で、スペインの遺跡の話をポツポツと始めた。Aちゃん狙いの男性は、本当に彼女が好きなのが伝わってくるほど熱心に見つめて話を聞きうなずいていた。博学で、Aちゃんの話す遺跡についてもよく知っていた。
私がアシストするまでもなく、二人はいいムードだった。
もうひとりの男性も、控えめであまり多くは語らないタイプだった。ただ和やかな空気感で優しく微笑んでいた。会が大盛りあがりすることはなかったが、私も本で読んだ通りニコニコと相槌を打ち、会話は順調に流れていた。
その時、お酒が進んだAちゃんから私にアシストが入る。
「ねぇねぇ、こないだ沖縄に一人旅行ってたよね。どうだった?」
………おや? 傷心旅行の沖縄一人旅の話を今ここで?今回は清楚系で行くと打ち合わせ済みだったので、その話は出さない約束だったような? でもAちゃんは天然だし………。様々な疑問が頭をよぎったが、話を振られてしまったからには仕方ない。
「そうそう、石垣島ね。初めての一人旅だったんだけど、ダイビングのライセンス取ってきたよ」
努めてカジュアルに明るく答えると男性陣から
「へぇ~一人旅? すごいね!沖縄行ったことないわ。ダイビング面白そう!」
との返答。意外にも好印象のようだ。
「来月行ってみようかな、どこが良かったか教えて」
とさらにはその場で旅行のプランまで立て始めた。どうやら彼らも旅行好きのようだ。
私は沖縄本島や石垣島のおすすめスポットを紹介し、話は盛り上がってきた。スポットライトはAちゃんから私に切り替わっていた。
その時Aちゃんから一言。
「うふふ。この子って、一人旅いけちゃうくらい強くって、面白い子なの。高校生の頃からほんと面白くって。ほら、こないだのあの話してよ。あの話、すごく面白かったから~」
これは………。いくらAちゃんが天然であっても、少々の悪意を感じた。
あの話、とはAちゃんと再会のきっかけになった先日の結婚式の二次会で、場を盛り上げるために私が話した仕事での失敗エピソードのことである。簡単に話せば、営業車をぶつけてしまい車体の凹ませてしまったのを上司に報告せずに、YOUTUBEを見て自力で直し、事なきを得たという話だ。
通常の感覚であれば、車をぶつければ上司に報告しなければならないし、常識はずれな人だと思われるだろう。古くからの友人との再会の場であれば、笑い話になると思って話したことだった。まさか合コンで、しかも真面目なタイプの男性の前でこの話を振ってくるAちゃん………。
ニコニコしながらAちゃんは私が話し始めるのを待っている。
Aちゃんは確実に私の清楚系作戦を邪魔しようとしていた。私は知らなかったが実はAちゃんは高校時代、小悪魔で悪名高かったのだ。今日の主役はAちゃんだ。スポットライトを奪った私は完全にロックオンされていた。
しまった……。時既に遅し。私は後戻りできない状況になっていた。もうこうなったら仕方ない。私は腹をくくった。話すのであれば笑いを取りたい。当初の清楚系キャラは崩壊し、私は車を自力で直すほどの逞しさと笑いに貪欲な本性を表した。
話し終えた後、爆笑が起こり男性二人から「すごいね。僕にはできない」と感心された。
清楚系女子を演じることは出来なかったが、私はAちゃんのアシストという大役を全うし、会はお開きになった。
 
後日Aちゃんと連絡を取り合ったが、アプローチしてくれていた彼のことはやはり好きになれず付き合うことはなかったそうだ。
私はというと、同席していたもうひとりの男性からアプローチを受け、一ヶ月後交際を申し込まれ、1年後結婚することになる。結婚の決め手は、自分には無い生きていく力強さを感じたからだそうだ。
あの日、清楚系女子を演じる私の化けの皮を剥いでくれたAちゃんに感謝している。Aちゃん、ありがとう。
 
 
 
 
***
 
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2022-03-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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