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個性があると死ぬ中国神話のカオナシ混沌さんとは


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記事:九條心華(ライティング・ゼミNEOコース)
 
 
中国の神話に、顔のない混沌さんが出てくる。
Tik Tok、YouTuberの混沌さんではない。顔がないのだ。『千と千尋の神隠し』に出てくるカオナシでもない。目や口の穴もあいていない。
 
どんなお話かと言うと、混沌さんは、古代中国に書かれた『荘子(そうじ)』に出てくる物語で、紀元前300年ごろに生きた荘子(そうし)が書いたとされる。中国思想研究家のこやまとしのりさんにお話を伺った。
 
南の海を治める、儵(しゅく)と北海の帝、忽(こつ)が、中央の国で出会った。中央の国の帝、混沌が自分たちを手厚くもてなしてくれたので、儵(しゅく)と忽(こつ)は、混沌にお礼をしようと話し合った。
 
「人は皆、目2つ、鼻2つ、耳2つ、口1つの全部で7つの穴があって、それで見たり、聞いたり、食べたり、呼吸をしている。でも、混沌には7つの穴がないので、穴をあけてあげましょう」
そして、1日に1つずつ穴を開けていった。目をあけて、鼻の穴をあけて、
耳の穴をあけて、いよいよ最後7日目に口の穴をあけると、混沌は死んでしまった。
 
なんとも切ないお話だ。
 
人の個性というのは、顔に集約されている。顔がなかったら、誰が誰だかわからない。混沌には顔がなかったので、個性がなかった。なんとなく漠然とした存在だった。だから、混沌に穴をあけてあげて、個性を与えたら、死んでしまった。
 
人は、個性があるから苦しむのかもしれない。いいところもあれば、悪いところもある。得意なこともあれば、不得意なこともある。そんな個性があるからこそ、これは好き、あれば嫌いと差が生まれる。
 
例えば、水は個性がない。色もなく透明で、匂いもなければ、かたちもない。水が好きとか嫌いとかいう人はいない。水は水として、万人から認められている。個性を捨てれば捨てるほど、人は皆を好きになれる。
ご飯も個性がない。味があるようなないような、主張がなく、私たちは何かを加えて一緒に味わう。個性がないからこそ、主食になりうる。
 
個性があれば、他のものと差別ができて、敵、味方がはっきりする。個性がないということは、他のものと差別がない。差別がないということは、争いがない。真の愛は、すべてを抱きしめる。とりえという個性は、真の愛から遠ざかる。
 
例えば、民族のあいだの争いは、個性があるから生まれるとも言える。文化の違い、考え方の違い、持っているものの違い・・・・・・
すべての違いがなくなれば、争う理由もなくなる。
 
そんなところから、共産主義ができただろうに、そういう国でもやはり争いは起こる。何とも皮肉なものだ。
 
 
 
 
そんなお話を聞いて、私は個性をなくそうとしていた自分を重ね合わせていた。みんなに嫌われたくないから、当たりさわりなく相手に合わせていく。自分の考えを言わない。相手の考えを先に聞く。周りの反応をみて、これが自分に求められている対応だろうという正解を考えて、その正解をふるまう。自分の心の奥底にある感情を感じずに、波立たない無難な反応を示す。
これがいいとか、これが嫌いとかはっきり言わないことは、差をなくすことだ。みんなと同じように合わせる。
 
それでいいの?
 
あるとき、突きつけられた。本当にそれであなたは自分の人生を生きているのか。
 
輪郭がはっきりしない、ぼやけた人みたいと言われたことがある。
特徴がないから、覚えてもらえない。存在感がない。いてもいなくても変わらない感じで、とらえどころがなく、いるのかいないのかわからない人を理解するのは面倒くさいから、皆深くは関わらない。深い人間づきあいから遠ざかっていく。
 
本当に人とつきあっていきたかったら、自分を出さないと始まらない。そんな自分を嫌だと思う人は離れていく。いいと思う人は残る。残った人とだけつきあっていけばいいのだから楽よ、と人に言われた。
 
八方美人にならなくていい。皆から好かれなくても、素の自分をいいと思ってくれる人と深くつきあっていけばいい。そんなことに気づかされた。
 
 
混沌とは、広辞苑によると、
① 天地開闢(てんちかいびゃく)の初め、天地のまだ分かれなかった状態
② 物事の区別・なりゆきのはっきりしないさま
とある。
 
混沌の状態を、無分別という。無分別は、仏教用語で、主体と客体の区別を越え、対象を言葉や概念によって把握しないことだそう。
 
何も分かれていない、一つに融合していたものを、目で見たり、耳で聞いたりすることで、ひとつひとつ分けていって、頭で分かってきたのが人間だ。
 
 
混沌さんは、7つの穴をあけられて死んでしまったけれど、私たち人間は7つの穴を持って生きている。個性を持って生きるというかたちを持って生まれてきた。
 
混沌さんは顔のない個性を持たない生き方なのだとすれば、私たちは生まれたときから個性を持って生きる道を選択している。私の個性を最大限に発揮して、お互いの個性を尊重しあってともに活かしあう道を求めていきたい。
 
 
 
 
***
 
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2022-04-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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